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復讐を誓った夕暮れ
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(ああ……そっか)
イルアは、フレデリックの表情を見てすべてを悟った。
自分はこの先のフレデリックの未来には必要の無い人間。邪魔なだけの存在だということを。
「イルア、知ったところで君には関係ないだろ?どうせ君とは関わり合うことなんてないだろうし。それよりもさ、あと三か月しか会えないんだから、そんなしみったれた顔をしないでくれよ」
フレデリックが取り繕うように早口で言った。
失言したことは自覚しているようだが、それはキツイ言い方をしてしまったことだけに対してしまったと思っているようだ。
放った言葉がどれほどイルアを傷つけたかなど、彼はこれっぽちも気づいていない。
そして、この関係がまだ続くことを強調しておけば、イルアが機嫌を直すと思い込んでいる。
(なんて……なんて、愚かな人)
彼も、自分も。
未来がある恋ではないのはわかっていた。
けれど、刻む時間は幸せそのもので、彼も終わりを迎えるまで丁寧に、大切に、慈しみながら過ごしてくれているものだと思っていた。
けれど、そうではない。
フレデリックにとってこの時間は、さして大事にしたいものでは無かったのだ。
はっきり言ってしまえば、快楽を得るためだけの時間。相手が自分ではなくても、そこに男女の営みさえあれば問題ないと思えるような時間だったのだ。
あまりに滑稽で、涙すら浮かんでこない。
「……ふふっ、あはっ」
イルアは肩を揺らして笑った。
可笑しくて可笑しくて、たまらなかった。
一方的な恋に溺れていた自分があまりに滑稽で。薄っぺらい「愛している」と言った彼の言葉を無条件に信じた自分が、あまりに惨めで。
何より、これだけ自分の心をめった刺しにした相手が、これっぽちもそのことに気付いていないことが、不快を通り越して愉快な気持ちにすらなってくる。
そして声を上げて笑い出したイルアの真意に気付くことも、気付こうとすら思わないフレデリックは、ただただ機嫌を直してくれたのだと思い込み安堵の息を吐いた。
「まぁ、そういうことだから。俺は、そろそろ戻るとしよう。イルア、次は4日後だから。─── じゃあ、また」
笑いを止めないイルアに、不穏な何かを感じたのだろうか。
フレデリックはそう言いながらそそくさと身支度を整える。そして逃げるように、イルアの家を後にした。
そんな恋人だった男の情けない後ろ姿を見ながら、イルアは決めた。
絶対に許さない。嘘を付き通すことすらできなかった不誠実な男には、それなりの報復をと。
ただこの期に及んで、もしかして振り返ってくれるのかもと期待して、結局、そうしなかった彼に、心が軋んでしまった自分を───本当に愚かで救いようがないとイルアは自嘲した。
イルアは、フレデリックの表情を見てすべてを悟った。
自分はこの先のフレデリックの未来には必要の無い人間。邪魔なだけの存在だということを。
「イルア、知ったところで君には関係ないだろ?どうせ君とは関わり合うことなんてないだろうし。それよりもさ、あと三か月しか会えないんだから、そんなしみったれた顔をしないでくれよ」
フレデリックが取り繕うように早口で言った。
失言したことは自覚しているようだが、それはキツイ言い方をしてしまったことだけに対してしまったと思っているようだ。
放った言葉がどれほどイルアを傷つけたかなど、彼はこれっぽちも気づいていない。
そして、この関係がまだ続くことを強調しておけば、イルアが機嫌を直すと思い込んでいる。
(なんて……なんて、愚かな人)
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けれど、そうではない。
フレデリックにとってこの時間は、さして大事にしたいものでは無かったのだ。
はっきり言ってしまえば、快楽を得るためだけの時間。相手が自分ではなくても、そこに男女の営みさえあれば問題ないと思えるような時間だったのだ。
あまりに滑稽で、涙すら浮かんでこない。
「……ふふっ、あはっ」
イルアは肩を揺らして笑った。
可笑しくて可笑しくて、たまらなかった。
一方的な恋に溺れていた自分があまりに滑稽で。薄っぺらい「愛している」と言った彼の言葉を無条件に信じた自分が、あまりに惨めで。
何より、これだけ自分の心をめった刺しにした相手が、これっぽちもそのことに気付いていないことが、不快を通り越して愉快な気持ちにすらなってくる。
そして声を上げて笑い出したイルアの真意に気付くことも、気付こうとすら思わないフレデリックは、ただただ機嫌を直してくれたのだと思い込み安堵の息を吐いた。
「まぁ、そういうことだから。俺は、そろそろ戻るとしよう。イルア、次は4日後だから。─── じゃあ、また」
笑いを止めないイルアに、不穏な何かを感じたのだろうか。
フレデリックはそう言いながらそそくさと身支度を整える。そして逃げるように、イルアの家を後にした。
そんな恋人だった男の情けない後ろ姿を見ながら、イルアは決めた。
絶対に許さない。嘘を付き通すことすらできなかった不誠実な男には、それなりの報復をと。
ただこの期に及んで、もしかして振り返ってくれるのかもと期待して、結局、そうしなかった彼に、心が軋んでしまった自分を───本当に愚かで救いようがないとイルアは自嘲した。
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