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【番外編】二人の日常

ソレは時には媚薬になる……らしい③

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 グリジットの首に腕を絡ませたくましい胸に頬を擦り寄せれば、彼は自分を抱いて立ち上がった。

 向かう先は聞かなくてもわかる。彼のベッドだ。

「……ファルナ」

 ベッドに寝かされたと同時に、低い声で囁かれる。

 一変したこの空気に、ぞくりと身体が震えた。

 続けて耳朶を唇で弄られて、彼のシャツをぎゅっと握っても堪え切れずに声が漏れてしまう。

「ん……あっ、グリジットさん」
「違うだろう?グリジットだ」

 ギロっと睨まれ、ファルナは慌てて訂正する。

 余談だが、一度は彼の名前を呼び捨てにすることを受け入れたファルナだが、数日経ってどうしても違和感を覚えてしまった。

 その後「やっぱり無理です」と訴えて、でも「それが無理だ」と反論されてーーすったもんだの挙句、昼間は「グリジットさん」、ベッドの中では呼び捨てという妥協案で落ち着いた。

 などという経緯があったのだが、今のファルナはグリジットが差し入れてきた舌を絡ませることに忙しい。

 既にグリジットとは、もう朝晩関係なく軽い口付けをしている。

 でも己の性欲が暴走しないよう自制しているグリジットは、なるべくファルナと深く口付けすることを避けてきた。まぁ、ちょっとはやったけれど。

 とはいえ、数える程度しか経験が無いファルナは、グリジットの舌遣いについていくのに必死で、そして上手く息継ぎができない。

「ん……あ、んっ……あ、グリ……ジット……くるし」

 ギブアップと腕を叩けば、グリジットはすぐに唇を離してくれる。

 ただ余裕のある笑みを向けられ、少し悔しい。あと、上手くできない自分がもどかしい。なのに、

「随分、上手くなったな」

 唾液で濡れた唇を親指の腹で拭ってくれながら、そんなことを言うグリジットに悔しさよりも嬉しさが勝ってしまう。

「へっ……へへっ、うれし」

 へにゃりと笑う自分は、きっと色っぽさから遠くかけ離れた表情をしているだろう。

 そう思っていたけれど、グリジットは淫猥に笑い寝間着のリボンをほどいた。

「本当に君は私を煽るのが上手い」

 長く繊細な指が首筋を滑り、鎖骨に触れ、露わになった胸の先端を摘まむ。

「……あんっ」

 声と共にびくっと跳ねた身体をグリジットは抱きかかえてくれる。

「随分と媚薬を飲んだようだな」

 片腕で強く抱きしめられたその腕も熱く、耳に注ぎ込まれる吐息はもっと熱い。

 そして自分の足の間は、もっともっと熱を孕んでいる。

「グリジット……して」

 もぞっと身じろぎしながら彼の全てをねだれば、「ああ、君の望むとおりにしよう」と嬉しい言葉が返ってきた。
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