異世界転生したので俺TUEEEを期待してたら戦闘向きの能力じゃなかったので頭を捻ろうと思います。

滝永ひろ

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5章 裁判…へー。は?俺がスパイとかなんかの間違いだろ

1話 校内新聞

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「オラ、金持ってんだろ?跳んでみろや」

それを見かけたのは、夏休み明けから数日経った放課後だった。カツアゲ、こっちの世界にもあるもんなのか。多分後輩にふっかけてるんだろうが、カツアゲしてる奴は多分俺より少しだけ背が高いくらい、あんまり体格がいいほうじゃない。プライドだけの中途半端な奴に限って下を見るものか。俺はプライドなんてないからな。ああはなりたくないし。

「お?何見てんだてめー」

その男がこちらを見た。

「てめぇも金貢ぎに来たのかよ?あのドーテー野郎みたいになあ!」

「だっさ...」

「ああ?今なんつったおめぇ」

「ダサいって言ったんだ。下を見て井の中の蛙やってるお前が」

「いのなかの...ともかく、俺に喧嘩売ったらどうなるか分かってるんだろうなあ」

「知らねーよ」

「俺の親父は有名な検事でなあ。金ならたんまりあんだよ」

「ふーん。それで?」

「お前1人なんて金の力でどうにでも出来んだぞ」

「それで?」

「怖くねえのか?この国に居れなくしてやってもいいんだぜ」

「別に俺母国ここじゃねーし。どこか知らんけど」

「ほー。このトム様に随分生意気な口きくじゃねえか。これは1発殴らないと気がすまねえ」

「...殴れるなら殴れば?」

俺がそう言うと、トムとやらは容赦なく拳を振りかざした。もちろん空振りだが。

「じゃあ、次俺の番でいい?」
俺はトムの体に触れた。というか、透過して指先だけを重ねている。

「相手が悪かったな。拳で解決とは、随分魔法に自信が無いようだ。これに懲りたらダッセーこと辞めな」

俺は透過を解除した。

それと同時にトムが吹っ飛ぶ。

「うぐああッ!?」

なぜ吹っ飛んだのか理解していないようだったが、「今回はこの辺にしといてやる!」と、チンピラ感あるセリフを残して去ってしまった。

「君、大丈夫?」

カツアゲされかけていた人に尋ねる。

見るからに1年生...見た目も舐められて当然って感じの、気弱そうな雰囲気。まるで、高1の時の俺みたいな...それはどうでもいいや。

「はい。大丈夫です。ありがとうございました。えっとお礼になにか...」

「あーいいよいいよ。そういうの、面倒だし。俺が個人的にキレただけだし、気にすんなよ」

「...そうですか。せめて名前だけでも...」

「俺は2-Aのリック。交流会で一応優勝してるし、知ってるかな?」

「知ってます!!かっこよかったです!!えっと、僕は...」

「そうか。またどこかでな」

「はい。ありがとうございます」

「だから礼ならいらねえって」

俺はそこでそいつと別れて帰った。



この時の出来事が己の身を滅ぼすとも知らずに...



夏休み明けて数週間たったころ。登校してきたのだが、周りの様子がおかしい。

「なんだ?妙に人だかりができてるが...」

人だかりの中心にあったのは、学校新聞が貼られた掲示板だった。
紙面いっぱいに、『交流会優勝リック・ニュートン、異国スパイだった!?』と書かれている。

「なんじゃこれは...」

周りにいる人たちがこちらを見る目もどことなく軽蔑が混ざっている気がする。

「こんな秘密持っててなんで学校来てんの?」「記憶ないっていうのも嘘ってこと?」「私たちも監視されてたってこと?」「うわ~気持ち悪~い」

もう周りは完全に信じ切っている。馬鹿馬鹿しい。こんなのすぐみんな忘れるだろう。

「リック君、ホントにそうなの?」

後ろから声がした。ハルの声だ。

「そんなわけねーだろ。何かのでっち上げだ。人の噂も七十五日、すぐにみんな忘れるさ」

「七十...?でも、こんなのみんな信じちゃってるし、どうにかしないと」

「そのうち忘れるって。教室行こう」

「うん...」



教室に行っても、俺の居場所はなかった。ひそひそと声が聞こえてくる。
好きだね、こういうの。非現実っていうか。

「おいがっかりしたぞリック!お前いいやつのふりして俺たちのこと監視してたのかよ」

クラスの一人が詰め寄る。

「俺が何言っても信じるような精神状況じゃないだろ。冷静じゃないやつに話すことはねえよ」

「あの記事、お前も見たのか?もうばれてんだから言っちまえよ」

「信じないだろうが言うことは一つだ。俺はスパイなんかじゃない」

「犯人はみんなそういうんだよ」

「じゃあ私が犯人ですとでもいえば満足か?このモブAが」

「気にしてんだよ!」

モブAは信じる気はないようだった。これでは本当に面倒だ。

「裁判にでもなんでもかけろよ。根も葉もないってことしかわからないはずだ」

「母国側がもみ消しに来るだけなんじゃないのか?」

「チッ...めんどくさ...」

埒が明かない。人に疑いをかけるのなんてこの世界が5分前に生まれたことを証明するくらい簡単なのに。

「リック・ニュートンだな。逮捕状が出ている。連行する」

後ろを振り向くと、ごついおっさんが令状をもって教室の前に立っていた。

「抵抗はするなよ。疑いを深めるだけだ」

...まじ?
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