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1年
カンベンしてほしい1
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数日前、一足先にマシューは十歳になった。
そして今朝、マシューは……。
「喜べセイン。パンツが濡れた」
「……は?」
「だからパンツが濡れた!」
「漏らしたの?」
「ちがーう! 朝にパンツが濡れたってことは、答えは一つしか無いじゃないか」
「……パンツを洗う水が足りなかったら後で僕に言って。僕はもう少し寝るから」
「セイーン!」
そんなの僕に言ったって仕方ないじゃないか。それよりも僕はもう少し寝たいんだ。早朝に叩き起こされた僕はかなり不機嫌にそう思った。
「オレはこの日をずーっとずーっとずーっと待ってたんだぜ。なのに何故セインは一緒に喜んでくれないんだ?」
「…………」
「おいっ、セイン寝るな。おいってば。セイン!」
マシューの話に一切の興味を持てなかった僕は、無慈悲にもそのまま夢の世界へ旅立って行った。おやすみなさい。
◇◇◇ ◇◇◇
「あれっ、どうしたの? いつも仲良いのに、今日に限ってケンカでもした?」
「アルトー! 聞いてくれよ。セインが酷いんだぜー」
朝教室へ行ったら、普段と少し違う雰囲気の僕たちを見たアルト君がそう声掛けてきた。たしかに今日はちょっとだけ雰囲気悪いんだよね。主な理由は、僕がマシューを無視して寝ちゃったからだけど。マシューが拗ねてるんだ。
「おはようアルト君、トーマ君。酷いのは僕じゃなくマシューの方だよ。だって僕、早朝にマシューに叩き起こされたんだから」
「早朝ってことは、あ~漏らしたってことか?」
「ひでぇな。なんでそこだけセインと同じ発想なんだよ」
「えーだって、それくらいしか思いつかないじゃん」
「もしかしてマシュー君て、……その、別の意味で漏らしたの?」
「おっ、トーマは分かってくれるか? そーなんだ、オレは今朝大人になったんだ!」
「いや、それって、逆に恥ずかしがるところじゃないのかな」
「オレは恥ずかしくないぞ。何たって、この日をずーっと待ってたんだからな」
胸を張ってパンツが濡れたことを話すマシュー……。時々僕はマシューの感性が分からなくなるよ。朝っぱらから教室で、パンツパンツって大声で言ってるのはどうかと思うんだよね。ちょっと離れようかな。
「セイ~ン、何でオレから離れるんだ?」
「今この場に限っては、僕はマシューと知り合いだと思われなくないかな」
「ひでぇ!」
「ぼ、僕もセイン君に賛成かな」
「トーマまで!」
「オレもセインに賛成だな。マシューが大声でパンツなんて言うから、女子の視線が冷たいぜ」
「お前らには友情と言う心は無いのか……」
午前中は本当にマシューから離れて、アルト君とトーマ君と一緒に授業を受けたよ。ガックリしたマシューが可哀想になってお昼は一緒に食べたけど、結局マシューの話題は朝と一緒だったんだ。つまり全然反省してなかったってこと。まあ声は小さくなったけどね。
「しっかしさぁ……。朝パンツが濡れてたってのは身体が大人になった証拠だぜ。なら別に恥ずかしがること無いじゃんか」
「そうなのか? オレはまだ分からん。でも実際そうなったら自分が漏らしたんじゃないかって驚くと思うな」
「知識があったら驚かん。良かったな、アルト。今オレが教えたんだから、そうなった時にパニックになることは無いぜ」
「お、おう……」
「僕は……、一応兄さんから聞いて知識はあったけど、驚いたし恥ずかしかったな」
「おっ、トーマってもう儀式を済ませてたんだ」
「うん。ホントのこと言うと、僕皆よりひとつ年上だしね」
「えーっ、1年生って皆同じ歳じゃないの?」
