6 / 61
1.婚約を破棄する少女に、冷徹領主は暴言を吐く
6
しおりを挟む
態度が急変したモニカに、ようやっとセリオはことの重大さに気づく。
「な、なぁ、モニカ。......急にどうしたんだよ。 僕、気に触るようなことを言った?」
狼狽えてはいるが、セリオはその理由に気づいていないし、考える気も無いようだった。
(そういうところ全部が、嫌なのよ!!)
モニカは眼光を更に強くして、わざとガタンと音を立てて立ち上がる。
「聞こえなかったの?出ていって」
「いや、だからさ。僕は理由を聞いているんじゃん。それを無視して、この態度はどうかと思うよ?まずは話し合おう」
「あなた頭も悪いけど、耳も悪いようね。そんなポンコツな頭と耳を持った人に説明をしたところで、理解できるとは到底思えません。帰れ」
「......なっ」
見た目は小柄で、大人しい印象を与えるモニカの口から次々と毒を吐くその様は、かなりのインパクトがある。
村の宝物として生まれ、我が儘放題に育てられたセリオにとったら、小型犬だと思っていたら実は狼の子供だったといったところか。
鋭い牙で喉元を食い千切られることに、今ようやっと気づいたようだった。
だからその身が可愛いのであれば、逃げるべきである。
けれど、セリオは馬鹿だった。そして無駄にプライドが高かった。
女性に怯えて逃げたなどというのは彼にとったら黒歴史になるらしい。
そして、本気でキレた人間でも、自分には害をもたらす存在にはならないだろうという奢りが残っていた。
「やれやれ。君を妻にする前に、色々と教育をしなければならないようだね。いいかい、モニカ、まず男に対してそんな口のきき方をしてはいけない。そして男の言うことに逆らってもいけない」
「あんたが、まともな人間なら言葉遣いだって改めるし、正しいことは賛同できるわよ」
「その言い方、間違っているよ。あとね、正しいことはって言ったけれど、僕が間違ったことを言うわけがないじゃん。だから、これも間違い。正しいことに賛同するんじゃなくって、僕の言うこと全部に素直に頷く。これが正解なんだよ。わかったかい?」
まるで神にでもなったかのような口ぶりに、モニカの額に青筋が立つ。
この男に何を言っても無駄だ。それだけは確かなのだが、怒りのあまり冷静な判断ができないモニカはついつい余計な質問をしてしまった。
「なら聞くけど、もし仮にアクゥ砦の警護が手薄になっていることが事実だったらどうするの?あの道は、たくさんの人が通るのよ。それに盗賊だって捕まったっていう話を聞いていないわ。きちんと事実確認をして、然るべき対応をするべきなんじゃないの?また誰かが襲われたならどうするの?!」
モニカが村長に詰め寄ったのは、同じ不幸を繰り返して欲しくなかったからだ。
自分と同じような経験を誰にもして欲しくなかった。
両親の死を無駄にしないで欲しい。その思いで強く訴えたのだ。
けれど、セリオは「事実確認? 然るべき処置? モニカは難しい言葉を知っているね」ととんちんかんなことを言う。
そして、問うたことを心底後悔するようなことをのたまった。
「いや馬車を持っていたのは君の家だけだからさ、もう、襲われることはないんじゃない?」
プッと吹き出しながらそう言ったセリオの顔を、モニカは一生忘れないだろうと思った。
「な、なぁ、モニカ。......急にどうしたんだよ。 僕、気に触るようなことを言った?」
狼狽えてはいるが、セリオはその理由に気づいていないし、考える気も無いようだった。
(そういうところ全部が、嫌なのよ!!)
モニカは眼光を更に強くして、わざとガタンと音を立てて立ち上がる。
「聞こえなかったの?出ていって」
「いや、だからさ。僕は理由を聞いているんじゃん。それを無視して、この態度はどうかと思うよ?まずは話し合おう」
「あなた頭も悪いけど、耳も悪いようね。そんなポンコツな頭と耳を持った人に説明をしたところで、理解できるとは到底思えません。帰れ」
「......なっ」
見た目は小柄で、大人しい印象を与えるモニカの口から次々と毒を吐くその様は、かなりのインパクトがある。
村の宝物として生まれ、我が儘放題に育てられたセリオにとったら、小型犬だと思っていたら実は狼の子供だったといったところか。
鋭い牙で喉元を食い千切られることに、今ようやっと気づいたようだった。
だからその身が可愛いのであれば、逃げるべきである。
けれど、セリオは馬鹿だった。そして無駄にプライドが高かった。
女性に怯えて逃げたなどというのは彼にとったら黒歴史になるらしい。
そして、本気でキレた人間でも、自分には害をもたらす存在にはならないだろうという奢りが残っていた。
「やれやれ。君を妻にする前に、色々と教育をしなければならないようだね。いいかい、モニカ、まず男に対してそんな口のきき方をしてはいけない。そして男の言うことに逆らってもいけない」
「あんたが、まともな人間なら言葉遣いだって改めるし、正しいことは賛同できるわよ」
「その言い方、間違っているよ。あとね、正しいことはって言ったけれど、僕が間違ったことを言うわけがないじゃん。だから、これも間違い。正しいことに賛同するんじゃなくって、僕の言うこと全部に素直に頷く。これが正解なんだよ。わかったかい?」
まるで神にでもなったかのような口ぶりに、モニカの額に青筋が立つ。
この男に何を言っても無駄だ。それだけは確かなのだが、怒りのあまり冷静な判断ができないモニカはついつい余計な質問をしてしまった。
「なら聞くけど、もし仮にアクゥ砦の警護が手薄になっていることが事実だったらどうするの?あの道は、たくさんの人が通るのよ。それに盗賊だって捕まったっていう話を聞いていないわ。きちんと事実確認をして、然るべき対応をするべきなんじゃないの?また誰かが襲われたならどうするの?!」
モニカが村長に詰め寄ったのは、同じ不幸を繰り返して欲しくなかったからだ。
自分と同じような経験を誰にもして欲しくなかった。
両親の死を無駄にしないで欲しい。その思いで強く訴えたのだ。
けれど、セリオは「事実確認? 然るべき処置? モニカは難しい言葉を知っているね」ととんちんかんなことを言う。
そして、問うたことを心底後悔するようなことをのたまった。
「いや馬車を持っていたのは君の家だけだからさ、もう、襲われることはないんじゃない?」
プッと吹き出しながらそう言ったセリオの顔を、モニカは一生忘れないだろうと思った。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
582
1 / 4
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる