健気なΩは公爵様に愛される。

健気なΩは公爵様に愛される。

手当て

これでよかったのかもしれない。レイモンドがいない間にこの王宮をでて街へ降りようか。
そう思って城門へとぼとぼと歩く。すると、すれ違った令嬢に声をかけられた。

「あなた、その怪我どうされたのですか？！手当をしますのでこっちへ！」

そう言ってあっという間にその令嬢に連れられて馬車の中に連れて行かれた。

「俺は全然大丈夫です。これは…その、ただ転んだだけなので。」

慌てて取り繕ったがその嘘は通じなかったらしい。
言い訳をしている間も消毒をして薬を塗る。

「この頬のあざは打撲ではないでしょう。誰かに殴られたのですか？」

その令嬢は医者のように怪我の具合をみて事情を当ててくる。その気迫に押されて口を開いてしまった。

「その…実は……アイシャ　クラウド令嬢に追い出されまして……」

「まあ！！またあの方ですの？ということはあなたはどこかの貴族のパートナーなのね。」

「え、どうしてそれを…」

「アイシャは有力貴族のパートナーを虐めるのよ。自分が誘われないからって。」

そういってぶつぶつと小言をいいながら手当てを終わらせる。

「あっ！そういえば！あなたの名前を聞いていなかったわ！教えてくれるかしら？」

「あっ、はい。アルベルトです。」

「私はエレーナ　クロレンスよ！よろしくね！」

「はい！よろしくお願いします！」

エレーナの明るい性格に釣られて自然と元気になる。

「さぁ、あなたのパートナーはまだ中にいらっしゃるんでしょう。中に戻りましょう！」

そういわれて、アルベルトは手を引かれて中庭に入った。