盲目王子の策略から逃げ切るのは、至難の業かもしれない

当麻月菜

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お仕事のはずなのに、そんな顔であんなことをするのは少し狡いと思う

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 ─── カタン。

 じゃあそういうことでと、ノアは席を立つ。

 次いでフレシアに眼で合図すると、そそくさと扉へと向かった。

 一応、言われた通りここに来た。そして取引の内容まで聞いてあげた。

 結果としてフレシア自ら断ってくれたので、ノアはぼぉーっと傍観しているだけで終わったけれど、一応義理は果たした。ここまで付き合ってくれたのだから不義理だとか、不敬罪とか言われる筋合いはないだろう。

 そう思っていた。

 しかし、ノアは貴族でも無い市井の人間である。

 街中ではそれで通りが通るかもしれないが、ここはお城。庶民のルールは通用しない。

「待ちなさい、ノア嬢。話はまだ終わっていない」
「そうよ。殿下がいらっしゃるのに途中退席など、失礼にも程があるわ。お座りなさい」

 付属のはずのクリスティーナの方が引き留める文字数が多いことに、彼女の自己主張がしっかり現れているなと思ったけれど、口に出すことをはせずトコトコと出口扉に向かう。

 でも、次の瞬間、ノアの足が止まった。

「君が過ごした孤児院だけれど、大層お金に困っているようだね」
「……なっ」

 ローガンの言葉に、ノアは不覚にも足を止め、身体ごと振り返ってしまった。

 対してローガンは、これまでずっと徹底してノーリアクションだったノアが反応を示したことがさぞや嬉しかったのだろう。彼は、にんまりと笑う。クリスティーナも、同じく。

「あの孤児院は私設孤児院だけれど、国営地に建てられたものだ。しかも格安の地代のはずなのに、もう何年も支払いを滞っているようだね。知っていたか?」
「……いえ」

 とても悔しいが、ノアは孤児院のお財布状況を把握していない。

 子供がそんなことを気にするなとロキ院長が、教えてくれなかったのだ。

(もうっ、こんな形で知るくらいなら無理矢理にでも聞き出しておけばよかった!)

 といっても、ロキ院長の言い分はわかる。

 自分が院長と同じ立場になったら、きっと子供達に教えるわけがない。しつこく聞かれたら、菓子の一つでも投げて気を逸らす。

 でも、仮初め婚約者として毎月せっせと仕送りしていたけれど、そんなものじゃ足りないくらい厳しい経済状況だったということか。

 ノアはぐっと唇を噛む。

 多分今は、人生で一番冷静にならなくてはならない時だ。

(貧乏なのは疑いようのない事実だ。でも……ロキ院長は政府が孤児院を建て直してくれるって言っていた。だから地代を払っていないというローガンの話はおかしい。だって、政府は血も涙もない奴らだって市場のおっちゃんが言ってたもん!払うもん払っていないのに、政府がこっちに厚意を向けてくれるはずなんてない───絶対に無い!!)

 悶々と考えた結果、ノアはローガンが嘘をついていると確信した。
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