健気なΩは公爵様に愛される。

文字の大きさ
17 / 20
健気なΩは公爵様に愛される。

ダンス

しおりを挟む
着替えをしてアンドレが持ってきてくれた朝食を食べた。アンドレには迷惑をかけた。もう会うことはないだろうと思う。これからはこういう場所とは無縁に生きていく。そう決めたから。

「アンドレ様。昨日から迷惑ばかりかけて、本当に申し訳ありませんでした。もう大丈夫です。」

そう言って深くお辞儀をした。こんなものでは恩は返せないが感謝だけでも最後に伝えておきたい。
そんな思いで礼を言い外に待っていたアレクサンドロス家の馬車に乗る。

馬車に乗って二日目の会場である、王宮の中庭へ向かう。入り口には、レイモンドが待っていた。

「昨日はアンドレのところに泊まったらしいな。何も……、いや、大丈夫だ。体調は大丈夫か?」

「はい。アンドレ様が気にかけてくださって、おかげさまで収まりました。」

何かを聞きかけてレイモンドは口に出すのをやめる。
少し気になるがレイモンドとの最後の時間だ。できるだけ楽しくしたい。
そう思いながら差し出された手を取り会場へ入る。
会場に居た者たちは少しざわついた。それはなぜかなんて分かっている。
昨日はアリア皇女のエスコートをしていたレイモンドがこんな薄汚いΩなんかをつれているからだ。
分かってはいたがレイモンドを狙う令嬢がアルベルトの方を睨む。
けれどその中に一際鋭い視線があった。
視線の先には沢山の取り巻きを連れた着飾った令嬢がいた。レクスから教わった貴族リストには載って居なかったので仕方なくレイモンドに聞いてみる。

「レイモンド様、あの女性方の中心にいらっしゃるのはどなたですか?」

「あぁ、あの令嬢はアイシャ クラウド。クラウド伯爵家の一人娘だ。それと、その横がナリア ケイシス。ケイシス男爵家の次女だな。」

「クラウド伯爵家…。レイモンドの貴族方の婚約者候補…。」

ボソッと呟いた筈だったがその声はレイモンドに聞かれていた。

「なんだ、そんなこともレクスに聞いたのか。お前には必要ない情報だろ。忘れろ。」

確かにその通りだ。どうせ今日の夜には公爵家を去ってもうレイモンドには会わないのだ。だから覚えておく必要もない。
そして二日目のダンスが始まり、レイモンドと二人で真ん中に躍り出た。
レイモンドに恥をかかせないようにきついダンスレッスンを頑張った。もしかしたら誉めてくれるかもと一生懸命にマナーや勉強をした。
けど、それももうおしまい。たったの一週間。だけど、大切な思い出。一生の思い出。
そんな事を考えてしまってワルツの最中に涙が滲む。今更覚悟が鈍った訳でもないのに涙が溢れてくる。

「どうしたんだ?!アルベルト!なぜ泣いている?!」

急に泣き出して驚いたレイモンドがとっさにダンスの輪の中から外れて座らせてくれる。
けれど、レイモンドに公爵家を出ることを伝えてはならない。優しいレイモンドは可哀想なΩを引き留めてしまう。それじゃだめだ。溢れ出す涙を必死に堪えて笑顔を向ける。

「何でもないです!目にゴミが入っただけなので!」

苦し紛れの言い訳だがそういうしかない。

「ほんとに何にもないんです!…っ、そのっ、飲み物をもってきてください!」

この場にレイモンドが居ると泣いてしまう。一人になりたくてはそう言った。

「あ、あぁ。踊って喉が乾いただろう。飲み物を取ってくる。」

レイモンドは怪しみながらもフードコーナーの方へ歩いていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

生まれ変わりは嫌われ者

青ムギ
BL
無数の矢が俺の体に突き刺さる。 「ケイラ…っ!!」 王子(グレン)の悲痛な声に胸が痛む。口から大量の血が噴きその場に倒れ込む。意識が朦朧とする中、王子に最後の別れを告げる。 「グレン……。愛してる。」 「あぁ。俺も愛してるケイラ。」 壊れ物を大切に包み込むような動作のキス。 ━━━━━━━━━━━━━━━ あの時のグレン王子はとても優しく、名前を持たなかった俺にかっこいい名前をつけてくれた。いっぱい話しをしてくれた。一緒に寝たりもした。 なのにー、 運命というのは時に残酷なものだ。 俺は王子を……グレンを愛しているのに、貴方は俺を嫌い他の人を見ている。 一途に慕い続けてきたこの気持ちは諦めきれない。 ★表紙のイラストは、Picrew様の[見上げる男子]ぐんま様からお借りしました。ありがとうございます!

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

処理中です...