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vol9「ヒジョーキンの思考回路は皆同じってことだ」
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なぜホテルで寝ているのか意味が分からなかった。そうか、スギと飲みに行って、そのあとデリヘルを呼んで、金巻き上げられて……。嫌な記憶を無理矢理掘り起こす。頭が痛い。二日酔いの身体に鞭を打ってホテルを出た。朝から課長や班長たちの様子がおかしい。いつもより八分遅れて朝会が始まった。何か重大な発表があるのでは、とフロアはザワザワしていた。しかし、何もなく終会した。その後、俺は課長に呼ばれた。柴田!約束破って電話しやがって!糞!デリヘルの件だと思い、心臓の音が大きくなってきた。課長は神妙な顔で話し始めた。「すまん。配達の前に呼び出して、実は今朝、杉原から酒気帯び運転で警察につかまったと連絡があった」デリヘルの件でなかったため、少しほっとした。スギめ!あれほど代行を使えといったのにドジ踏みやがって。今度は怒りの感情が沸いてきた。「どうやら一緒に飲んでいたらしいな。お前は飲んだ後どうしたのだ?」課長の鋭い眼光が二日酔いで浮腫んでいる顔に突き刺さる。俺は何も悪くない。「はい、俺はホテルに宿泊しました。今回はスギから誘われて飲みました。だいたい、午前一時頃まで飲んで、その後別れました。スギは代行で帰るといっていましたが」「そうか。どうやらエンジンかけたまま駐車場で寝ていたらしい。警察もそういう車をチェックするからな。朝五時頃、駐車場を出たところ、警察に捕まった」「そうですか。ところでスギは今何しているのですか」「自宅で待機中だ」班長は誤配王のスギがいなくなってせいせいしている反面、スギが抜けた穴をどうやって埋めるか複雑な心境だろう。結局、スギの仕事は班員で分担することになった。
午前中の配達が終わり食堂に行くとヒジョーキン五~六人が飯を食っていた。
「たごさんお疲れっす。今日遅かったですね」第二集配課のスガワラが声をかけて来た。
「おお、スギの分もあってさ、大変だよ」
「あいつどうしたんすか」
「今朝飲酒運転でつかまった」
「まじすか。ということはクビですね、あいつ」
「ああ残念ながらそうなるだろう」
「俺、あいつに五千円貸しているし。やべー返ってこね。今月金無いのに」
此奴はいつも金がない、金がないと喚いている。その割に毎朝、コンビニでコーヒー、ジュース、タバコ、朝
飯、昼飯を買ってくる。カップラーメンやジュースなどはスーパーで買えば半額近く割安なのにその辺の金銭感覚が不足している。確かにヒジョーキンの給料は安いが、金のない連中の思考回路は皆、同じってことだ。
「たごさんは絶対やめないっすよね。頼むっすよ、俺たちの心の支えなんすから」と、同調を求めるかのように見渡した。他のヒジョーキンは軽く頷いたが、すぐ携帯画面を覗いたり、窓の外に視線を向けたり拒絶するような態度をとった。心の支え?お前らの?はぁ?スガワラも自分の言ったことの意味に気づいたのか、大層強張った顔だった。多分、見たことのない俺の面構えに怯えたのだろう。まぁ、スガワラの気持ちも分からないでもない。年上のおっさんを底辺に敷くことで、優越感が保証されるのだからな。ただ、俺という安全弁がなくなれば、お前の卑小な精神はすぐに崩壊し、世俗の圧力に苛まれるだろう。スガワラ!お前、今まで中途半端に生きてきたのだろ。出来損ない共が通う高校で三年間過ごし、勉強も部活動も中途半端にやって、できる奴を羨み、できない理由を人のせいにしてきたのだろ。だからヒジョーキンの仕事しかねーんだよ。地元から離れる能力も勇気もないくせに、やっぱり地元が好きだから残りましたって他県で暮らしたこともないくせにのうのうと語る奴と同じだな。能無しが!
スギのせいで二時間残業することになった。更衣室で着替えて帰る準備をしていると携帯に着信があった。スギからだった。たごさん……弱々しい声だ。「スギ!代行で帰らなかったのか!」局内にも関わらず大声で怒鳴ってしまった。「わりっす。迷惑をかけて。あの後、代行に電話したら二時間くらいかかるって言われて、そのまま寝てしまいました。課長から電話来て、もうこなくていいって言われました。郵便局の信頼を失墜したとさんざん怒鳴られ、お前に出す退職金なんてないって。ははは……」相当堪えているようだ。「俺どうなるのですかね。クビ確実。ああ、プータローかぁ」本気で落ち込んでいるスギの声を聞いて、俺にも少し責任があるなと反省した。もう少し、早く帰ればよかったか。そもそも飲みに行かなければ良かったか。慚愧の念が全身を覆う。
「ところでたごさん……。俺のお願いを聞いてもらえますか?」
スギは急に声を張り上げた。「ああ、いいよ」多分、金関係だろうと予想した。
「金貸してもらえますか。俺、しばらくプータロー生活で。罰金も払わねばいけないし、貯金も全くねえし」予想通りだった。「それで、いくら貸せばいいのだ」俺も借金地獄のため、貸す気は全くないのだが、一応聞いてみた。「できれば十二万あれば助かります。でも無理ならいいです」
「十二万!」数万円と予想していたため少し驚いた。
