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1年
精霊魔法4
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精霊魔法を披露するにあたって、まずは簡単な説明から始まった。
「精霊魔法とは既に君たちも先生から説明を受けていると思うが、精霊の力を借りて行う魔法のことだ。力を借りると言うことは、毎回成功するとは限らないってことなんだ。精霊にはいろんな種類があるが、例えば火の魔法を使うときは火の精霊が近くにいないと成功はしない。こればかりはどうにもできないことなので、失敗した場合は諦めて欲しい」
失敗する場合もあると聞いて、少しだけガッカリした空気が流れたかも。そもそもいない精霊の力を借りようとすること自体がおかしいんだけど。ちょっと不思議だね。
「昔は精霊が見えると言う人もいたそうだが、今は精霊は見えないものと言うのが一般常識だ。魔法協会では他国とも情報のやりとりはしているが、精霊が見えると言う精霊魔法使いは存在しない。同時に声も聞こえない。精霊は確かに存在しているが、姿形は無く概念のようなものなんじゃないかとも言われている。まあここは今後の研究で分かってくることだろう。
君たちには少し難しい話をしてしまったかな? と言うことで、ここからはお待ちかねの魔法の披露だ。少々地味だが、そこはガマンして欲しい」
そして魔導師は目を瞑って少しだけ精神統一をして、それから精霊言語を紡ぎ始めた。
<<我は呼びかける。水の精霊たちよ。……捕獲水精霊。……我は告げる。解放して欲しくば力を差し出せ。水の矢を作り的へ放て>>
言葉が終わって少ししてから水の矢が作られ、それが的の方へ飛んでいった。
<<解放>>
終わった途端にクラスメイトの歓声と拍手。魔導師はほっとした表情で、フィラー先生は満足顔だった。
「セイン、どうした?」
「……ごめん」
突然涙を流した僕にマシューは慌てたようだが、僕はこの場では何も言うワケにもいかず黙って目を擦った。
「おやっ……、君は感動して泣いてるのかな?」
「いえ、あの……」
「もしかしたら君も精霊魔法が使えるようになるかもしれない。頑張ってくれたまえ」
「…………」
僕が泣いてる理由を勘違いした魔導師は、にっこり微笑みながらそう言った。
今日は魔導師が来たから剣の授業は中止になったらしく、普段より長かった魔法の授業が終わった後は帰宅しても良いことになった。ふと見るとティタン君が先生に呼ばれて魔導師と言葉を交わしていた。水の精霊魔法使いを目指すと言っていたティタン君だから、きっと魔導師からアドバイスを貰うんだろう。
「マシュー、僕帰るね」
「どうした? オレも行くから」
興奮したクラスメイトたちはまだ屋内訓練場にいたけれど、これ以上この場にいたくない僕は足早にカバンを置いてる教室へ向かっていた。マシューが慌てて後を追いかけてくる。でも今の僕はそんなマシューを気遣う余裕が無いんだ。
学び舎から寮へ無言で歩く僕の隣をマシューも無言で歩いてる。きっと僕の表情は硬いと思う。見てないけどマシューの表情は心配そうなんじゃないかな。部屋に戻ったら説明を求められるのは分かってる。人がいる場所では話せないことだってマシューは分かってるようだ。
「……それで? 何があった、と言うか、何を見た?」
部屋に戻ったマシューは単刀直入に僕に聞いてきた。その質問に僕は答えず、黙ってマシューに抱きついてそれから少しだけ泣いた。
「精霊が一匹消滅したんだ。痛いとか苦しいとかって声が聞こえてたよ」
「消滅? でも精霊魔法って精霊にお願いして行う魔法なんじゃないのか?」
「僕が知ってるのはそう。でもあれは違った。あれは精霊を捕まえて、無理矢理魔法を使わせてるんだ。対価としての魔力も無し」
一番最初に精霊を捕獲した網のようなものは何なのだろうか? 網に魔力を吸われていたようで、徐々に中の精霊たちが薄くなっていったんだ。そんな中で魔法を強要するのは酷いと思う。あの子たちは網から逃れたくて必死になって魔法を放ったんだ。でも一番力の弱い子が耐えられず消滅してしまった。
何で酷い魔法なんだろうか。きっと彼らは見えないから聞こえないから、だから精霊が苦しんでるのが分からないんだと思う。あんなことをしていたら、いつかは精霊たちの怒りを買ってしまう。僕はそれが心配だ。
「僕はどうしたら良いんだろう?」
「んー……、何も出来ないと思う。だってセイン以外は精霊が見えないんだろう? だったら何を言っても通じないと思うな。逆に頭がおかしいと言われるかもしれない」
「どうして見えないのに精霊魔法が使えるんだろう?」
「そうだな。どうしてだろうな」
答えが出せない僕たちは、そのまま暫くは無言のままだった。
