孤独なメイドは、夜ごと元国王陛下に愛される 〜治験と言う名の淫らなヒメゴト〜

当麻月菜

文字の大きさ
54 / 86
閑話③ 突然の来訪者

3

しおりを挟む
 自室に飛び込んだファルナだったけれど、なんとか気持ちを切り替えて、お茶を淹れるためにキッチンに向かった。

 けれど間の悪いことに、ちょうどグリジットと推定奥様は診察室から玄関ホールに向かう途中だった。

「─── ファルナ、どうしたんだい?」

 不思議そうに目を丸くするグリジットは、いつまで経ってもお茶を出さなかったことに対して怒りの感情は無かった。

 それどころか、キッチンに向かおうとするファルナに驚いてさえいた。

(先生は奥様との時間を邪魔されなくて良かった……なんて、思っていたり……うん、私がどうこう思っちゃダメだよね)

 自分の立場をはっきり理解した今、ファルナは取る行動は一つしか無い。

「お客様にお茶を出さず申し訳ございませんでした」

 お腹できちんと手を揃えて、ファルナは二人に向け深く腰を折った。

 すぐに小さく笑う声が聞こえてきた。出来損ないの自分を笑っているのだろうか。ファルナは怖くて顔を上げることができない。

 けれど無情にもご主人様であるグリジットは、ファルナに顔を上げるよう命ずる。

「ファルナ、ちょっと私はこのお方を送っていくから。すぐに戻る」
「……かしこまりました。どうぞお気をつけて」

 ぎこちない笑みを浮かべてファルナが玄関ホールの扉を開ければ、グリジットは何か言いたげな顔をする。しかしその形の良い唇からは何も語られることはなかった。

 けれどグリジットの奥様であろう女性は、ファルナに向け微笑みながら口を開いた。

「さっきは、驚かせてしまってごめんなさいね。でもわたくし貴方に会えて良かったわ」

 艶のある唇が最後に意味深な笑みに変わって、それが何だか「二人の初夜のやり直しの実験台になってくれて、どうも」なんていう風に取れてしまったファルナは強く唇を噛む。

 そして醜い自分の顔を見られたくなくて、ファルナはさっきよりも深く腰を折った。





***




 奥様をどこかに送り届けたグリジットは自宅に戻ってきてから、すぐにファルナを自室に呼びつけた。

「─── 最近はちゃんと眠れているのかい?」

 先ほどの失態を咎められるだろうと思っていたファルナは、執務机に着席しているグリジットからの斜め上の質問に、起立した姿勢のまま目を丸くした。

「は?……あ、はい。大丈夫です」

 混乱する気持ちを抱えたまま、ファルナがこくこくと頷けば、グリジットは「……そうか」と呟く。

 その表情が寂しそうに見えるのは、多分、自分の願望が見せているだけなのだろう。

「……先生、私……もう、大丈夫です」
「そうなのか?無理は」
「無理なんかしていません。それに……」

 グリジットの言葉を遮ったくせに、急に語尾を濁したファルナにグリジットは訝しそうな顔をする。

「それに、なんだい?」
「いえ……なんでも……」
「そういうふうには見えない。答えなさい、ファルナ」
「……」

 グリジットから厳しい口調で促されても、ファルナは頑として答えることはしなかった。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

黒の神官と夜のお世話役

苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました

巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた

狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた 当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。

抱かれたい騎士No.1と抱かれたく無い騎士No.1に溺愛されてます。どうすればいいでしょうか!?

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
ヴァンクリーフ騎士団には見目麗しい抱かれたい男No.1と、絶対零度の鋭い視線を持つ抱かれたく無い男No.1いる。 そんな騎士団の寮の厨房で働くジュリアは何故かその2人のお世話係に任命されてしまう。どうして!? 貧乏男爵令嬢ですが、家の借金返済の為に、頑張って働きますっ!

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

処理中です...