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閑話④ 終わりを告げる来訪者
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自己嫌悪で項垂れるルブランを見つめながら、グリジットは肩を竦める。兄弟揃って、何をやっているんだと。
あの日─── ルブランの妻であり、妃殿下であるミザベラがここを訪れた時、グリジットは舌打ちしたい気分だった。
弟にすらひた隠しにしていたファルナを見られてしまったから。しかも診察室にある特別な───過去、ファルナに触れた椅子に何の断りもなく座られたから。
無論、相手は蝶よ花よと育てられた妃殿下だ。粗末な椅子など視界にも入らなかっただろう。だから仕方がない。
それにミザベラにはルブランがこっそり初夜をやり直すために媚薬を依頼していることは話してはいないし、ましてファルナが治験者であることは伝えてない。身の回りの世話をしてくれるメイドだという体を貫いた。
ただ、ミザベラは夫との関係に悩む人妻だ。妙に勘が鋭く、自分のさりげない仕草でファルナが特別な存在だと読み取った。
そのことを診察室で指摘され、自分は誤魔化しきることができなかった。媚薬の件を隠しつつ慰めることに気をとられ赤面してしまった。そんな顔を見られなくて慌てて手の甲で隠したのは、今でもはっきり覚えている。
(......妃殿下は、弟にどこまで語ったのだろうか)
自分宛に「ありがとう」という伝言をルブランに託したということは、多少は診療所での会話を伝えたはずだ。その中にファルナの存在が含まれてなければ良いのだが。
いっそのことを聞いてしまおうかとグリジットは真剣に悩む。
ファルナの存在を隠しておきたいのは、彼女の身に危険が及ぶことを懸念しているから。
元国王である自分の存在は、弟が王位を継いでも邪魔だと思っている者が多くいる。グリジットにとって刺客に狙われる日々はもう当たり前のことで、それに対する処置は慣れているから別段構わない。
けれども何の関係も無いファルナが標的にされるとなると話は別だ。
だからファルナとの関係は誰にも知られたくなかった。知られないまま、ひっそりとこの森を出たかった。
「─── ルブラン、一つ良いか?」
「なんでしょう兄上」
おずおずと顔をあげるルブランは、心から慕う兄から叱られることを恐れている。
そんな弟に向けグリジットは聞きたいことだけを訪ねた。
「妃殿下は口が軽い女なのか?」
「いえ。彼女は聡い女性です。己の立場も理解しておりますし、たぶん、城で一番口が硬いと断言できます。そうじゃなかったら、一人で兄上の元になんてこないでしょう。......こんな......こんな危険な薬を使おうだなんて......まったく......いや、そもそも僕が不甲斐ないから、彼女を追い詰めてしまったんだ。くそっ、本当に僕は」
「そう自分を責めるな」
このまま夜が更けてもグチグチと続きそうな予感がして、グリジットは慰めるようにルブランの肩を軽く叩いた。
そして机の上に置いてあるもう一つの小瓶を手に取った。
あの日─── ルブランの妻であり、妃殿下であるミザベラがここを訪れた時、グリジットは舌打ちしたい気分だった。
弟にすらひた隠しにしていたファルナを見られてしまったから。しかも診察室にある特別な───過去、ファルナに触れた椅子に何の断りもなく座られたから。
無論、相手は蝶よ花よと育てられた妃殿下だ。粗末な椅子など視界にも入らなかっただろう。だから仕方がない。
それにミザベラにはルブランがこっそり初夜をやり直すために媚薬を依頼していることは話してはいないし、ましてファルナが治験者であることは伝えてない。身の回りの世話をしてくれるメイドだという体を貫いた。
ただ、ミザベラは夫との関係に悩む人妻だ。妙に勘が鋭く、自分のさりげない仕草でファルナが特別な存在だと読み取った。
そのことを診察室で指摘され、自分は誤魔化しきることができなかった。媚薬の件を隠しつつ慰めることに気をとられ赤面してしまった。そんな顔を見られなくて慌てて手の甲で隠したのは、今でもはっきり覚えている。
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自分宛に「ありがとう」という伝言をルブランに託したということは、多少は診療所での会話を伝えたはずだ。その中にファルナの存在が含まれてなければ良いのだが。
いっそのことを聞いてしまおうかとグリジットは真剣に悩む。
ファルナの存在を隠しておきたいのは、彼女の身に危険が及ぶことを懸念しているから。
元国王である自分の存在は、弟が王位を継いでも邪魔だと思っている者が多くいる。グリジットにとって刺客に狙われる日々はもう当たり前のことで、それに対する処置は慣れているから別段構わない。
けれども何の関係も無いファルナが標的にされるとなると話は別だ。
だからファルナとの関係は誰にも知られたくなかった。知られないまま、ひっそりとこの森を出たかった。
「─── ルブラン、一つ良いか?」
「なんでしょう兄上」
おずおずと顔をあげるルブランは、心から慕う兄から叱られることを恐れている。
そんな弟に向けグリジットは聞きたいことだけを訪ねた。
「妃殿下は口が軽い女なのか?」
「いえ。彼女は聡い女性です。己の立場も理解しておりますし、たぶん、城で一番口が硬いと断言できます。そうじゃなかったら、一人で兄上の元になんてこないでしょう。......こんな......こんな危険な薬を使おうだなんて......まったく......いや、そもそも僕が不甲斐ないから、彼女を追い詰めてしまったんだ。くそっ、本当に僕は」
「そう自分を責めるな」
このまま夜が更けてもグチグチと続きそうな予感がして、グリジットは慰めるようにルブランの肩を軽く叩いた。
そして机の上に置いてあるもう一つの小瓶を手に取った。
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