孤独なメイドは、夜ごと元国王陛下に愛される 〜治験と言う名の淫らなヒメゴト〜

当麻月菜

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閑話③ 突然の来訪者

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 久しぶりにグリジットの夜のお薬を研究する手伝いをした数日後───その人は突然、この病院にやって来た。

 眩しいほどに輝く金色の髪。憂いを帯びた深いブルーの瞳。自分より少し年上の女性は、とても整った顔立ちをしていて、一目で高貴な人間なのだとファルナは気付いた。

『グリジット様、貴方にお会いしたくて……ごめんなさい。こんな、急に』

 慌てて診察室から飛び出してきたグリジットを見た途端、その美しい女性はその場で泣き崩れた。

『良いんですよ、お気になさらず。さぁ、中にお入りください』

 自分に向ける声音よりもっと優しい口調で、グリジットはその女性を抱きかかえるようにして立ち上がらせると、そのまま診察室に消えて行った。

 一人残されたファルナは、呆然と立ち尽くすことしかできなかった。




***




 サクサクと雪を踏んで、ファルナは森の中を歩く。

 もちろん、そんなに奥には入らない。グリジットと約束したから。

 でも、このままもっともっと森の奥に入り込んでしまいたい衝動に駆られてしまう。

(……奇麗な人だったな)

 小枝に積もった雪を指で突きながら、ファルナはついさっき突然現れた来訪者の姿を思い出してみる。波打つ金色の髪が鮮明に脳裏によぎった途端、ズクンと胸が痛んだ。

「……別に……良いんだもん」

 痛む胸を押さえながら、ファルナは強がりを言う。

 例え、抱きかかえるグリジットの手が、あの女性の背に添えられた時、深い信頼関係があることに気付いて嫉妬を覚えてしまっていても、口に出さず、そして認めなければ誰にも気づかれない。 
 
 ─── ずっと、グリジットに一番近いのは自分だと思っていた。

 二人っきりの時間はとても穏やかで、優しくて、温かくて、彼に触れられる権利があるのは自分だけなのだと、間抜けな勘違いをしてしまっていた。

 でも、違った。そうじゃなかった。

 自分の知らないグリジットは確かに存在していたのだ。

 そして改めてファルナは、グリジットのことをそんなに知らないのだと実感させられてしまう。

「仕方がないよね、だって私……ただのメイドだもん」

 言った傍から泣きたくなった。でも、口に出した言葉は紛れもない事実だ。

 ファルナがグリジットの元に訪れたのは、生きて冬を超えたい一心から。対してグリジットは、身の回りの世話をしてくれる人間と、夜のお薬を開発する手伝いをしてくれる人材を探していたから。 

 そうして双方の願いが叶って、この生活が始まった。そこには雇用関係以外何もない。

(つまり、こんなことをうじうじ考える自分は間違っているってことか)

 ファルナは地面に積もった雪を蹴って、ため息を吐いた。

 吐いた息は真っ白で、冬が終わるのはまだまだ先であることを実感した。
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