後日大図書館で調べたところ、あの魔導師の呟いた精霊言語は今の精霊魔法使いが魔法を行使する際の定型句なんだそうだ。違う箇所は捕獲する精霊の種類と行使する魔法の種類。定型句なので行使する魔法の種類も限定されていて、火矢、水の矢、風の刃、石礫、灯りだけだって。緑と闇の精霊は対象外になってるから、彼らが捕獲されることは無い。
魔法を行使した後は<<解放>>を行うのが良いが、忘れても問題無いとも書いてあった。実際は大問題だよ。だって解放されない限り精霊は捕まったままで、最後は力を吸い取られて消滅してしまうんだもの。こんな本誰が書いたの? ますますやるせない気持ちが強まってしまった。
「おやっ、君は……」
「こんにちは」
「たしか1年生だよね。精霊魔法を見て泣いた子だ」
「いや、あの……」
「泣くくらい感動してくれたなら、僕としては嬉しいよ。これは精霊魔法についての本だね。興味出たのかな?」
「……はい」
大図書館でまさかあの魔導師に会うとは思わなかった。僕を見かけた彼は、わざわざ僕の方まで来てくれたみたい。
「向こうへ行かないかい? 今は時間があるから、少しなら君の質問に答えてあげられるよ」
きっと善意だろう。ニコニコしながらの言葉は穏やかで、後進のために少しでも力になりたいと言う気持ちが伝わってくるようだった。さすがの僕も拒否はしないよ。本音はあまり話したくは無かったけど。
移動したのは、大図書館の隣にある談話室だ。ここは本についての話をするための部屋で、使う人はほとんどいない。せっかくだから、気になるところは聞いてみようか。
「あの……、精霊魔法は魔力を使うんですか?」
「ほんの少しだけ使うかな。精霊魔法を使ってる最中は、指先に魔力を集めてるんだ。精霊言語がその魔力を取り込んで、それを触媒に精霊に力を貸してもらう。一般的にはそう言われているね。事実ある言葉を呟いたときは魔力が吸い取られているから、それは本当なんだろう」
「何て言葉なんですか?」
「<<捕獲水精霊>>と言う言葉だ。もうひとつ魔法が終わった後に<<解放>>と言う言葉も魔力を使う。ただしこちらは唱えなくても良い言葉だ」
魔力を求める精霊言語って初めて知ったけど、力がある言葉だってのは分かる。一応意味も分かるけどね。その言葉を呟いたときに精霊を捕まえる網が作られるってことなんだ。やっぱり気分悪いや。
※※※(補足と言う名の、本編には絡まないプチネタ)
エンダル学園大図書館の蔵書量は、実は国一番なのです。特に専門書が充実していている為、王都にいる魔導師たちも休暇中に訪れたりします。どうしても欲しい本が見つかった場合は司書に写本を依頼します。専門書の写本は結構なお値段になりまして、学園の収入の一部となってます。
「精霊魔法とは既に君たちも先生から説明を受けていると思うが、精霊の力を借りて行う魔法のことだ。力を借りると言うことは、毎回成功するとは限らないってことなんだ。精霊にはいろんな種類があるが、例えば火の魔法を使うときは火の精霊が近くにいないと成功はしない。こればかりはどうにもできないことなので、失敗した場合は諦めて欲しい」
失敗する場合もあると聞いて、少しだけガッカリした空気が流れたかも。そもそもいない精霊の力を借りようとすること自体がおかしいんだけど。ちょっと不思議だね。
「昔は精霊が見えると言う人もいたそうだが、今は精霊は見えないものと言うのが一般常識だ。魔法協会では他国とも情報のやりとりはしているが、精霊が見えると言う精霊魔法使いは存在しない。同時に声も聞こえない。精霊は確かに存在しているが、姿形は無く概念のようなものなんじゃないかとも言われている。まあここは今後の研究で分かってくることだろう。
君たちには少し難しい話をしてしまったかな? と言うことで、ここからはお待ちかねの魔法の披露だ。少々地味だが、そこはガマンして欲しい」
そして魔導師は目を瞑って少しだけ精神統一をして、それから精霊言語を紡ぎ始めた。
<<我は呼びかける。水の精霊たちよ。……捕獲水精霊。……我は告げる。解放して欲しくば力を差し出せ。水の矢を作り的へ放て>>
言葉が終わって少ししてから水の矢が作られ、それが的の方へ飛んでいった。
<<解放>>
終わった途端にクラスメイトの歓声と拍手。魔導師はほっとした表情で、フィラー先生は満足顔だった。
「セイン、どうした?」
「……ごめん」
突然涙を流した僕にマシューは慌てたようだが、僕はこの場では何も言うワケにもいかず黙って目を擦った。
「おやっ……、君は感動して泣いてるのかな?」
「いえ、あの……」
「もしかしたら君も精霊魔法が使えるようになるかもしれない。頑張ってくれたまえ」
「…………」
僕が泣いてる理由を勘違いした魔導師は、にっこり微笑みながらそう言った。
今日は魔導師が来たから剣の授業は中止になったらしく、普段より長かった魔法の授業が終わった後は帰宅しても良いことになった。ふと見るとティタン君が先生に呼ばれて魔導師と言葉を交わしていた。水の精霊魔法使いを目指すと言っていたティタン君だから、きっと魔導師からアドバイスを貰うんだろう。
