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vol.7「デリヘル呼んだけど、ぼったくられた……」
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コンビニでお茶二本、ビール一本、風俗雑誌を購入し、宿泊先のホテルに向かった。家から四〇分圏内に職場があるにも関わらず、飲み会があるとホテルに泊まるようにしている。駐車場と代行を考えると二千円ほど足がつくが、次の日を考えると泊まった方が楽だ。しかし、最大の目的はデリバリーヘルス嬢だ。お茶を二本買ったのも嬢に一本渡すためである。このさりげない心遣いが〈本番〉につながると思っている。風俗雑誌から良さそうな店を選ぶ。ほとんどの店が茶髪でギャル系の女か熟女系だが、しろーと軍団という店は黒髪で素朴っぽい子が多い感じがする。料金は五〇分一万二〇〇〇円。妥当なところだろう。早速電話をする。「はい、お電話ありがとうございます。しろーと軍団です」感じの良い声だ。対応も申し分ない。ぞくぞくと高揚感が沸き上がる。「もしもし、-さんお願いしたいのですが。今から大丈夫です
か?」「はい。-さんですね。すぐ、いけます。ホテルどこですか?」「-ホテルの七〇一号室です」「分かりました。一五分くらいで行きます。ありがとうございます」コンビニで買ってきたビールを飲み干してしまった為、玄関先の自動販売機に買いに行く。玄関先には五、六台の車が列をつくっていた。嬢を送り迎えする車だろう。ビールを買ってエレベーターを待っていると甘い香水の匂いがした。気づくとピンクのコートを着た女が隣にいた。いい女だ。間違いなく嬢だろう。どこの店だろうか。どの部屋に行くのだろうか。今度指名しようかな。酔いにまかせて話しかけようか迷ったが、自分が呼んだ嬢に期待を膨らませることにした。
コンコン。室内に乾いた音が響いた。
弛緩していた空気が張り詰める。
のぞき穴を見ると黒髪で赤いコートの女が立っていた。よし!!ルックスもスタイルも悪くはない。どうぞ。快く向かい入れ、冷蔵庫からお茶を取り出した。「あ~、ありがとうございます!」女の表情が緩む。無理もない。此奴らは行けと言われれば、全く素性の知らない男の部屋に行かなければならない。大変な商売だ。「忙しい?」俺は旨そうにお茶を飲んでいる嬢に問いかけた。「今日はこれで三件目です。平日にしてはまずまずですよ。ところでお時間どうしますか」「そうだな。もう日付超えたし、五〇分でいいや」「それでは一万二千円お願いします」嬢は携帯を取り出し店に時間を伝えた。そして一緒にシャワーへ向かった。そしてベッドに入った。「どうします?」女は耳元で囁く。普通、嬢はローションを何本か用意するのだが、この女は何も用意していない。「素股できる?」「うーん。できるけど下手だよ」「じゃあ入れる?」「そっちの方がいいかな」するとシャネルのバックから避妊具を取り出した。今、俺は、俺は、宗教、民族、人種、それら関係なく、すべてのものに感謝できる度量を身につけている。グラッツェ!カムサハムニダ!そしてメルシー!行為が終わった後、女は俺の胸にもぐり込んできた。今までで一番気持ちよかったと頬にキスをしてきた。そして胸毛をなで、何している人なの、結婚は、収入は、などと込み入った事を聞いてきた。俺は酔った勢いもあり、そして危険をおかして本番をしてくれた彼女にすべてを打ち明けてしまった。
ドンドン。嬢が帰った数分後、乱暴にノックする音が聞こえた。ドアを開けるとスキンヘッドで口髭をたくわえた男が立っていた。よくみると数時間前、スギに怒鳴られた奴だった。「しろーと軍団です」俺を威圧するように見下ろしてきた。近くでみるとやはりでかい。腹は出ているが首から肩の筋肉が盛り上がっている。
ジャケットの下からみえる胸の膨らみをみると昔、かなり鍛えていると推測する。柔道かラグビーをやっていたのだろう。「田吾作さん。うちの店本番禁止なの知っていますよね?」「なんで俺の名前知っている?」すると男が後方に目配せした。スキンヘッドの大柄な身体の後ろには、隠れるように先ほどの嬢が立っていた。「田吾作建二、郵便局非常勤職員、独身……。そして、ラグビー高校日本代表、大学選手権優勝メンバー」しまった!後悔しても後の祭りだった。スキンヘッドは俺の全てを知っていた。「彼女は涙ながらに訴えてきました。拒否したけど無理矢理やられたって。これは強姦罪になりますね。