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4-2.冬の嵐(後編)
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王族が、平民の荒れた庭の片付けをする。
辺境の村に住んでいるモニカとて、それはどう考えてもあってはならない事だとわかる。
「リック様、ご勘弁下さい」
抱えていた石をばらまきながら、モニカはリックの前に跪いてブルブルと首を横に振った。
「えー……だって、皆でやったほうが早いじゃん」
不服そうに口を尖らすリックに対して、モニカは平民の心情などこれっぽちも気付いてくれないことに頭を抱えたくなった。
「そういう問題では無いんです。どうかお立ち下さい。そして、砦に向かってください。お願いします」
「うん。砦にはちゃんと行くから安心して。それより、ちゃっちゃと片付けようよ。─── あ、エバ、こっちは僕たちでやっておくから、君は屋敷の中の掃除をお願いね」
「かしこまりました」
気付かぬうちに、花壇にばらまかれていたガラクタを取り出していたエバは、すぐに手を止めて腰を折る。
そしてモニカが引き留める間もなく、あっという間に屋敷の中に消えて行ってしまった。
「さっ、モニカちゃん。大きい石は僕たちが持つから。君は……そうだなぁ……。お茶でも淹れといてよ」
「無理ですっ」
他人に片付けを任せて、のほほんと茶など淹れられるほどモニカの神経は図太くない。
しかし、リックはあわあわとモニカが慌てている内に、せっせと石を拾っていく。
そしてエバの代わりにリックの護衛3人が花壇で作業を始めてしまい、私服姿の警護の人達まで庭に散らばった石を拾い始めてしまった。
モニカの自宅は辺境の村にしては、そこそこ広い。
しかしこれだけの人数で片付けを始められてしまったら、モニカの作業スペースは皆無である。
したがって不本意ながらモニカは、ペコペコと頭を下げながら「すいません、ありがとうございます」を連呼して自宅のキッチンへと向かうしかなかった。
モニカがキッチンでお茶を淹れ終えるのと、リックたちが片付けを終えたのは、ほぼ同時だった。
「リック様、此度の件、なんとお礼を申してよいのかわかりませんが……」
令嬢のように上品な言葉遣いなどできないモニカは、ごにょごにょと言葉尻を濁しながら、リックの前にお茶を置く。
「ははっ。そんなに恐縮しないでよ。たかが石拾いじゃん」
「…… されど石拾いです」
「モニカちゃん、なかなか言うねぇー」
「……はぁ」
エバの手で窓の一部以外は、すっかり元通りになった居間で、リックはのソファの背もたれに身体を預けながら、ゆったりと笑う。
しかしモニカは、どんな顔をして良いのかわからない。
今、居間にはリックと二人っきりだ。
お茶は人数用意したのだが、リック以外は皆、居間に入ることを辞退してキッチンの小さなテーブルでお茶を飲んでいる。
私服姿の警護の人に至っては、庭で立ったままだティーカップを傾ける始末。
今後アリの子一匹すら、この家に立ち入らせ無いという意気込みが痛いほど伝わってきて、モニカは申し訳ない気持ちになってしまう。
「あの……リック様、お願いがあるんですが……」
トレーを持ったままモニカがおずおずと切り出せば、ティーカップを手にしていたリックは、一旦ソーサーに戻してから口を開いた。
「うん、僕のこと、お兄ちゃんって言ってくれたら何でも聞いてあげるよ」
にこっと笑ったリックに、モニカは死んだ魚のような目をしてしまった。
辺境の村に住んでいるモニカとて、それはどう考えてもあってはならない事だとわかる。
「リック様、ご勘弁下さい」
抱えていた石をばらまきながら、モニカはリックの前に跪いてブルブルと首を横に振った。
「えー……だって、皆でやったほうが早いじゃん」
不服そうに口を尖らすリックに対して、モニカは平民の心情などこれっぽちも気付いてくれないことに頭を抱えたくなった。
「そういう問題では無いんです。どうかお立ち下さい。そして、砦に向かってください。お願いします」
「うん。砦にはちゃんと行くから安心して。それより、ちゃっちゃと片付けようよ。─── あ、エバ、こっちは僕たちでやっておくから、君は屋敷の中の掃除をお願いね」
「かしこまりました」
気付かぬうちに、花壇にばらまかれていたガラクタを取り出していたエバは、すぐに手を止めて腰を折る。
そしてモニカが引き留める間もなく、あっという間に屋敷の中に消えて行ってしまった。
「さっ、モニカちゃん。大きい石は僕たちが持つから。君は……そうだなぁ……。お茶でも淹れといてよ」
「無理ですっ」
他人に片付けを任せて、のほほんと茶など淹れられるほどモニカの神経は図太くない。
しかし、リックはあわあわとモニカが慌てている内に、せっせと石を拾っていく。
そしてエバの代わりにリックの護衛3人が花壇で作業を始めてしまい、私服姿の警護の人達まで庭に散らばった石を拾い始めてしまった。
モニカの自宅は辺境の村にしては、そこそこ広い。
しかしこれだけの人数で片付けを始められてしまったら、モニカの作業スペースは皆無である。
したがって不本意ながらモニカは、ペコペコと頭を下げながら「すいません、ありがとうございます」を連呼して自宅のキッチンへと向かうしかなかった。
モニカがキッチンでお茶を淹れ終えるのと、リックたちが片付けを終えたのは、ほぼ同時だった。
「リック様、此度の件、なんとお礼を申してよいのかわかりませんが……」
令嬢のように上品な言葉遣いなどできないモニカは、ごにょごにょと言葉尻を濁しながら、リックの前にお茶を置く。
「ははっ。そんなに恐縮しないでよ。たかが石拾いじゃん」
「…… されど石拾いです」
「モニカちゃん、なかなか言うねぇー」
「……はぁ」
エバの手で窓の一部以外は、すっかり元通りになった居間で、リックはのソファの背もたれに身体を預けながら、ゆったりと笑う。
しかしモニカは、どんな顔をして良いのかわからない。
今、居間にはリックと二人っきりだ。
お茶は人数用意したのだが、リック以外は皆、居間に入ることを辞退してキッチンの小さなテーブルでお茶を飲んでいる。
私服姿の警護の人に至っては、庭で立ったままだティーカップを傾ける始末。
今後アリの子一匹すら、この家に立ち入らせ無いという意気込みが痛いほど伝わってきて、モニカは申し訳ない気持ちになってしまう。
「あの……リック様、お願いがあるんですが……」
トレーを持ったままモニカがおずおずと切り出せば、ティーカップを手にしていたリックは、一旦ソーサーに戻してから口を開いた。
「うん、僕のこと、お兄ちゃんって言ってくれたら何でも聞いてあげるよ」
にこっと笑ったリックに、モニカは死んだ魚のような目をしてしまった。
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