「マシュー、僕帰るね」
「どうした? オレも行くから」
興奮したクラスメイトたちはまだ屋内訓練場にいたけれど、これ以上この場にいたくない僕は足早にカバンを置いてる教室へ向かっていた。マシューが慌てて後を追いかけてくる。でも今の僕はそんなマシューを気遣う余裕が無いんだ。
学び舎から寮へ無言で歩く僕の隣をマシューも無言で歩いてる。きっと僕の表情は硬いと思う。見てないけどマシューの表情は心配そうなんじゃないかな。部屋に戻ったら説明を求められるのは分かってる。人がいる場所では話せないことだってマシューは分かってるようだ。
「……それで? 何があった、と言うか、何を見た?」
部屋に戻ったマシューは単刀直入に僕に聞いてきた。その質問に僕は答えず、黙ってマシューに抱きついてそれから少しだけ泣いた。
「精霊が一匹消滅したんだ。痛いとか苦しいとかって声が聞こえてたよ」
「消滅? でも精霊魔法って精霊にお願いして行う魔法なんじゃないのか?」
「僕が知ってるのはそう。でもあれは違った。あれは精霊を捕まえて、無理矢理魔法を使わせてるんだ。対価としての魔力も無し」
一番最初に精霊を捕獲した網のようなものは何なのだろうか? 網に魔力を吸われていたようで、徐々に中の精霊たちが薄くなっていったんだ。そんな中で魔法を強要するのは酷いと思う。あの子たちは網から逃れたくて必死になって魔法を放ったんだ。でも一番力の弱い子が耐えられず消滅してしまった。
何で酷い魔法なんだろうか。きっと彼らは見えないから聞こえないから、だから精霊が苦しんでるのが分からないんだと思う。あんなことをしていたら、いつかは精霊たちの怒りを買ってしまう。僕はそれが心配だ。
「僕はどうしたら良いんだろう?」
「んー……、何も出来ないと思う。だってセイン以外は精霊が見えないんだろう? だったら何を言っても通じないと思うな。逆に頭がおかしいと言われるかもしれない」
「どうして見えないのに精霊魔法が使えるんだろう?」
「そうだな。どうしてだろうな」
答えが出せない僕たちは、そのまま暫くは無言のままだった。
後日大図書館で調べたところ、あの魔導師の呟いた精霊言語は今の精霊魔法使いが魔法を行使する際の定型句なんだそうだ。違う箇所は捕獲する精霊の種類と行使する魔法の種類。定型句なので行使する魔法の種類も限定されていて、火矢、水の矢、風の刃、石礫、灯りだけだって。緑と闇の精霊は対象外になってるから、彼らが捕獲されることは無い。
魔法を行使した後は<<解放>>を行うのが良いが、忘れても問題無いとも書いてあった。実際は大問題だよ。だって解放されない限り精霊は捕まったままで、最後は力を吸い取られて消滅してしまうんだもの。こんな本誰が書いたの? ますますやるせない気持ちが強まってしまった。
「おやっ、君は……」
「こんにちは」
「たしか1年生だよね。精霊魔法を見て泣いた子だ」
「いや、あの……」
「泣くくらい感動してくれたなら、僕としては嬉しいよ。これは精霊魔法についての本だね。興味出たのかな?」
「……はい」
大図書館でまさかあの魔導師に会うとは思わなかった。僕を見かけた彼は、わざわざ僕の方まで来てくれたみたい。
「向こうへ行かないかい? 今は時間があるから、少しなら君の質問に答えてあげられるよ」
きっと善意だろう。ニコニコしながらの言葉は穏やかで、後進のために少しでも力になりたいと言う気持ちが伝わってくるようだった。さすがの僕も拒否はしないよ。本音はあまり話したくは無かったけど。
移動したのは、大図書館の隣にある談話室だ。ここは本についての話をするための部屋で、使う人はほとんどいない。せっかくだから、気になるところは聞いてみようか。
「あの……、精霊魔法は魔力を使うんですか?」
「ほんの少しだけ使うかな。精霊魔法を使ってる最中は、指先に魔力を集めてるんだ。精霊言語がその魔力を取り込んで、それを触媒に精霊に力を貸してもらう。一般的にはそう言われているね。事実ある言葉を呟いたときは魔力が吸い取られているから、それは本当なんだろう」
「何て言葉なんですか?」
「<<捕獲水精霊>>と言う言葉だ。もうひとつ魔法が終わった後に<<解放>>と言う言葉も魔力を使う。ただしこちらは唱えなくても良い言葉だ」
魔力を求める精霊言語って初めて知ったけど、力がある言葉だってのは分かる。一応意味も分かるけどね。その言葉を呟いたときに精霊を捕まえる網が作られるってことなんだ。やっぱり気分悪いや。
※※※(補足と言う名の、本編には絡まないプチネタ)
エンダル学園大図書館の蔵書量は、実は国一番なのです。特に専門書が充実していている為、王都にいる魔導師たちも休暇中に訪れたりします。どうしても欲しい本が見つかった場合は司書に写本を依頼します。専門書の写本は結構なお値段になりまして、学園の収入の一部となってます。
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