健気なΩは公爵様に愛される。

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健気なΩは公爵様に愛される。

過去と現実

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いつも夢に見ていた。いつか運命の番が現れると。
母さんはいつも言っていた。

『運命の番と出会ったΩはその人と一生を過ごすのよ。それはとても幸せなことなの。だからね、アル、あなたには運命の番と幸せに暮らしてほしいの。』

そう言っていつも俺を抱き締めながら涙を流す。
だから俺もそうなる日を信じて、ずっと待っていた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

俺の母さんは大富豪に買われたΩの奴隷だった。
そして買われてからすぐに孕まされ、俺を生んだ。俺が生まれるころには母さんはそいつに飽きられて一つの小屋に俺と一緒に押しやられた。そして母さんは優しくしてくれたお屋敷の召使いさんに手伝われて俺を生んだ。

俺が小さいときは母さんは俺のそばでやつれた顔でも微笑んでくれた。
けど、俺が12歳の時、母さんは急に大きな男たちに連れて行かれ、少しして戻ってきたときには服はボロボロだった。俺を心配させまいと微笑んでくれたけど、目にはたくさん泣いた跡が残っていた。12歳ながらに俺は母さんがどんな暴力を受けたのか悟った。でも母さんは俺に知られたくないんだろう。そう思って俺は気づかない振りをした。そんなことが一週間に3、4度あった。

いつしか母さんはどこか遠くを見てぼーっとしていることが多くなり、少ない食事も食べなくなった。母さんは衰退して寝たきり状態になった。さすがにそんな状態の母さんを連れてはいかず完全な放置状態になった。綺麗だったあの母さんの面影はもうなく、諦めと絶望の顔しか残ってなかった。 

俺はそれから母さんの看病に付きっきりの日々を送った。母さんは心身ともに弱っていた。けれど一ヶ月に支払われる生活費は薬を買うには少なすぎた。薬を買うには金がいる。けれどお屋敷の外にはほとんど行ったこともなく、まだ年端もいかない子供にはどうすることもできなかった。

俺は憎んでいた。

ただ無力な自分と母さんをこんな風にしたあいつを。
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