僕の家にエンダル学園の入学案内が来たのは、僕が八歳の時なんだ。十歳になったら学園に入学できるって書いてあったんだよ。だから僕は全員十歳になる歳に入学するものだと思ってたんだ。
「入学できるのは九歳、つまり十歳になる歳からだよ。この学園は九歳から十二歳まで受験可能ってなってるよ」
「僕無試験入学だから知らなかったよ」
「回復系の素質がある人は全員規定の年齢になったら入学できるもんね」
「そう。だからトーマ君が年上って聞いてビックリ」
「一応去年も試験受かって入学自体は出来たんだけどね、学費免除対象にはならなかったんだ。だから一年見送って受け直したの」
トーマ君のところはお兄さんもこの学園の生徒で、彼も学費免除の奨学生なんだって。学費免除の条件も何種類かあるそうで、トーマ君の場合は入学試験の上位五人に入ったからだと言ってた。この上位ってのは全体では無く、専攻する科毎の上位だよ。ちなみにマシューもこの条件に当てはまって、学費免除なんだって。
そして話はこのまま自然の流れで進むと思ってたのに、マシューが強引に戻してしまった。よっぽど嬉しいのは分かったけど、お昼を食べながらパンツとかの話をするのはどうかと思うんだ。デリカシーが無いと言われても仕方ないと思うよ。
「セインはいつなるのか楽しみだな。いいかセイン、朝パンツが濡れてたらちゃんとオレに報告しろよ。セインのパンツはしっかりとオレが洗ってやるから」
「うわあ……」
「もしかしてマシューって変態?」
「僕もアルト君の意見に賛成」
口には出さなかったけど、僕もアルト君の意見に賛成。
前世も前々世もマシューと出会ったのは大人になってからだったから、子供のマシューってどんなだか知らなかったんだよね。前世の記憶があって精神年齢は子供じゃないってのを差し引いたとしても……、うん、なかなかぶっ飛んでる人なのかもしれない。
そんなこんなで授業が終わった放課後、マシューに買い物に付き合って欲しいと言われたんで一緒に出掛けることになったんだ。
「それで何買う予定なの?」
「そりゃあもちろんアレだよ、アレ」
「あれ?」
「香油だ」
「……は?」
そして今朝、マシューは……。
「喜べセイン。パンツが濡れた」
「……は?」
「だからパンツが濡れた!」
「漏らしたの?」
「ちがーう! 朝にパンツが濡れたってことは、答えは一つしか無いじゃないか」
「……パンツを洗う水が足りなかったら後で僕に言って。僕はもう少し寝るから」
「セイーン!」
そんなの僕に言ったって仕方ないじゃないか。それよりも僕はもう少し寝たいんだ。早朝に叩き起こされた僕はかなり不機嫌にそう思った。
「オレはこの日をずーっとずーっとずーっと待ってたんだぜ。なのに何故セインは一緒に喜んでくれないんだ?」
「…………」
「おいっ、セイン寝るな。おいってば。セイン!」
マシューの話に一切の興味を持てなかった僕は、無慈悲にもそのまま夢の世界へ旅立って行った。おやすみなさい。
◇◇◇ ◇◇◇
「あれっ、どうしたの? いつも仲良いのに、今日に限ってケンカでもした?」
「アルトー! 聞いてくれよ。セインが酷いんだぜー」
朝教室へ行ったら、普段と少し違う雰囲気の僕たちを見たアルト君がそう声掛けてきた。たしかに今日はちょっとだけ雰囲気悪いんだよね。主な理由は、僕がマシューを無視して寝ちゃったからだけど。マシューが拗ねてるんだ。
「おはようアルト君、トーマ君。酷いのは僕じゃなくマシューの方だよ。だって僕、早朝にマシューに叩き起こされたんだから」
「早朝ってことは、あ~漏らしたってことか?」
「ひでぇな。なんでそこだけセインと同じ発想なんだよ」
「えーだって、それくらいしか思いつかないじゃん」
「もしかしてマシュー君て、……その、別の意味で漏らしたの?」
「おっ、トーマは分かってくれるか? そーなんだ、オレは今朝大人になったんだ!」
「いや、それって、逆に恥ずかしがるところじゃないのかな」
