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とある夜会にて②
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(もういっそ、会場中にあるワインをコイツにぶっかけて、彼の上着をワイン色に染めて差し上げようかしら?上着の色はオフホワイトだから、さぞや綺麗に染まるでしょう)
そんな物騒なことをミルフィは考える。結構、本気で。
しかししつこいが、ここは王城の夜会会場。今日この日を心待ちにしてきた招待客のことを考えると、ミルフィは実行に移せない。それに何より、兄が近くにいる。
ただでさえ悪女と呼ばれる自分のせいで、兄は社交界で風当たりが強いのだ。これ以上迷惑はかけられない。
だからミルフィは一先ずハンカチを拾うことにする。
「ったく、本当にお前は口だけじゃなく態度も乱暴者だな。こんな奴の婚約者になった俺は本当に不幸者だ」
すぐさまそんな言葉が降ってきた。しかも、自分だけに聞こえる声量で。
「……っ」
(やっぱ、ワインぶっかけても良いかしら?)
いやいっそ、ボトルごとこいつの頭をかち割りたい。あと「どうせなら今の言葉、もっと大きな声で言ってみなさい」と婚約者の胸倉つかんで怒鳴りたい。
しかしそうしてしまえば、今日この日を心待ちにしてきた……と、再び同じ思考になったミルフィは、しゃがんだままの状態で小さく息を吐いて感情を落ち着かせる。
「───……やっぱり、この騒ぎはミルフィ嬢だったのね」
殿下と兄が去ったのを横目で確認して立ち上がった途端に、今度はどっかの令嬢が聞こえよがしにそんなことを言った。
「相変わらず、場の雰囲気を壊すのがお上手だこと」
「ああ……婚約者様がお気の毒だわ。お可哀そうに」
「それにしても、そんなことまでして悪目立ちたいのかしら?見苦しいわ」
「今日くらいは大人しくされると思ってましたが……。まぁ、あのお方にそれを望むのは無理ですわね。おほほほ」
一人が言い出した途端、辺りに居た令嬢たちは扇を口元で隠しながら待ってましたと言わんばかりにミルフィの陰口を囁き始める。
そんなお嬢様方を目にしても、ミルフィの表情は動かない。
この程度はいつものことだ。それに一度”悪女”というレッテルを貼られてしまった以上、ここで食って掛かってしまえば、状況は更に悪くなる。
……そう。そう思っているから、自分の陰口を言う令嬢達には食って掛かることはしない。
ただ、すぐ近くにいる婚約者であるルイムには物申したい。
だってこの男、悲劇のヒーローのような顔をして自分に酔っていらっしゃるから。そして、隠そうとしているが、同情の眼差しを受け、めっちゃ嬉しそうにしているから。
しかもルイムは陰口を言う令嬢たちに背中を押されたのか、それともただ単に無神経の塊なのかわからないが、こんなことまで言ってくれた。
「あーあ、俺の婚約者が君なんかじゃなくって、アリア嬢だったら良かったのに」
アリア嬢とは、シヴァン家の子爵令嬢のこと。
見た目は天使のように愛らしく、爵位の低さなんてものともせず社交界では華のような存在。悪女と呼ばれているミルフィとは真逆の位置にいる。
(ねえ、それはちょっと無いんじゃない!?)
ミルフィはドレスの裾をぎゅっと握りしめて怒鳴りつけたい衝動をぐっとこらえる。
愛らしいアリアと張り合おうなんて、これっぽっちも思っていない。
でもこんな大勢の人たちがいる場で、他人と比べる発言をするのは非常識極まりない。
そんな気持ちでミルフィは、ルイムをキッと睨み付ける。そうすれば彼は、大仰に肩をすくめてみせた。
「まったく反省の色が無いね。なぁ頼むからさぁ……君は僕の人生を滅茶苦茶にしていることを、少しは気付いてくれよ」
……その発言を聞いた後、ミルフィはどうやって夜会を過ごしたか記憶が定かではない。
そんな物騒なことをミルフィは考える。結構、本気で。
しかししつこいが、ここは王城の夜会会場。今日この日を心待ちにしてきた招待客のことを考えると、ミルフィは実行に移せない。それに何より、兄が近くにいる。
ただでさえ悪女と呼ばれる自分のせいで、兄は社交界で風当たりが強いのだ。これ以上迷惑はかけられない。
だからミルフィは一先ずハンカチを拾うことにする。
「ったく、本当にお前は口だけじゃなく態度も乱暴者だな。こんな奴の婚約者になった俺は本当に不幸者だ」
すぐさまそんな言葉が降ってきた。しかも、自分だけに聞こえる声量で。
「……っ」
(やっぱ、ワインぶっかけても良いかしら?)
いやいっそ、ボトルごとこいつの頭をかち割りたい。あと「どうせなら今の言葉、もっと大きな声で言ってみなさい」と婚約者の胸倉つかんで怒鳴りたい。
しかしそうしてしまえば、今日この日を心待ちにしてきた……と、再び同じ思考になったミルフィは、しゃがんだままの状態で小さく息を吐いて感情を落ち着かせる。
「───……やっぱり、この騒ぎはミルフィ嬢だったのね」
殿下と兄が去ったのを横目で確認して立ち上がった途端に、今度はどっかの令嬢が聞こえよがしにそんなことを言った。
「相変わらず、場の雰囲気を壊すのがお上手だこと」
「ああ……婚約者様がお気の毒だわ。お可哀そうに」
「それにしても、そんなことまでして悪目立ちたいのかしら?見苦しいわ」
「今日くらいは大人しくされると思ってましたが……。まぁ、あのお方にそれを望むのは無理ですわね。おほほほ」
一人が言い出した途端、辺りに居た令嬢たちは扇を口元で隠しながら待ってましたと言わんばかりにミルフィの陰口を囁き始める。
そんなお嬢様方を目にしても、ミルフィの表情は動かない。
この程度はいつものことだ。それに一度”悪女”というレッテルを貼られてしまった以上、ここで食って掛かってしまえば、状況は更に悪くなる。
……そう。そう思っているから、自分の陰口を言う令嬢達には食って掛かることはしない。
ただ、すぐ近くにいる婚約者であるルイムには物申したい。
だってこの男、悲劇のヒーローのような顔をして自分に酔っていらっしゃるから。そして、隠そうとしているが、同情の眼差しを受け、めっちゃ嬉しそうにしているから。
しかもルイムは陰口を言う令嬢たちに背中を押されたのか、それともただ単に無神経の塊なのかわからないが、こんなことまで言ってくれた。
「あーあ、俺の婚約者が君なんかじゃなくって、アリア嬢だったら良かったのに」
アリア嬢とは、シヴァン家の子爵令嬢のこと。
見た目は天使のように愛らしく、爵位の低さなんてものともせず社交界では華のような存在。悪女と呼ばれているミルフィとは真逆の位置にいる。
(ねえ、それはちょっと無いんじゃない!?)
ミルフィはドレスの裾をぎゅっと握りしめて怒鳴りつけたい衝動をぐっとこらえる。
愛らしいアリアと張り合おうなんて、これっぽっちも思っていない。
でもこんな大勢の人たちがいる場で、他人と比べる発言をするのは非常識極まりない。
そんな気持ちでミルフィは、ルイムをキッと睨み付ける。そうすれば彼は、大仰に肩をすくめてみせた。
「まったく反省の色が無いね。なぁ頼むからさぁ……君は僕の人生を滅茶苦茶にしていることを、少しは気付いてくれよ」
……その発言を聞いた後、ミルフィはどうやって夜会を過ごしたか記憶が定かではない。
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