被害者の証言もあるし、警察呼んでいいですか?」スキンヘッドは携帯を取り出した。「ちょっちょ、まて、まて、俺は無理矢理やってない。これは合意の上だ、強姦罪にはならないだろ!」スキンヘッドは静かに後方に目を向けた。嬢は力強く首を横にふった。「正直、私どもは大ごとにしたくないです。警察に言ったところで我々に何の利益も見返りもありません。あなたが苦しむだけです」男は丁寧な口調で囁いた。「ど、どうすればいい?」「たごさくさん。パチンコで大勝ちしたらしいですね?」沈黙が流れた。それは仕組まれた罠だった。俺はスキンヘッドが作成した台本にあるセリフを述べるだけだった。「いくらだ?」男は左手で一本の指を、右手でゼロをつくって掲げた。すでに俺は戦う気はなかった。素直に従った。俺は負けた。スキンヘッドは嬢を先に帰らせ、俺と向き合った。先ほどまで全身を覆っていた殺気は消え、穏やかな表情を浮かべていた。「高校時代の貴方は凄かった。憧れでした。何回か試合をしたのですが、指一本触れることができませんでした。一年生で名門F大学のレギュラーとして大活躍。大学選手権の決勝はテレビで応援していました」「ん、お前ラグビーやっていたのか。どこで?」「田吾作さんの一つ下で○○高校の柴田です。それでは失礼します」スキンヘッドは一礼すると大股で去っていった。俺はベッドの上で呆然としていた。スキンヘッドは俺に最も残酷な言葉を言い放った。それはハイボクシャに対する〈慰め〉である。それは何も生産性がない。時間が経過するとじわじわと脳、筋肉、血管、臓腑を締めつける。いっそのこと殺してくれ。〇〇高校の柴田?誰だ、思い出せぬ!雑魚が!その雑魚に喰われた俺は何者?雑魚以下だ!何物でもいい、それが底辺を這いつくばる蛆虫だとしても。くそ!
か?」「はい。-さんですね。すぐ、いけます。ホテルどこですか?」「-ホテルの七〇一号室です」「分かりました。一五分くらいで行きます。ありがとうございます」コンビニで買ってきたビールを飲み干してしまった為、玄関先の自動販売機に買いに行く。玄関先には五、六台の車が列をつくっていた。嬢を送り迎えする車だろう。ビールを買ってエレベーターを待っていると甘い香水の匂いがした。気づくとピンクのコートを着た女が隣にいた。いい女だ。間違いなく嬢だろう。どこの店だろうか。どの部屋に行くのだろうか。今度指名しようかな。酔いにまかせて話しかけようか迷ったが、自分が呼んだ嬢に期待を膨らませることにした。
コンコン。室内に乾いた音が響いた。
弛緩していた空気が張り詰める。
のぞき穴を見ると黒髪で赤いコートの女が立っていた。よし!!ルックスもスタイルも悪くはない。どうぞ。快く向かい入れ、冷蔵庫からお茶を取り出した。「あ~、ありがとうございます!」女の表情が緩む。無理もない。此奴らは行けと言われれば、全く素性の知らない男の部屋に行かなければならない。大変な商売だ。「忙しい?」俺は旨そうにお茶を飲んでいる嬢に問いかけた。「今日はこれで三件目です。平日にしてはまずまずですよ。ところでお時間どうしますか」「そうだな。もう日付超えたし、五〇分でいいや」「それでは一万二千円お願いします」嬢は携帯を取り出し店に時間を伝えた。そして一緒にシャワーへ向かった。そしてベッドに入った。「どうします?」女は耳元で囁く。普通、嬢はローションを何本か用意するのだが、この女は何も用意していない。「素股できる?」「うーん。できるけど下手だよ」「じゃあ入れる?」「そっちの方がいいかな」するとシャネルのバックから避妊具を取り出した。今、俺は、俺は、宗教、民族、人種、それら関係なく、すべてのものに感謝できる度量を身につけている。グラッツェ!カムサハムニダ!そしてメルシー!行為が終わった後、女は俺の胸にもぐり込んできた。今までで一番気持ちよかったと頬にキスをしてきた。そして胸毛をなで、何している人なの、結婚は、収入は、などと込み入った事を聞いてきた。俺は酔った勢いもあり、そして危険をおかして本番をしてくれた彼女にすべてを打ち明けてしまった。
ドンドン。嬢が帰った数分後、乱暴にノックする音が聞こえた。ドアを開けるとスキンヘッドで口髭をたくわえた男が立っていた。よくみると数時間前、スギに怒鳴られた奴だった。「しろーと軍団です」俺を威圧するように見下ろしてきた。近くでみるとやはりでかい。腹は出ているが首から肩の筋肉が盛り上がっている。
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