孤独なメイドは、夜ごと元国王陛下に愛される 〜治験と言う名の淫らなヒメゴト〜

当麻月菜

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閑話② 医者と患者。または兄と弟

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「ご不満か?」
「……そう言ったら、兄上は他にも何か僕に与えてくれますか?」

 甘え半分、不貞腐れ半分。弟にしかできない顔を間近で見せられ、グリジットは苦笑した。

「ルブラン、たかがお茶だと侮るなよ。それに不満は使ってみてから言え」
「??……では兄上は、これを飲まれたご経験が?」
「いや……ないな」

(飲ませた経験はあるけれど、飲んだことはない)

 小さな嘘を付いたグリジットは、ルブランに気取られぬようさりげなくお茶を飲みはじめた。

 ちなみにルブランは、この病院に住み込みで働くファルナというメイドがいることを知らない。まして、そのメイドが薬を開発するお手伝いをしているなんてことも当然知らない。

「まぁ……お前の不安はわからんでもないが、とにかくお茶を飲ませて、楽しい話でもして……そうだな、ダメもとで添い寝でも提案してみろ。受け入れてもらえたら、存外やり直しができる日は近いぞ」
「お茶一つでそこまで修復できるもんですかねぇ。それにそんな簡単にそこまで触れ合えるなら、僕の今日までの努力は一体なんだったんだろう……」
「努力を積み重ねてきた結果、このお茶にたどり着いたんだ。お前の努力は無駄にはならん」
「兄上、それ……慰めですか?」
「いや、医者としての見解だ」
「……さようですか」

 半信半疑というより、疑い10割の目を向けるルブランに、グリジットは思わず「このお茶は、実証済みだ」と言いかけて慌ててそれを喉の奥に押し込んだ。

「ルブラン、そんな目で見るな。ああ、一つ約束できる。これを飲んだら、多少は良い方向に進むだろう」
「……そうですか。そうですよね……兄上は私に嘘を付いたことなんかありませんし」
「……」

 今しがた嘘を吐いた自覚があるグリジットは賢くも無言を付き通した。

 だが、何かの気配を察して慌てて立ち上がった。

「え?……兄上、どうされました?」
「いや、政務の合間に抜け出してきたんだろう? あまり長居はできぬだろうと思ってさ」
「で、ここから帰れと?」

 ルブランが胡乱気な表情を見せるのは仕方がない。

 なぜならグリジットは診察室の窓を開け、ここから出て行けと遠回しに訴えているのだから。

 余談であるが、患者一人しかいない病院とて、その作りはちゃんとしている。急患を庭から直接受け入れられるよう診察室の窓は大きく、扉と言っても過言ではない。成人男性だって、無理なく外に出ることができる。

「ああ、時間短縮になるだろ?」

 さすがに苦しい言い訳ではあるが、兄の言うことをファルナ並みに忠実に守る弟ルブランは、腑に落ちない顔をしつつ、お茶を大切に上着の内ポケットに仕舞うとフードを被り直た。

「では兄上、また」
「ああ」

 短く別れの挨拶を交わしたルブランは、小走りに森の奥へと消えて行った。

 と、同時に診察室の扉からノックの音が聞こえる。

「先生、お忙しいですか?お茶を淹れたんですが、あの……良かったら飲んでいただけますか?」

 扉の向こうから聞こえてきた声に、グリジットは顔をほころばせた。

「ああ、いただこう」

 そう言いながら、扉を開ければお茶と菓子が載ったトレーを持ったファルナがいた。
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