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16.現在・信一
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はてさて困った。何が困ったかと言うと、目の前に座っているこの男に対してだ。こいつはかなりのイケメンだが、今はそのイケメンぶりも萎れているように見える。
「それで? 亮介はどうしたいのさ?」
「本当は会いたい。でも……会えないのなら、遠くからひと目見たい」
どうやらこの男は、あのときのことを全て知ったらしい。何故今頃知ったのかは分からないが、知ってしまったのなら仕方が無いのか。
オレと智が繋がってるってのは、智の兄である透さんから聞いたらしい。そして透さんは智にこの男を会わせたくないそうだ。透さん……、会わせたくないなら何でオレに振るかなぁ。こっちに投げるなんて酷いよなぁ……。まあでも、オレの方が智とよく会ってるから、智のことを考えてオレに委ねたんだろう。
とは言え……、どうしたもんか。
もう何年前になるんだ? 突然智から連絡があって、透さんと一緒にオレんちに来たのは。あのときの智は頬を赤く腫らして――親に殴られたらしい――目がうつろで本当にボロボロの状態だった。その後暫くはオレは智が自殺するんじゃないかってくらい心配した。それから考えると今は元気になったと思うよ。
あれ以来一度も智に聞いたことは無いが、今でも智はこの男のことを好きなんじゃないかと思っている。忘れようとしてるみたいだが、未だに引きずっているようだ。そしてどうやらこの男も智のことを忘れられないらしい。高校のときから知ってるからな、必死な様子からもそれは分かる。
おいおい、ってことは未だに両想いかよ。
「オレは後輩を応援したいんだけどなぁ……」
「えっ、何?」
「あ、いや、何でもない」
ふとタケルのことが頭に浮かんでしまった。アイツ本当に智のこと好きだしな。ずーっとアプローチかけてるし、そろそろ報われて欲しいなんて思ったりしてたんだよな。でもまあ、どうなんだろう? オレとしてはどうするべきなのかなぁ……。
「とりあえず会うのも見るのも今は却下。その代わり最近撮った写真をくれてやる。あと智の近況も教えてやる」
「信一……」
「そんな悲しそうな目でオレを見るな。だっておまえ、ひと目見るだけって言ったけど、智を見た途端走って目の前に出て行くだろ?」
「…………」
「それくらいはオレでも分かるぜ」
あーあ、さっき以上に萎れてるぜ。まったくなぁ……。
「とにかく今はそれで我慢しろ。そのうちにオレが智を見れるチャンスを作ってやるから」
「……分かった」
亮介には一番最近の智の画像を渡してやった。ケンスケさんちで結婚祝いをしたときの画像だ。一応笑ってる顔だしな。
「智……、ちょっとだけど笑ってる。元気そうで……良かった」
智の画像を見た亮介の目はとても優しそうだった。まあ、こいつはこいつなりに辛かっただろう。何の前触れも無く突然智に別れを告げられたんだからな。そう言えば高校大学とふたりを見ていたが、どちらかと言うと亮介の方が智にベタ惚れだったんだよなぁ。
その後オレは智の近況を教えてやった。仕事も順調だし友人にも恵まれてるってことを。両親とは未だに勘当されたままだが、それ以外は問題無いってことを。
「タケル……、スマンな」
「はっ、何ですか先輩?」
「嗚呼いやなんでもない」
「なんでもなくないでしょう。何かオレに面倒な仕事回そうとしてるんじゃないですか?」
職場でタケルの顔を見たら思わずつぶやいてしまった。こいつの恋は叶わないかもしれないなぁ。うーん、オレどうしたら良いんだろう? タケルの失恋が確定したら、コウにでもお願いして慰めてもらうか? オレもタケルもタチだしなぁ……。タケルとは突っ込むのも突っ込まれるのもカンベンだし。
週末、オレは智をゲイバーへ呼び出した。今は仕事が忙しいらしく、やって来たのはかなり遅い時間だった。
「なあ智……。もし……、もしさ、亮介と会えるって言ったらどうする?」
「亮介と?」
「そう。もしもの話だけど」
「会いたくは……無いな」
「そっか。智はもう亮介のことはふっきれたのか?」
「ああ。もう過去の話だよ」
なーにが過去の話だよ。そんな顔しちゃってさ、未だに忘れられないじゃん。もう何年も経つのにお互い切ない思いをしてるわけだ。はてさてどうしたものか。さっきの表情からすると、会いたくないってのは本当みたいだしな。ま、今の亮介のことを知らないから絶対に会えないと思ってるだろうし。
「変なこと聞いて悪かったな。さて……、向こうのグループに混ざろうぜ! 週末だし一緒にバカっ話で盛り上がろうじゃないか」
そして翌日、オレはケンスケさんちに行って相談した。
せっかくの休日なのにオレは何をしてるんだろうな。まったく……、及川ちゃんとデートしたいぜ。オレ意外とぐいぐい押してくる女の子好きなんだよ。しかも男と違って女の子って柔らかいし。及川ちゃんのおっぱい気持ち良かったなぁ。
