孤独なメイドは、夜ごと元国王陛下に愛される 〜治験と言う名の淫らなヒメゴト〜

当麻月菜

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【夜の治験 卒業編】 メイドは一晩限りの過ちを望む

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 グリジットが己の身体の異変に気付いたのは、それからすぐだった。

(……媚薬の効果が消えた?)

 あれほど荒れ狂っていた欲望が、嘘のように凪いでいる。

 つまりまじないの代価で毒の耐性を奪われてしまったが、それは全部では無かったということで。

(助かった)

 グリジットは額に浮いた玉のような汗を乱暴に拭った。安堵から、ふぅっと息を吐く。

 そうすれば、びくりとファルナの身体が震えた。叱られる子供のように怯えた顔をして自分を見つめている。

「ファルナ」

 つとめて優しく名を呼ぶ。でも、返事は無い。

 恥ずかしいのか、自分が取ってしまった行動を後悔しているのか、それとも自分と同じように薬のせいで言葉を発することができないだけなのか。

 様々な憶測が頭に浮かぶが、その全部がどうでも良いことだと割り切って、グリジットは足を動かす。再びファルナがビクッと身体を震わせたが知ったことでは無い。

 だって自分は医者だ。診察に怯える人間に躊躇などしなくて良いのだ。

 グリジットの足取りに迷いが無かった。対してファルナはなぜかここで逃げようとする。 

「ファルナ、どこに行こうとしてるんだい?」

 患者をグリジットは優しく抱き寄せた。

 そして頬に流れた彼女の横髪を小さな耳にかけ、そっと唇を寄せる。

「私から逃げようとするなんて、悪い子だね。……それともあっちが良かったのかい?」

 診察室につながる扉を指差しながらグリジットが囁けば、ファルナはフルフルと首を横に振る。

「……せんせ、ごめんなさい」
「駄目だ、許さない」

 わざと言ってやった。

 これだけ困らせたのだから、少しくらいの意地悪は許されるだろう。

 そう思ったけれど、ここでファルナに泣かれグリジットは激しく後悔する。

「じょ、冗談だ。全然怒ってない。……少し、驚いたが」
「ほんと?せんせ、本当に怒ってない?私のこと嫌いに」
「怒ってないし、嫌いになんかならない」

 自分でも笑ってしまうほど余裕なく言葉を紡げば、ファルナはへにゃっと笑った。

 まるで何をしても許されそうな無防備な笑みを向けられ、凪いでいた欲望が再び暴れ出す。

「なあ、ファルナ」
「……はい、なんでしょう」
「ちゃんと考えて、そして答えて欲しい」

 グリジットはファルナを強く抱きしめて、続きを言う。

「君は医者と患者として、この続きをしたいか?それとも男と女として……やりたいのか?」
「……っ」

 熱を帯びた瞳と、物欲しげに震える唇が紡ごうとしている言葉がなんなのか、グリジットは手に取るようにわかった。

 でも、先回りなどする気は無い。どうしてもファルナの口から言わせたかった。狡いとは思うけれど。
 
「せ、せんせ……私――」
「ああ」

 優しく頷けば、また沈黙が落ちる。

 でもグリジットが辛抱強く待っていれば、ファルナは覚悟を決めたように顔を上げ小さな声で言った。

「男と女として、お願いします」

 理性は完全に吹き飛んだ。

 これまで感じたことが無いような欲望に突き動かされるがまま、グリジットはファルナを抱きしめた。軋むほど、強く。
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