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1年
魔物の森へ7
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魚の処理はリロイさんたちがやってくれることになった。包丁は無いから短剣を使って器用に内蔵の処理をしてくれた。何だかんだ言って慣れてるんだろうね。僕も前世ではやってたんだよ。今は手が小さいから普通の短剣はちょっと難しいかな。もちろんマシューもこれくらいは簡単にやってたよ。彼の場合料理がダメなだけだから、刻んだりとかは問題無いんだ。
お昼にはまだ大分早いけど、魚を焼くのは時間がかかるからね、それに今日は魔物の森ピクニックだから問題無いんだ。と言うことで僕は、ついでにスープを作ることにした。
「ねぇマシュー、ついでにスープも作ろうと思うんだけど、炎球出しても問題無いかな?」
「冒険者なら火を出す道具は持ってると思うぜ」
「それもそっか。じゃあ土台に土魔法を使っても良い?」
「…………」
「何?」
「セインは魔法を使いたいだけだろう。まあ守秘義務があるんだし、少しくらいは良いんじゃね。ただしやりすぎるなよ」
「はーい」
うん。きっと僕は魔法を使いたいだけだと思う。普段は使えないフリをしなきゃいけないから、それがストレスになってるのかもしれないね。だからこうやって魔法を使っても大丈夫そうなときは、思いっきり使いたいのかも。それにここが魔物の森ってのもあるのかもしれないな。前世この森で野営とかしたのが懐かしいんだ。
「すいません。ついでにスープも作りたいんで、ちょっとだけ焚火のところをいじっても良いですか?」
「まだ火を付けてないしそれは構わないが……。まあやってくれ」
「ありがとうございます」
と言うことで僕は土魔法を使って地面を加工して、魚を焼きつつスープが作れるように土台を工夫した。いきなり僕が空中に陣を描いたので、リロイさんもミンツさんもポカンとしてたけど、まあ後で見なかったことにしてもらうつもりだ。
ここは川辺だけど、敢えて水は水球で。これは出せるのを知ってるようだから問題無し。それからリロイさんに火を付けてもらって、鍋にダダンの乾燥肉と乾燥豆を入れた。ダダンの乾燥肉はとても美味しいんだよ。
「なあセイン……、肉と豆は学園の売店で買ったのか? てことは、最初からスープを作る気満々で準備してたってことじゃないか」
「アハハ。もしやれるならやろうかと思ってたんだ。だってスープがあった方が絶対良いと思ったんだもの」
マシューにはジト目で見られたけど、やれそうならやりたいって思ってたのも事実だ。魔法を使うのは予定には入れてなかったけど。だってさ、せっかくの魔物の森だよ。ここで野営してたのが本当に懐かしくて、可能だったら結界とか張って一晩のんびりしたいくらいなんだ。
そんな会話をしつつも僕は食べれそうな野草を探してて、ついでにキノコを採ろうとしたらマシューに手首を掴まれた。
「キノコだけは却下」
「えー、これはしびれ茸じゃないよ。大丈夫なヤツ」
「キノコに関してはセインの言葉は信用しない」
「ヒドイなぁ。じゃあミンツさんに確認してよ。大丈夫だから」
本当にマシューはヒドイなぁ……と、前世の自分の行いを棚に上げてボヤいておく。マシューはミンツさんにキノコを確認してもらってた。ミンツさんの言葉を聞いてやっと安全だと思ったみたい。ちょっとだけ納得いかないけど、まあいいか。
味付けは塩と野草で。でもお肉とかキノコとかからダシが出てるから結構美味しく出来たよ。カップは僕とマシューの分だけ用意してきた。リロイさんたちは自分用のマグを携帯してるのを知ってたからね、必要無いって判断したんだ。
「やっぱり君が九歳だってのは信じられないな。手際が良いし、慣れてるように見える」
「えーっと……ナイショです」
「うーん……。そう言えばさっき空中に描いたのは何だ?」
「魔法です。僕は土系統の魔法の素質が無いから、呪文の代わりに陣を使って魔法を発動させたんです」
「それって学園の1年生でも普通に出来るのか?」
「入学して初めて魔法を習った人はムリですね」
「そうか……」
小さい頃から魔法を習ってたら出来ると思うよ。たぶん。でも、さっき僕がやった土魔法はムリかな。あれは細かい制御とかが必要だから難しいんだ。なんてことはリロイさんたちには言わないよ。
魚もスープも美味しくて、大満足の食事だったよ。おなかいっぱい。少し食休みしたらお待ちかねのエンダルベリーに突撃だ。
なんて思いながら何となく薬草を集めてる僕。せっかくだからね、この前みたいにギルドに買ってもらうんだ。マシューはリロイさんと剣術について話してるみたい。僕が念願のベリーを食べてるときに、マシューはリロイさんから剣を習おうと思ってたんだ。了解してくれるか少し心配してたみたいだけど、リロイさんは快諾してくれたみたい。魚とスープのお礼だってさ。でもそのお礼なら、マシューじゃなく僕になんじゃないかなぁ? ちょっとだけそう思ったりして。
「セイン君てたしか魔法科だったよね?」
「ハイそうですけど」
「魔法科って、上級生になったときこの森に入るのかな?」
「えーっと、たしか選択できるハズだと思います」
「セイン君は入るつもり?」
「そのつもりですが……」
「そっか。じゃあここで野営するときは、頭を布か帽子で隠した方が良いよ」
突然のミンツさんの言葉に、僕はとても驚いてしまった。と言うか頭を隠す?