「毎月二万ずつ返済します。利子つけて最終的に十四万にして返しますので、なんとかなりませんか」必死にお願いしてくる。「うーん。金額も金額だしな。来週まで返事をするから待ってくれ!」明日からプータローになる奴に金を貸すほど俺の思考回路は壊れていない。望みを絶たれてなるまいか、とスギは次の手を打ってきた。「あ、たごさん。あとで時間合ったら、この間行ったキャバクラ行きませんか?十二万貸してくれたらお礼として奢ります。いや奢らせてください。もちろんホテル代も」「しかし、それ俺から借りた金だろ。お前が損するだけだろ!」と、怒鳴りつつも冷静に考えた。スギに十二万貸しても手元には少し残る。下手に持っているとパチンコで使ってしまうからな。二万プラスにキャバクラ代とホテル代か。切羽詰まっている奴の思考はヤバイな。人の事は言えないが。弱いものはさらに弱いものを食いものにする。それが自然の掟だ。しょうがない。「よし。絶対返せよ。毎月二万、利息二万だな。約束してくれたら貸してやる」「本当ですか!約束します。絶対返します。間違いないです」「だけど俺は明日仕事だから、今日は無理。明日ならいいぞ」「あ、ありがとうございます」この場合の有り難うが、どのような意味か分からないけど、まあいいだろう。
午前中の配達が終わり食堂に行くとヒジョーキン五~六人が飯を食っていた。
「たごさんお疲れっす。今日遅かったですね」第二集配課のスガワラが声をかけて来た。
「おお、スギの分もあってさ、大変だよ」
「あいつどうしたんすか」
「今朝飲酒運転でつかまった」
「まじすか。ということはクビですね、あいつ」
「ああ残念ながらそうなるだろう」
「俺、あいつに五千円貸しているし。やべー返ってこね。今月金無いのに」
此奴はいつも金がない、金がないと喚いている。その割に毎朝、コンビニでコーヒー、ジュース、タバコ、朝
飯、昼飯を買ってくる。カップラーメンやジュースなどはスーパーで買えば半額近く割安なのにその辺の金銭感覚が不足している。確かにヒジョーキンの給料は安いが、金のない連中の思考回路は皆、同じってことだ。
「たごさんは絶対やめないっすよね。頼むっすよ、俺たちの心の支えなんすから」と、同調を求めるかのように見渡した。他のヒジョーキンは軽く頷いたが、すぐ携帯画面を覗いたり、窓の外に視線を向けたり拒絶するような態度をとった。心の支え?お前らの?はぁ?スガワラも自分の言ったことの意味に気づいたのか、大層強張った顔だった。多分、見たことのない俺の面構えに怯えたのだろう。まぁ、スガワラの気持ちも分からないでもない。年上のおっさんを底辺に敷くことで、優越感が保証されるのだからな。ただ、俺という安全弁がなくなれば、お前の卑小な精神はすぐに崩壊し、世俗の圧力に苛まれるだろう。スガワラ!お前、今まで中途半端に生きてきたのだろ。出来損ない共が通う高校で三年間過ごし、勉強も部活動も中途半端にやって、できる奴を羨み、できない理由を人のせいにしてきたのだろ。だからヒジョーキンの仕事しかねーんだよ。地元から離れる能力も勇気もないくせに、やっぱり地元が好きだから残りましたって他県で暮らしたこともないくせにのうのうと語る奴と同じだな。能無しが!
スギのせいで二時間残業することになった。更衣室で着替えて帰る準備をしていると携帯に着信があった。スギからだった。たごさん……弱々しい声だ。「スギ!代行で帰らなかったのか!」局内にも関わらず大声で怒鳴ってしまった。「わりっす。迷惑をかけて。あの後、代行に電話したら二時間くらいかかるって言われて、そのまま寝てしまいました。課長から電話来て、もうこなくていいって言われました。郵便局の信頼を失墜したとさんざん怒鳴られ、お前に出す退職金なんてないって。ははは……」相当堪えているようだ。「俺どうなるのですかね。クビ確実。ああ、プータローかぁ」本気で落ち込んでいるスギの声を聞いて、俺にも少し責任があるなと反省した。もう少し、早く帰ればよかったか。そもそも飲みに行かなければ良かったか。慚愧の念が全身を覆う。
「ところでたごさん……。俺のお願いを聞いてもらえますか?」
スギは急に声を張り上げた。「ああ、いいよ」多分、金関係だろうと予想した。
「金貸してもらえますか。俺、しばらくプータロー生活で。罰金も払わねばいけないし、貯金も全くねえし」予想通りだった。「それで、いくら貸せばいいのだ」俺も借金地獄のため、貸す気は全くないのだが、一応聞いてみた。「できれば十二万あれば助かります。でも無理ならいいです」
「十二万!」数万円と予想していたため少し驚いた。
「毎月二万ずつ返済します。利子つけて最終的に十四万にして返しますので、なんとかなりませんか」必死にお願いしてくる。「うーん。金額も金額だしな。来週まで返事をするから待ってくれ!」明日からプータローになる奴に金を貸すほど俺の思考回路は壊れていない。望みを絶たれてなるまいか、とスギは次の手を打ってきた。「あ、たごさん。あとで時間合ったら、この間行ったキャバクラ行きませんか?十二万貸してくれたらお礼として奢ります。いや奢らせてください。もちろんホテル代も」「しかし、それ俺から借りた金だろ。お前が損するだけだろ!」と、怒鳴りつつも冷静に考えた。スギに十二万貸しても手元には少し残る。下手に持っているとパチンコで使ってしまうからな。二万プラスにキャバクラ代とホテル代か。切羽詰まっている奴の思考はヤバイな。人の事は言えないが。弱いものはさらに弱いものを食いものにする。それが自然の掟だ。しょうがない。「よし。絶対返せよ。毎月二万、利息二万だな。約束してくれたら貸してやる」「本当ですか!約束します。絶対返します。間違いないです」「だけど俺は明日仕事だから、今日は無理。明日ならいいぞ」「あ、ありがとうございます」この場合の有り難うが、どのような意味か分からないけど、まあいいだろう。
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