孤独なメイドは、夜ごと元国王陛下に愛される 〜治験と言う名の淫らなヒメゴト〜

当麻月菜

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【夜の治験 中級編】 メイドは見た。ご主人様のアレを

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(どうしよう……先生を怒らせちゃった……ああ、どうしよう)

 グリジットに手を引かれながら、ファルナは泣きたい気持ちなった。

 自分の窮地を救ってくれたことにお礼を言いたい。でも、これ以上にないほど不機嫌なグリジットの横顔が、何も話しかけてくれるなと強く訴えてくる。

 しかしファルナは、実のところグリジットがなぜそこまで怒っているのかわからなかった。

 思い当たるのは、森の中に入ったこと。ただそこまで奥には入ってはいけない。だからこそグリジットが助けに来てくれた。

(なら、なぜ……) 

 思考を巡らせてみた結果、思い当たるのは、あと一つだけしかない。

「あの……先生」
「なんだ」
「お仕事を放り出して、森の中に入って申し訳ありません」

 ファルナが歩きながらぺこっと頭を下げた途端、グリジットが足を止めた。

「そんなことは別段怒ってはいない。まぁ、心配は……したが」

 歯切れの悪いグリジットの言葉に、ファルナはじっと彼を見上げる。

「……では、先生はなぜ怒っているのでしょうか?……ごめんなさい。本当は自分で気付かないといけないんですが、全然わからなくて……」
「わからない、か」

 ため息と共に落とされた言葉に、ファルナはびくっと身を竦ませる。

 呆れられてしまったようだ。その事実が、とても辛かった。職を失う云々ではなく、グリジット自身に嫌われるのが、無性に悲しくなる。

「……先生、ごめんなさい」

 気付けばファルナは、ぎゅっとグリジットの白衣の袖を握りしめていた。

「ごめんなさい、先生。……嫌わないでくださ……っ!!」

 泣きそうな声でつい思ったままを口にしてしまったけれど、それがあまりに恥ずかしいものだったので、ファルナは慌てて空いている方の手で己の口を覆った。

(馬鹿、私!!何を言ってるの!?)

 嫌わないで───そんなの雇用主に向かって言う台詞じゃない。そして、そんなことを言われた側は、絶対に困ってしまうだろう。

 現在進行形でグリジットに呆れられているというのに、それに別の負の要素が更に加わってしまったら、もう生きていけない。

 大袈裟ではなく本気でそんなことを思ってしまった瞬間、ふっと小さな笑い声が降ってきた。

「何を言い出すかと思えば……まったく、そんなくだらないことを」

 言葉だけを受け取れば冷たいものなのに、柔らかい声音で紡がれてしまうとそれは別の意味を持つ。

「私が、君のことを嫌うわけがないだろう」
  
 大きな手で頭を撫でながら、グリジットはきっぱりと断言した。

「……本当ですか?」
「ああ」

 即座に肯定してくれたグリジットに、ファルナは花が咲いたような笑みを浮かべる。

「……へへっ、嬉しい。嬉しいです、先生」
「そうか」

 嬉しさのあまり白衣の袖を揺さぶっても、その持ち主は柔らかく笑うだけ。

 ただ、止まっていた足は再び動き出す。

「───……ところでファルナ、君はなんで森の中に入ったんだ?籠まで持っているが、この雪の中、何か欲しいモノでもあったのか?」
「あ……実は、もう体調っていうか、その……身体の方はいつも通りになりましたって先生に伝えたくて……そのきっかけを探しに入ったんですが……」
「そうか。それにしても随分と遠回しなやり方だな」
「はい……実は私もそう思ってました」

 しゅんと肩を下げたファルナに、グリジットは気にするなと言いたげに繋いでいる手に力を込めた。

 その手はとても大きくて、温かかった。
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