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閑話① 確かな温もりと雨の音
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「飲みなさい」
グリジットから押し付けられたカップを、ファルナは黙って受け取った。
中身はお茶だった。おそらく中途半端になっていたキッチンのポットから注いでくれたのだろう。
「お手数をおかけして」
「良いから、早く飲みなさい」
「......はい。いただきます」
カップを両手で包んで一口飲めば、優しく甘い味が口の中に広がる。
どうやらグリジットが一手間加えてくれたようだ。
「美味しいです」
「それは良かった。火傷しないように気を付けて飲むんだぞ」
「......はい。あ、」
美味しいお茶に顔を綻ばせたファルナであったが、グリジットの手に残っているのが、お酒の入ったグラスだというのに気付いて小さく声をあげた。
(自分はお酒を飲むんだ)
ここはグリジットの病院であり、彼のお屋敷でもあり、ここにあるものは全部グリジットの所有物。だから、ファルナにどうこう言う権利は無い。
そんなのは言われなくても、わかっている。
ただ、酒瓶を取り上げられて間もないせいで、なんていうかちょっとズルいなと思ってしまっただけ。
そんな物言いたげなファルナの視線に気付いたのだろう。グリジットは器用に片方の眉をくいっと上げて口を開く。
「コレにも入っているぞ」
コレと言いながらグリジットが指差したのはファルナが手に持っているカップ。つまりお茶の中にもお酒が入っていたらしい。まったくもって気付かなかった。
「あんまり強いお酒じゃないんですね」
つい思ったままを口にすれば、グリジットは渋面になる。
「馬鹿を言うな。かなり強い酒だ。飲み慣れていない君なら一口飲んだだけで泥酔だ」
「......まさか」
「なら、試してみるか?」
ぐいっとグラスを差し出されて、ファルナは首を振る。
近付いたグラスからきついアルコール臭がしたのもあるけれど、すんなり進められると飲む気にはなれない。なんていうか、駄目だと言われたから余計に飲んでみたかっただけのこと。
そんな子供じみた感情はお医者様であるグリジットには手に取るようにわかるのだろう。彼はくすりと笑って、グラスを己の口元に運ぶ。そしてコクリと喉を鳴らしてそれを飲んだ。
「……本当に強いお酒だったんですか?」
水のように飲みほしたグリジットに疑いの目を向ければ、空になったグラスを執務机に置きながらグリジットは苦笑する。
「飲みなれているからな」
「なるほど……です」
実際は納得していないが、グリジットがそう言うならそんなもんなのだろう。
深く追求したとてそこに得るものはないのことに気付いたファルナは、冷めないうちに美味しいお茶を飲むことを選んだ。
グリジットから押し付けられたカップを、ファルナは黙って受け取った。
中身はお茶だった。おそらく中途半端になっていたキッチンのポットから注いでくれたのだろう。
「お手数をおかけして」
「良いから、早く飲みなさい」
「......はい。いただきます」
カップを両手で包んで一口飲めば、優しく甘い味が口の中に広がる。
どうやらグリジットが一手間加えてくれたようだ。
「美味しいです」
「それは良かった。火傷しないように気を付けて飲むんだぞ」
「......はい。あ、」
美味しいお茶に顔を綻ばせたファルナであったが、グリジットの手に残っているのが、お酒の入ったグラスだというのに気付いて小さく声をあげた。
(自分はお酒を飲むんだ)
ここはグリジットの病院であり、彼のお屋敷でもあり、ここにあるものは全部グリジットの所有物。だから、ファルナにどうこう言う権利は無い。
そんなのは言われなくても、わかっている。
ただ、酒瓶を取り上げられて間もないせいで、なんていうかちょっとズルいなと思ってしまっただけ。
そんな物言いたげなファルナの視線に気付いたのだろう。グリジットは器用に片方の眉をくいっと上げて口を開く。
「コレにも入っているぞ」
コレと言いながらグリジットが指差したのはファルナが手に持っているカップ。つまりお茶の中にもお酒が入っていたらしい。まったくもって気付かなかった。
「あんまり強いお酒じゃないんですね」
つい思ったままを口にすれば、グリジットは渋面になる。
「馬鹿を言うな。かなり強い酒だ。飲み慣れていない君なら一口飲んだだけで泥酔だ」
「......まさか」
「なら、試してみるか?」
ぐいっとグラスを差し出されて、ファルナは首を振る。
近付いたグラスからきついアルコール臭がしたのもあるけれど、すんなり進められると飲む気にはなれない。なんていうか、駄目だと言われたから余計に飲んでみたかっただけのこと。
そんな子供じみた感情はお医者様であるグリジットには手に取るようにわかるのだろう。彼はくすりと笑って、グラスを己の口元に運ぶ。そしてコクリと喉を鳴らしてそれを飲んだ。
「……本当に強いお酒だったんですか?」
水のように飲みほしたグリジットに疑いの目を向ければ、空になったグラスを執務机に置きながらグリジットは苦笑する。
「飲みなれているからな」
「なるほど……です」
実際は納得していないが、グリジットがそう言うならそんなもんなのだろう。
深く追求したとてそこに得るものはないのことに気付いたファルナは、冷めないうちに美味しいお茶を飲むことを選んだ。
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