「あの……」
「ええとね、モーグって魔物は知ってるかな? 最近はなかなか見つからないから食べれないけど、モーグは魔物のくせにステーキにするとものすごく美味しいんだ」
「はあ……」
モーグは知ってるよ。ステーキが美味しいのも知ってるよ。ハーブをすりこんでから燻製肉にしてもかなりイケるんだよ。と言うかお昼を食べたばかりなのに、モーグが食べたくなってきちゃったよ。
「モーグって銀髪の人がいると近寄って来る習性があるんだよね。だから君が髪の毛を隠さないでここで野営したら、夜中にモーグに襲われる可能性が高いんだ」
「えっ、えぇぇぇぇぇーっ!」
驚いた。本当に驚いた。モーグにそんな習性があるなんて知らなかったよ。でも思い出してみれば、前世僕が魔物の森で野営すると、モーグに遭遇する確率がものすごく高かったんだ。仲間の皆も、最後の方は半ば本気で僕をモーグ狩りに同行させてたもんね。と言うか、頼み込まれて仕方なく行ってたんだけど……。
「実際それで死んだ人もいるんだ。上級生になったら教えてもらうと思うけど、まあ今から知っておいても困ることは無いでしょう。と言うか、そのときになったら本当に気をつけるんだよ」
ミンツさんの真剣な言葉に、驚きすぎた僕は首を縦に振るしかできなかった。言葉が出なかったんだもの。そんな僕をマシューは大笑いしながら見てたよ。ヒドイなぁ、もう……。最近こうやってマシューに笑われることが増えたような気がするよ。
「笑ったらだいぶお腹がこなれたぞ。そろそろベリーのところへ行かないか?」
マシューの言葉にちょっとだけ睨んだ僕だけど、結局素直に頷いた。怒るよりベリーの方が優先だ。
お昼にはまだ大分早いけど、魚を焼くのは時間がかかるからね、それに今日は魔物の森ピクニックだから問題無いんだ。と言うことで僕は、ついでにスープを作ることにした。
「ねぇマシュー、ついでにスープも作ろうと思うんだけど、炎球出しても問題無いかな?」
「冒険者なら火を出す道具は持ってると思うぜ」
「それもそっか。じゃあ土台に土魔法を使っても良い?」
「…………」
「何?」
「セインは魔法を使いたいだけだろう。まあ守秘義務があるんだし、少しくらいは良いんじゃね。ただしやりすぎるなよ」
「はーい」
うん。きっと僕は魔法を使いたいだけだと思う。普段は使えないフリをしなきゃいけないから、それがストレスになってるのかもしれないね。だからこうやって魔法を使っても大丈夫そうなときは、思いっきり使いたいのかも。それにここが魔物の森ってのもあるのかもしれないな。前世この森で野営とかしたのが懐かしいんだ。
「すいません。ついでにスープも作りたいんで、ちょっとだけ焚火のところをいじっても良いですか?」
「まだ火を付けてないしそれは構わないが……。まあやってくれ」
「ありがとうございます」
と言うことで僕は土魔法を使って地面を加工して、魚を焼きつつスープが作れるように土台を工夫した。いきなり僕が空中に陣を描いたので、リロイさんもミンツさんもポカンとしてたけど、まあ後で見なかったことにしてもらうつもりだ。
ここは川辺だけど、敢えて水は水球で。これは出せるのを知ってるようだから問題無し。それからリロイさんに火を付けてもらって、鍋にダダンの乾燥肉と乾燥豆を入れた。ダダンの乾燥肉はとても美味しいんだよ。
「なあセイン……、肉と豆は学園の売店で買ったのか? てことは、最初からスープを作る気満々で準備してたってことじゃないか」
「アハハ。もしやれるならやろうかと思ってたんだ。だってスープがあった方が絶対良いと思ったんだもの」
マシューにはジト目で見られたけど、やれそうならやりたいって思ってたのも事実だ。魔法を使うのは予定には入れてなかったけど。だってさ、せっかくの魔物の森だよ。ここで野営してたのが本当に懐かしくて、可能だったら結界とか張って一晩のんびりしたいくらいなんだ。
そんな会話をしつつも僕は食べれそうな野草を探してて、ついでにキノコを採ろうとしたらマシューに手首を掴まれた。
「キノコだけは却下」
「えー、これはしびれ茸じゃないよ。大丈夫なヤツ」
「キノコに関してはセインの言葉は信用しない」
