大好きだよっ!

ふゆの桜

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15.己の気持ちを図りかねる

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 後ろに引っ付いてるヤツはちょっと面倒だけど、とりあえずオレは目の前のチョコを堪能した。思う存分食べれて満足満足。

 そして食べ終わってひと息ついたところで我に返った。
 この体勢ってさぁ、なんか恋人同士みたいじゃね?

 うぎゃぁぁぁぁぁぁっ! めっちゃ恥ずかしいことしてないか?
 なんか突然心臓がバクバクしてきた。ヤベ、顔が熱い。ど、ど、どうしよ?



「どしたん?」

 オレの肩に顎を乗せていた亮介が声をかけてきた。どしたんじゃないよ、チミのせいだよチミの。


「りょりょ亮介、そ、そろそろ終わりにしない?」
「えー、やだ」

 普段はクールなクセに、どうしてこんなときだけ甘えたようになるんだよ。


「チョコ堪能したしさ、そろそろ帰ろうかな……なんて」
「オレはまだ湯たんぽを堪能しきってない」

 あーもう、ちくしょう。
 内心ため息をつきつつ、オレはそのままでいた。お礼だもんな。オレからしてやってもいいって言ったしな。仕方ないか。でもドキドキは止まんないんだよな。やべぇ、絶対やべぇ。何がやべぇなのかは分かんないけど、とにかくやべぇ……。


 とりあえず、ゆっくりと呼吸するようにして、ドキドキとか顔の熱さとかをなんとかしてみた。






「……亮介さ、いつオレのことが好きになったの?」

 背中に引っ付かれたまま黙ってるのがしんどくなって、オレはふと以前から気になってたことを聞いてみた。


「んー、高1の初日?」
「えっ、それって亮介と初めて会った日じゃん」
「名前順の席でさ、一番前が智で次がオレだったでしょ。で、智が振り向いてオレに向かってニカッて笑ったんよ。そんとき堕ちた」
「ニカッて笑ったの? それってアホ面っぽいんだけど……」
「オレにはその笑顔が良かったの。こいつと一緒にいると毎日楽しいんだろうなって思ったし、事実楽しかったし、今も楽しいよ」

 中学んときの友達なんかは、オレが笑うと腹立つって言ってたけどな。まあ、あんときは受験前で、脳天気な笑顔はイラッときたらしいし。オレが笑うと「おまえ何も考えてないだろ」なんて言われることが多くて、亮介みたいに思った人は少なかったと思う。


「前も言ったけどさ、オレ智の笑ってる顔好きなんだ。だからさ、智にはいつでも笑ってて欲しいと思う」
「お、おう……」

 言いながら亮介は抱きしめる力を強くしてきた。ちょっと苦しい。でも、何だろう? よく分かんないけどイヤじゃないかも。


「あー終了! これ以上やるとガマン出来なくなりそうだから終了! 智サンキュな」

 なんか知らんけど、いきなり亮介が騒ぎだした。でも、とりあえず湯たんぽは終了らしい。お疲れオレ。


「ガマンって何だよ、ガマンって」
「まあいろいろ。オレにもいろいろあんのよ。とりあえずサンキュな。堪能した」

 そう言った亮介の顔はすっごく切なそうだった。なんか胸が痛い。この顔させたのオレなんだよな。ゴメン亮介。


「あのさ……、オレ、イヤじゃないから」
「ん?」
「湯たんぽするの……別にイヤじゃないから」
「智……」

 何でかな? 思わずそんな言葉が出てた。
 とりあえず今日は帰ろう。そう思って立ち上がった。


「智、ゴメン」 そのとき、そんな言葉と共に、亮介に正面から抱きしめられた。


「ゴメンな智……、明日からまた友達に戻るから。今だけな。ゴメン」


 そう言って、ますます強く抱きしめてきた。オレどうしたらいいんだろう? どうしていいか分かんなくて、立ったまま固まってた。ドキドキしてる。でも、オレだけじゃなく亮介もドキドキしてる。正面から抱きしめられたから、亮介の鼓動が良く分かる。


「ゴメンな智、オレのこと殴っていいから。でも今だけ……、ゴメン」

 少しだけ身体を離した亮介が、片手でオレの顎を持って……キス!

 両腕でオレのこと抱きしめてたハズなのに、気がついたらもう片方の手はオレの首のところにあって、とっさに逃れようとしてもムリだった。


「りょうす…けっ」

 最初は触れるだけのキスだったけど、思わず口をあけたところで、亮介の舌がオレの口に入り込んできた。こんなキス知らない。
 亮介の舌がオレの舌を追いかけてきて、口の中で擦れあう。初めてのそのキスの気持ち良さに力が抜けそうになってしまう。でもそれ以上に呼吸が出来なくて苦しい。思わず亮介の胸を叩いてしまった。


「フッ……」

 一旦離れた亮介の顔は、ものすごく艶っぽくて目が離せなかった。
 それからまた重ねられる唇。オレどうしちゃったんだろ? 亮介のキスがすごく気持ち良い。


「智の顔、トロンとしてて、すっごく色っぽい。ゴメンな。明日には普通に戻ってるからさ、今日は送ってってやれないけどさ、ゴメン」

 辛そうな顔をしながらそう言って、亮介は部屋を出ていった。
 何も考えられないけど、このままここにいちゃいけないような気がして、とりあえずオレは亮介の家を出た。


 亮介のキス、イヤじゃなかった。
 むしろ嬉しかった……?

 オレたちはオトコ同士で、オレは亮介のことを親友として好きで……。
 じゃあ何でキスされてイヤじゃなかったんだ?
 わかんない。自分の気持ちがわかんない。



 晩ごはんは食べなかった。亮介んちでチョコレート食べ過ぎたって言ったら、お母さん呆れてたけど、チョコ食べれて良かったねって笑ってた。



 オレの気持ちって……?


 わかんない。
 わかんない。
 わかんない。



 オレは亮介のこと好き……なの……か?


 わかんない。

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