「オレは恥ずかしくないぞ。何たって、この日をずーっと待ってたんだからな」
胸を張ってパンツが濡れたことを話すマシュー……。時々僕はマシューの感性が分からなくなるよ。朝っぱらから教室で、パンツパンツって大声で言ってるのはどうかと思うんだよね。ちょっと離れようかな。
「セイ~ン、何でオレから離れるんだ?」
「今この場に限っては、僕はマシューと知り合いだと思われなくないかな」
「ひでぇ!」
「ぼ、僕もセイン君に賛成かな」
「トーマまで!」
「オレもセインに賛成だな。マシューが大声でパンツなんて言うから、女子の視線が冷たいぜ」
「お前らには友情と言う心は無いのか……」
午前中は本当にマシューから離れて、アルト君とトーマ君と一緒に授業を受けたよ。ガックリしたマシューが可哀想になってお昼は一緒に食べたけど、結局マシューの話題は朝と一緒だったんだ。つまり全然反省してなかったってこと。まあ声は小さくなったけどね。
「しっかしさぁ……。朝パンツが濡れてたってのは身体が大人になった証拠だぜ。なら別に恥ずかしがること無いじゃんか」
「そうなのか? オレはまだ分からん。でも実際そうなったら自分が漏らしたんじゃないかって驚くと思うな」
「知識があったら驚かん。良かったな、アルト。今オレが教えたんだから、そうなった時にパニックになることは無いぜ」
「お、おう……」
「僕は……、一応兄さんから聞いて知識はあったけど、驚いたし恥ずかしかったな」
「おっ、トーマってもう儀式を済ませてたんだ」
「うん。ホントのこと言うと、僕皆よりひとつ年上だしね」
「えーっ、1年生って皆同じ歳じゃないの?」
僕の家にエンダル学園の入学案内が来たのは、僕が八歳の時なんだ。十歳になったら学園に入学できるって書いてあったんだよ。だから僕は全員十歳になる歳に入学するものだと思ってたんだ。
「入学できるのは九歳、つまり十歳になる歳からだよ。この学園は九歳から十二歳まで受験可能ってなってるよ」
「僕無試験入学だから知らなかったよ」
「回復系の素質がある人は全員規定の年齢になったら入学できるもんね」
「そう。だからトーマ君が年上って聞いてビックリ」
「一応去年も試験受かって入学自体は出来たんだけどね、学費免除対象にはならなかったんだ。だから一年見送って受け直したの」
トーマ君のところはお兄さんもこの学園の生徒で、彼も学費免除の奨学生なんだって。学費免除の条件も何種類かあるそうで、トーマ君の場合は入学試験の上位五人に入ったからだと言ってた。この上位ってのは全体では無く、専攻する科毎の上位だよ。ちなみにマシューもこの条件に当てはまって、学費免除なんだって。
そして話はこのまま自然の流れで進むと思ってたのに、マシューが強引に戻してしまった。よっぽど嬉しいのは分かったけど、お昼を食べながらパンツとかの話をするのはどうかと思うんだ。デリカシーが無いと言われても仕方ないと思うよ。
「セインはいつなるのか楽しみだな。いいかセイン、朝パンツが濡れてたらちゃんとオレに報告しろよ。セインのパンツはしっかりとオレが洗ってやるから」
「うわあ……」
「もしかしてマシューって変態?」
「僕もアルト君の意見に賛成」
口には出さなかったけど、僕もアルト君の意見に賛成。
前世も前々世もマシューと出会ったのは大人になってからだったから、子供のマシューってどんなだか知らなかったんだよね。前世の記憶があって精神年齢は子供じゃないってのを差し引いたとしても……、うん、なかなかぶっ飛んでる人なのかもしれない。
そんなこんなで授業が終わった放課後、マシューに買い物に付き合って欲しいと言われたんで一緒に出掛けることになったんだ。
「それで何買う予定なの?」
「そりゃあもちろんアレだよ、アレ」
「あれ?」
「香油だ」
「……は?」
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