「ヒドイなぁ。じゃあミンツさんに確認してよ。大丈夫だから」
本当にマシューはヒドイなぁ……と、前世の自分の行いを棚に上げてボヤいておく。マシューはミンツさんにキノコを確認してもらってた。ミンツさんの言葉を聞いてやっと安全だと思ったみたい。ちょっとだけ納得いかないけど、まあいいか。
味付けは塩と野草で。でもお肉とかキノコとかからダシが出てるから結構美味しく出来たよ。カップは僕とマシューの分だけ用意してきた。リロイさんたちは自分用のマグを携帯してるのを知ってたからね、必要無いって判断したんだ。
「やっぱり君が九歳だってのは信じられないな。手際が良いし、慣れてるように見える」
「えーっと……ナイショです」
「うーん……。そう言えばさっき空中に描いたのは何だ?」
「魔法です。僕は土系統の魔法の素質が無いから、呪文の代わりに陣を使って魔法を発動させたんです」
「それって学園の1年生でも普通に出来るのか?」
「入学して初めて魔法を習った人はムリですね」
「そうか……」
小さい頃から魔法を習ってたら出来ると思うよ。たぶん。でも、さっき僕がやった土魔法はムリかな。あれは細かい制御とかが必要だから難しいんだ。なんてことはリロイさんたちには言わないよ。
魚もスープも美味しくて、大満足の食事だったよ。おなかいっぱい。少し食休みしたらお待ちかねのエンダルベリーに突撃だ。
なんて思いながら何となく薬草を集めてる僕。せっかくだからね、この前みたいにギルドに買ってもらうんだ。マシューはリロイさんと剣術について話してるみたい。僕が念願のベリーを食べてるときに、マシューはリロイさんから剣を習おうと思ってたんだ。了解してくれるか少し心配してたみたいだけど、リロイさんは快諾してくれたみたい。魚とスープのお礼だってさ。でもそのお礼なら、マシューじゃなく僕になんじゃないかなぁ? ちょっとだけそう思ったりして。
「セイン君てたしか魔法科だったよね?」
「ハイそうですけど」
「魔法科って、上級生になったときこの森に入るのかな?」
「えーっと、たしか選択できるハズだと思います」
「セイン君は入るつもり?」
「そのつもりですが……」
「そっか。じゃあここで野営するときは、頭を布か帽子で隠した方が良いよ」
突然のミンツさんの言葉に、僕はとても驚いてしまった。と言うか頭を隠す?
「あの……」
「ええとね、モーグって魔物は知ってるかな? 最近はなかなか見つからないから食べれないけど、モーグは魔物のくせにステーキにするとものすごく美味しいんだ」
「はあ……」
モーグは知ってるよ。ステーキが美味しいのも知ってるよ。ハーブをすりこんでから燻製肉にしてもかなりイケるんだよ。と言うかお昼を食べたばかりなのに、モーグが食べたくなってきちゃったよ。
「モーグって銀髪の人がいると近寄って来る習性があるんだよね。だから君が髪の毛を隠さないでここで野営したら、夜中にモーグに襲われる可能性が高いんだ」
「えっ、えぇぇぇぇぇーっ!」
驚いた。本当に驚いた。モーグにそんな習性があるなんて知らなかったよ。でも思い出してみれば、前世僕が魔物の森で野営すると、モーグに遭遇する確率がものすごく高かったんだ。仲間の皆も、最後の方は半ば本気で僕をモーグ狩りに同行させてたもんね。と言うか、頼み込まれて仕方なく行ってたんだけど……。
「実際それで死んだ人もいるんだ。上級生になったら教えてもらうと思うけど、まあ今から知っておいても困ることは無いでしょう。と言うか、そのときになったら本当に気をつけるんだよ」
ミンツさんの真剣な言葉に、驚きすぎた僕は首を縦に振るしかできなかった。言葉が出なかったんだもの。そんな僕をマシューは大笑いしながら見てたよ。ヒドイなぁ、もう……。最近こうやってマシューに笑われることが増えたような気がするよ。
「笑ったらだいぶお腹がこなれたぞ。そろそろベリーのところへ行かないか?」
マシューの言葉にちょっとだけ睨んだ僕だけど、結局素直に頷いた。怒るよりベリーの方が優先だ。
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