ま、親友の為だ。最後まで面倒見てやるとするか。
「それで? 亮介はどうしたいのさ?」
「本当は会いたい。でも……会えないのなら、遠くからひと目見たい」
どうやらこの男は、あのときのことを全て知ったらしい。何故今頃知ったのかは分からないが、知ってしまったのなら仕方が無いのか。
オレと智が繋がってるってのは、智の兄である透さんから聞いたらしい。そして透さんは智にこの男を会わせたくないそうだ。透さん……、会わせたくないなら何でオレに振るかなぁ。こっちに投げるなんて酷いよなぁ……。まあでも、オレの方が智とよく会ってるから、智のことを考えてオレに委ねたんだろう。
とは言え……、どうしたもんか。
もう何年前になるんだ? 突然智から連絡があって、透さんと一緒にオレんちに来たのは。あのときの智は頬を赤く腫らして――親に殴られたらしい――目がうつろで本当にボロボロの状態だった。その後暫くはオレは智が自殺するんじゃないかってくらい心配した。それから考えると今は元気になったと思うよ。
あれ以来一度も智に聞いたことは無いが、今でも智はこの男のことを好きなんじゃないかと思っている。忘れようとしてるみたいだが、未だに引きずっているようだ。そしてどうやらこの男も智のことを忘れられないらしい。高校のときから知ってるからな、必死な様子からもそれは分かる。
おいおい、ってことは未だに両想いかよ。
「オレは後輩を応援したいんだけどなぁ……」
「えっ、何?」
「あ、いや、何でもない」
ふとタケルのことが頭に浮かんでしまった。アイツ本当に智のこと好きだしな。ずーっとアプローチかけてるし、そろそろ報われて欲しいなんて思ったりしてたんだよな。でもまあ、どうなんだろう? オレとしてはどうするべきなのかなぁ……。
「とりあえず会うのも見るのも今は却下。その代わり最近撮った写真をくれてやる。あと智の近況も教えてやる」
「信一……」
「そんな悲しそうな目でオレを見るな。だっておまえ、ひと目見るだけって言ったけど、智を見た途端走って目の前に出て行くだろ?」
「…………」
「それくらいはオレでも分かるぜ」
あーあ、さっき以上に萎れてるぜ。まったくなぁ……。
「とにかく今はそれで我慢しろ。そのうちにオレが智を見れるチャンスを作ってやるから」
「……分かった」
亮介には一番最近の智の画像を渡してやった。ケンスケさんちで結婚祝いをしたときの画像だ。一応笑ってる顔だしな。
「智……、ちょっとだけど笑ってる。元気そうで……良かった」
智の画像を見た亮介の目はとても優しそうだった。まあ、こいつはこいつなりに辛かっただろう。何の前触れも無く突然智に別れを告げられたんだからな。そう言えば高校大学とふたりを見ていたが、どちらかと言うと亮介の方が智にベタ惚れだったんだよなぁ。
その後オレは智の近況を教えてやった。仕事も順調だし友人にも恵まれてるってことを。両親とは未だに勘当されたままだが、それ以外は問題無いってことを。
「タケル……、スマンな」
「はっ、何ですか先輩?」
「嗚呼いやなんでもない」
「なんでもなくないでしょう。何かオレに面倒な仕事回そうとしてるんじゃないですか?」
職場でタケルの顔を見たら思わずつぶやいてしまった。こいつの恋は叶わないかもしれないなぁ。うーん、オレどうしたら良いんだろう? タケルの失恋が確定したら、コウにでもお願いして慰めてもらうか? オレもタケルもタチだしなぁ……。タケルとは突っ込むのも突っ込まれるのもカンベンだし。
週末、オレは智をゲイバーへ呼び出した。今は仕事が忙しいらしく、やって来たのはかなり遅い時間だった。
「なあ智……。もし……、もしさ、亮介と会えるって言ったらどうする?」
「亮介と?」
「そう。もしもの話だけど」
「会いたくは……無いな」
「そっか。智はもう亮介のことはふっきれたのか?」
「ああ。もう過去の話だよ」
なーにが過去の話だよ。そんな顔しちゃってさ、未だに忘れられないじゃん。もう何年も経つのにお互い切ない思いをしてるわけだ。はてさてどうしたものか。さっきの表情からすると、会いたくないってのは本当みたいだしな。ま、今の亮介のことを知らないから絶対に会えないと思ってるだろうし。
「変なこと聞いて悪かったな。さて……、向こうのグループに混ざろうぜ! 週末だし一緒にバカっ話で盛り上がろうじゃないか」
そして翌日、オレはケンスケさんちに行って相談した。
せっかくの休日なのにオレは何をしてるんだろうな。まったく……、及川ちゃんとデートしたいぜ。オレ意外とぐいぐい押してくる女の子好きなんだよ。しかも男と違って女の子って柔らかいし。及川ちゃんのおっぱい気持ち良かったなぁ。
ま、親友の為だ。最後まで面倒見てやるとするか。
応援ありがとうございます!
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