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【夜の治験 中級編】 メイドは見た。ご主人様のアレを
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(……やってしまった)
グリジットはくたりと意識を手放したファルナのすぐそばで、がっくりと肩を落とした。
ついさっき散々ファルナを苛め抜いたその手は、情けない男の顔を隠すために使われている。
「……きつかっただろうな」
顔を覆っていた手を離してグリジットはファルナの頬を撫でる。
もっと優しく扱うつもりだった。
今日は久しぶりに彼女に触れられる日だったから、いつも以上に大切に触れようと決めていた。たくさん悦びを与えて、そのまま優しく抱きしめて共に眠りに落ちることを望んでいた。
それなのに、ふと思い出してしまったのだ。
今日、ファルナが知らない男と話しているところを。
実際には、ファルナは一方的に責められていただけだし、あの時間を楽しんでいる様子は皆無だった。助けに入った自分に向けて、ほっとした顔も見せてくれた。
けれどもグリジットは、すっかり忘れていた事実を目の当たりにして狼狽えた。
ファルナは、自分の知らない世界を持っているということを。もしかしたら心を寄せる誰かが居るのかもしれないということを。
彼女は寄る辺の無い身の上だということは面接の際に聞いている。疑うつもりはなかったが念のために、グリジットは伝手を使って裏を取った。
受け取った報告書には、両親と死別した後、親戚と名乗る者たちに財産を奪われ身一つで屋敷を追い出されたことが記されていた。
無論、ファルナの身に起こったことは犯罪行為なので、適切に処理をした。だから彼女が望むなら、失った財産も屋敷もすぐに渡すことができる。
……ただ、グリジットはそれを口にすることができなかった。
ファルナが自分の元から去っていくのが怖かった。
いつか自分のことなど奇麗さっぱり忘れ、知らない男と恋に落ちて家庭を持つことを想像したら、自分でも耐えられないほどの仄暗い欲求に支配されてしまった。
彼女が鼻にかかった可愛らしい声で「欲しい」と言われ、でも、何とか一線を越えなかったのは奇跡としか言いようがなかった。
けれど結局、過ちは犯さなかったとはいえ、この様だ。
グリジットは己の欲望で汚してしまったファルナの身体を一瞥すると、バスルームに移動した。そして湯を張ったタライとタオルを手にして再び自室のベッドに戻る。
(……ファルナは明日、私を見てどんな顔をするだろうか)
良くてケダモノ。最悪、暇を告げるだろう。
そうなってしまった時、自分は引き留める権利はない。みっともなく縋りつきたいけれど。
「……本当に、すまなかった」
愛しい彼女の眠りを妨げないようにグリジットは小声で謝罪すると、いつも以上に丁寧にファルナの身体を拭く。
床に落ちていた寝間着を拾い、慎重な手つきで着せると、そっと毛布を掛けた。
それからタライやタオルを片付けると、少し悩んでファルナの隣に横たわる。
(夜明けまでは、彼女は私のものだ)
己の胸に彼女を抱えて込んで、グリジットは目を閉じた。
グリジットはくたりと意識を手放したファルナのすぐそばで、がっくりと肩を落とした。
ついさっき散々ファルナを苛め抜いたその手は、情けない男の顔を隠すために使われている。
「……きつかっただろうな」
顔を覆っていた手を離してグリジットはファルナの頬を撫でる。
もっと優しく扱うつもりだった。
今日は久しぶりに彼女に触れられる日だったから、いつも以上に大切に触れようと決めていた。たくさん悦びを与えて、そのまま優しく抱きしめて共に眠りに落ちることを望んでいた。
それなのに、ふと思い出してしまったのだ。
今日、ファルナが知らない男と話しているところを。
実際には、ファルナは一方的に責められていただけだし、あの時間を楽しんでいる様子は皆無だった。助けに入った自分に向けて、ほっとした顔も見せてくれた。
けれどもグリジットは、すっかり忘れていた事実を目の当たりにして狼狽えた。
ファルナは、自分の知らない世界を持っているということを。もしかしたら心を寄せる誰かが居るのかもしれないということを。
彼女は寄る辺の無い身の上だということは面接の際に聞いている。疑うつもりはなかったが念のために、グリジットは伝手を使って裏を取った。
受け取った報告書には、両親と死別した後、親戚と名乗る者たちに財産を奪われ身一つで屋敷を追い出されたことが記されていた。
無論、ファルナの身に起こったことは犯罪行為なので、適切に処理をした。だから彼女が望むなら、失った財産も屋敷もすぐに渡すことができる。
……ただ、グリジットはそれを口にすることができなかった。
ファルナが自分の元から去っていくのが怖かった。
いつか自分のことなど奇麗さっぱり忘れ、知らない男と恋に落ちて家庭を持つことを想像したら、自分でも耐えられないほどの仄暗い欲求に支配されてしまった。
彼女が鼻にかかった可愛らしい声で「欲しい」と言われ、でも、何とか一線を越えなかったのは奇跡としか言いようがなかった。
けれど結局、過ちは犯さなかったとはいえ、この様だ。
グリジットは己の欲望で汚してしまったファルナの身体を一瞥すると、バスルームに移動した。そして湯を張ったタライとタオルを手にして再び自室のベッドに戻る。
(……ファルナは明日、私を見てどんな顔をするだろうか)
良くてケダモノ。最悪、暇を告げるだろう。
そうなってしまった時、自分は引き留める権利はない。みっともなく縋りつきたいけれど。
「……本当に、すまなかった」
愛しい彼女の眠りを妨げないようにグリジットは小声で謝罪すると、いつも以上に丁寧にファルナの身体を拭く。
床に落ちていた寝間着を拾い、慎重な手つきで着せると、そっと毛布を掛けた。
それからタライやタオルを片付けると、少し悩んでファルナの隣に横たわる。
(夜明けまでは、彼女は私のものだ)
己の胸に彼女を抱えて込んで、グリジットは目を閉じた。
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