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閑話② 医者と患者。または兄と弟
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扉を開けた状態のまま、グリジットはファルナが手にしているトレーを覗き込んだ。
「ん?ファルナ、この菓子は?」
「あっ、良かったら食べてください。レモンピールを練り込んだクッキーです。といっても私の手作りなんで、お口に合うかどうかわかりませんが」
「いや、美味しい」
「……先生、まだ召し上がってないですよ」
お疲れなんですね、とファルナは心配そうに眉を下げながら、グリジットの執務机にティーカップと菓子を置く。
しかし、ここでふと手を止めグリジットの方に視線を向けた。
「どなたか……患者さまがお見えになられましたか?」
「いや、来てないよ」
「でもここにカップが二つありますが」
「ああ、それは私が使ったやつだ。ちょっと飲み比べをしたくてね」
「……そうですか」
不思議そうに首を捻るファルナに、グリジットは淡く微笑むだけ。
今日ファルナがクッキー作りをすることは知っていた。というか、今朝、一緒に朝食を食べながら手作りのお茶請け用の菓子を食べたいとグリジットは遠回しにファルナに伝えていた。きっと彼女なら、即実行してくれると思って。
案の定、優秀なメイドはすぐに菓子作りを始めてくれた。
あとルブランがいる間、この部屋には呪いをかけて、部屋の声が漏れないようにしたことなんて、ファルナは知らなくて良いこと。
それに何より、弟にだって可愛い専属メイドを見せたくなんかない。
まして初夜のやり直しをするための薬を完成させるための治験者などとは気付かれたくない。だって、気付かれたら弟に”もの忘れの呪い”をかけないといけないから。
だからグリジットは何食わぬ顔で、執務机に着席するとファルナの手作りクッキーを有難く頂戴する。
そしてゆっくり咀嚼して、意地悪く微笑んだ。
「ほら、やっぱり美味しいじゃないか」
「はぁ……そう言ってもらえるのは嬉しいですが、なんかちょっと……あ、いえ。お褒めにあずかり光栄です」
ペコっと頭を下げたファルナは、空になっている二つのカップを手にすると照れた笑みを浮かべてパタパタとキッチンへと消えて行った。
「ま、このクッキーも美味しいけれど、一番おいしいのは君自身なんだけどね」
まだ呪いが残っていることを知っているグリジットは、一人残された部屋で己の気持ちを素直に言葉にした。
「ん?ファルナ、この菓子は?」
「あっ、良かったら食べてください。レモンピールを練り込んだクッキーです。といっても私の手作りなんで、お口に合うかどうかわかりませんが」
「いや、美味しい」
「……先生、まだ召し上がってないですよ」
お疲れなんですね、とファルナは心配そうに眉を下げながら、グリジットの執務机にティーカップと菓子を置く。
しかし、ここでふと手を止めグリジットの方に視線を向けた。
「どなたか……患者さまがお見えになられましたか?」
「いや、来てないよ」
「でもここにカップが二つありますが」
「ああ、それは私が使ったやつだ。ちょっと飲み比べをしたくてね」
「……そうですか」
不思議そうに首を捻るファルナに、グリジットは淡く微笑むだけ。
今日ファルナがクッキー作りをすることは知っていた。というか、今朝、一緒に朝食を食べながら手作りのお茶請け用の菓子を食べたいとグリジットは遠回しにファルナに伝えていた。きっと彼女なら、即実行してくれると思って。
案の定、優秀なメイドはすぐに菓子作りを始めてくれた。
あとルブランがいる間、この部屋には呪いをかけて、部屋の声が漏れないようにしたことなんて、ファルナは知らなくて良いこと。
それに何より、弟にだって可愛い専属メイドを見せたくなんかない。
まして初夜のやり直しをするための薬を完成させるための治験者などとは気付かれたくない。だって、気付かれたら弟に”もの忘れの呪い”をかけないといけないから。
だからグリジットは何食わぬ顔で、執務机に着席するとファルナの手作りクッキーを有難く頂戴する。
そしてゆっくり咀嚼して、意地悪く微笑んだ。
「ほら、やっぱり美味しいじゃないか」
「はぁ……そう言ってもらえるのは嬉しいですが、なんかちょっと……あ、いえ。お褒めにあずかり光栄です」
ペコっと頭を下げたファルナは、空になっている二つのカップを手にすると照れた笑みを浮かべてパタパタとキッチンへと消えて行った。
「ま、このクッキーも美味しいけれど、一番おいしいのは君自身なんだけどね」
まだ呪いが残っていることを知っているグリジットは、一人残された部屋で己の気持ちを素直に言葉にした。
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