もてあそんでくれたお礼に、貴方に最高の餞別を。婚約者さまと、どうかお幸せに。まぁ、幸せになれるものなら......ね?

当麻月菜

文字の大きさ
6 / 16
魔女が授ける、復讐方法

2

しおりを挟む
 イルアが叔母の家の敷地に足を踏み入れた瞬間、玄関扉が開いた。

 次いで真っ黒なフード付きのローブをまとった女性がしっかりとした足取りで、こちらに向かってくる。それは、間違いなく叔母だった。

(どうしよう……帰れと怒鳴られるのだろうか)

 といっても、どうしようも、こうしようもない。帰れと怒鳴られたなら、地面に跪いて謝るだけ。

 そうとわかっていても、身体が強張り、足がピタリと止まる。

 しかし、叔母はイルアが足を止めようとも、まっすぐ歩いてくる。フードを目深に被っているせいで、その表情はわからない。

 叔母の家は小さく、敷地も狭い。

 だから、あっという間に叔母は距離を詰め、イルアと向き合う。

「……叔母様、どうかこれまでのことをお許しください。私……どうしても叔母様に」
「イルア、待ってたよ。私の力を求めているんだね。いいよ、あんたの力になってやるよ」

 叔母はイルアの言葉を遮りニヤリと笑った。

 魔女と言う名に恥じない全てを見透かしているような、それでいて底意地の悪そうな笑みだった。






 室内に入った途端、叔母はフードを取った。今はその表情が良く見える。

「改めて、久しぶりだね。最近めっきり寒くなったけれど、元気していたかい?……って、その顔で元気と言われても、信じないけどね」

 くすっと笑いながら叔母こと魔女は、イルアの前にお茶を出す。

 対してイルアは、何と答えていいのかわからず曖昧に頷きながら、ティーカップを手に取った。

 場所は変わって、ここは叔母の家。

 狭い家には客間などないから、イルアはキッチンのダイニングテーブルに着席して叔母と向き合っている。

 つまりイルアは、門前払いされることなく、無事叔母の家に招き入れてもらえることができた。しかも叔母は無条件に力を貸すと言ってくれた。

 それはとても有難いし、心強い。しかし、これまでしてきた叔母への仕打ちを考えると、虫が良すぎるのではないかと罪悪感を覚えてしまう。

「叔母様……本当に良いのですか?」
「は?何がだい?それより冷めないうちに早くお茶をお飲み。冷めたらもっと苦くなるよ」

 一睡もしていない自分はひどい顔をしていたのだろう。

 叔母は自分の体調を気遣って、薬膳茶を出してくれた。その心遣いは素直に嬉しい。だが、叔母が淹れる薬膳茶は、世界で一番苦いお茶でもある。

 だからイルアは一先ずお茶を飲み切ることに専念する。叔母の目が、残すなんて論外だと強く訴えているからというのもあるが、とんとん拍子進んでしまい混乱する気持ちを落ちつかせるために。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

地獄の業火に焚べるのは……

緑谷めい
恋愛
 伯爵家令嬢アネットは、17歳の時に2つ年上のボルテール侯爵家の長男ジェルマンに嫁いだ。親の決めた政略結婚ではあったが、小さい頃から婚約者だった二人は仲の良い幼馴染だった。表面上は何の問題もなく穏やかな結婚生活が始まる――けれど、ジェルマンには秘密の愛人がいた。学生時代からの平民の恋人サラとの関係が続いていたのである。  やがてアネットは男女の双子を出産した。「ディオン」と名付けられた男児はジェルマンそっくりで、「マドレーヌ」と名付けられた女児はアネットによく似ていた。  ※ 全5話完結予定  

ハイパー王太子殿下の隣はツライよ! ~突然の婚約解消~

緑谷めい
恋愛
 私は公爵令嬢ナタリー・ランシス。17歳。  4歳年上の婚約者アルベルト王太子殿下は、超優秀で超絶イケメン!  一応美人の私だけれど、ハイパー王太子殿下の隣はツライものがある。  あれれ、おかしいぞ? ついに自分がゴミに思えてきましたわ!?  王太子殿下の弟、第2王子のロベルト殿下と私は、仲の良い幼馴染。  そのロベルト様の婚約者である隣国のエリーゼ王女と、私の婚約者のアルベルト王太子殿下が、結婚することになった!? よって、私と王太子殿下は、婚約解消してお別れ!? えっ!? 決定ですか? はっ? 一体どういうこと!?  * ハッピーエンドです。

裏切者には神罰を

夜桜
恋愛
 幸せな生活は途端に終わりを告げた。  辺境伯令嬢フィリス・クラインは毒殺、暗殺、撲殺、絞殺、刺殺――あらゆる方法で婚約者の伯爵ハンスから命を狙われた。  けれど、フィリスは全てをある能力で神回避していた。  あまりの殺意に復讐を決め、ハンスを逆に地獄へ送る。

第一王子に裏切られた私は意外と身近に転生しました。さぁ復讐を始めましょう……

水城ゆき
恋愛
公爵令嬢のメリアンナは知ってしまった。婚約者である第一王子アストレアが自分の屋敷のメイドであるミレーナにラブレターを送った事を。 憤怒したメリアンナは二人の恋を実らせまいと行動するが、その作戦が上手くいきかけた時。 突然現れたミレーナを見て、思わずアストレアは抱きしめていたメリアンナを突き飛ばした。 メリアンナは階段を転落する事になり、そのまま命を落としてしまう。 しかし次に目覚めた時、メリアンナは第二王子の長女として以前の記憶を保ったまま生まれ変わっていたのだ。 ここからメリアンナの復讐が始まる。

【完結】時戻り令嬢は復讐する

やまぐちこはる
恋愛
ソイスト侯爵令嬢ユートリーと想いあう婚約者ナイジェルス王子との結婚を楽しみにしていた。 しかしナイジェルスが長期の視察に出た数日後、ナイジェルス一行が襲撃された事を知って倒れたユートリーにも魔の手が。 自分の身に何が起きたかユートリーが理解した直後、ユートリーの命もその灯火を消した・・・と思ったが、まるで悪夢を見ていたように目が覚める。 夢だったのか、それともまさか時を遡ったのか? 迷いながらもユートリーは動き出す。 サスペンス要素ありの作品です。 設定は緩いです。 6時と18時の一日2回更新予定で、全80話です、よろしくお願い致します。

10年間の結婚生活を忘れました ~ドーラとレクス~

緑谷めい
恋愛
 ドーラは金で買われたも同然の妻だった――  レクスとの結婚が決まった際「ドーラ、すまない。本当にすまない。不甲斐ない父を許せとは言わん。だが、我が家を助けると思ってゼーマン伯爵家に嫁いでくれ。頼む。この通りだ」と自分に頭を下げた実父の姿を見て、ドーラは自分の人生を諦めた。齢17歳にしてだ。 ※ 全10話完結予定

傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。

石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。 そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。 新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。 初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、別サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

【完結】さよなら、馬鹿な王太子殿下

花草青依
恋愛
ビーチェは恋人であるランベルト王太子の傍らで、彼の“婚約破棄宣言”を聞いていた。ランベルトの婚約者であるニナはあっさりと受け入れて去って行った。それを見て、上手く行ったと満足するビーチェ。しかし、彼女の目的はそれだけに留まらず、王宮の平和を大きく乱すものだった。 ■主人公は、いわゆる「悪役令嬢もの」の原作ヒロインのポジションの人です ■画像は生成AI (ChatGPT)

処理中です...