16 / 23
ⅩⅥ 親友
しおりを挟む
「おい、迎え来たぞって...ずいぶん仲良さそうだなおい」
シュウに寄りかかって、アクトが居眠りしている。
「あーあー、アクトは俺にもまだ懐いてないのに。おい、起きろ。アクト起きろ。俺と1年ちょっとっしょにいるくせに急に新人に懐くんじゃねえ。起きろアクト」
赤城がぺちぺちアクトに顔をたたく。
「んあ...えっと...シュウ、迎え来た?」
「来たよ。赤城さん車で来たよ」
「ああ、赤城さんの車来たか」
「俺わい。てかそれはいいから車に積め。片方が後部座席で抑えてろ。片方は助手席だ」
「俺眠い...」
「じゃあ僕が抑えとくから助手席で寝てなよ」
「そうする...」
「はっ、寝ぼけてら」
気絶した仮面の男と、眠り切ったアクトを車に積んで発進させた。
「おーいリツ、いるかー?」
赤城が研究所のインターホンを鳴らした。
アクトは車の中で寝ている。
「はいはい、どうした、また検体か?」
リツが扉を開けて出てくる。
「ああ、そうなんだが、この仮面付けたヤツなんだが、どうやらまだ意識が残ってるみたいでな。シュウの親友らしいんだ。尾も人工尾の形はしていないし、助かるんじゃないかって思ってな」
「なんだそういうことね、似たような研究をしていたから調べなくてもわかるわ」
「似たような研究って...?」
シュウが食いつく。
「まず、その子は一回死んでるわ。おそらく脳死か心停止」
「そんなっ、だってこないだ動いて...」
「それからすぐに特殊な人工尾をつけるの。これは意思を持たない尾よ」
「意思を持たない...」
「すると尾に残っているのは生命維持機能。あとはわかるわね?」
「死者の蘇生...」
「そう。ずいぶん古い研究だけどね。全身に生命維持物質を流し込む性質を利用するんだけど、脊髄に尾をつなぐことで尾自体が脊髄に入ってきた感覚情報をキャッチ、脳に幻覚を見せる形で電気信号を発信。脳細胞の反射運動でさも元の人間かのように動くって仕組みね。本人といって遜色ないわ。記憶も意識も肉体も...尾を除けば本人の物。ご飯も食べたっていいけど必要ない。進化の一つかもね」
「そんな...じゃあエンは人体実験に使われたんですか?」
「それは違うわ。この技術は数年前の物。極秘裏に進んだものならもっと機能性に優れている物があるはず。たまたまこの蘇生用の尾を持っていた人物がこの子を生き返らせる目的で使ったとみるのが妥当でしょうね」
「そんな...誰が...」
ママ、シュウの頭にはそれがよぎった。
「死後すぐでないといけないから近くにいた人のはずよ。まあ、犯人捜しをする必要はないのだけど」
「でもシュウはなんかほかの人工尾使用者みたいに動いていました。何かおかしくないですか?」
「それもそうね...尾を見る限り私が言ってたものと同じもののはずだから何か別で原因があるはず。それを除去すればいいはずね。やっておくわ。人工尾の解析に比べれば簡単なもんよ。おねーさんにまかせなさい」
「お願いします」
「俺からも頼みます。誰だか知りませんけど」
それはアクトの声だった。
「寝てたんじゃ...」
「ずっと寝てるわけねーだろ。赤城さんの車のシート硬いんで目が覚めちまったよ」
「そっか。ありがと。親友だからね」
「おう」
「ちっ、アクトはやっぱり同年代には懐くのか」
「アンタみたいなおっさんと仲良くする高校生はいませんよ」
「そうね、寂しいなら私がしてしてあげてもいいのよ?」
「うるせー。そういうことじゃ無いやい」
その日は、もう特に通報もなく、帰ることになった。ただ、シュウは帰りの車の中、寝ているアクトのことが気になった。
「赤城さん」
「どうしたシュウ?」
「アクト君が、やたら親友を大事にしろっていうんです。なんでなんでしょうね」
「あ~、それな。...知りたい?」
「知りたいです」
「俺が言ったって言うなよ」
「はい」
「こいつ、昔フィフスに友達殺されてんだ」
「...そんな…」
「結構無残にやられたらしいぜ。骨が見えて、肉は剥がれ...この辺でやめとこう。ダチが食い終わって、自分が食われようとしたところに来たのがその時入りたての警視総監、当時はギャング対策本部長。俺の上司だったな。とにかく強かった。俺らはあの人がいる間、足代わりと事務作業しかしたことなかったよ」
「そんなに強かったんですね」
「あの時も、特別強かったわけじゃねえ。警視総監は指一本でみじんにしてたよ。ただ、あんなに怒ってたは後にも先にもあの時だけだったな」
「そう...ですか」
「そういうわけだ。お前も友達は大事にしろよ。アクトとも仲良くなったんだろ?こいつが無茶やってるときは、俺よりお前がそばにいてやんな」
「...はい」
「それから」
「なんですか?」
「尾が生命維持だって話してたろ?」
「はい」
「尾が生えてる奴は、老いるスピードが極端に遅い。それはつまり友人の死を見届けることになるってことだ。アクトが死ぬとき、お前はまだ30代くらいの年齢のはずだ。覚悟しておけよ」
「...はい」
赤城の見た目こそ30代から40代程度に見える。赤城はどれだけの死を乗り越えてきたのだろう。シュウは赤城の横顔が目に焼き付いて離れなかった。その顔は、その目は、古き友人を映しているようだった。
シュウに寄りかかって、アクトが居眠りしている。
「あーあー、アクトは俺にもまだ懐いてないのに。おい、起きろ。アクト起きろ。俺と1年ちょっとっしょにいるくせに急に新人に懐くんじゃねえ。起きろアクト」
赤城がぺちぺちアクトに顔をたたく。
「んあ...えっと...シュウ、迎え来た?」
「来たよ。赤城さん車で来たよ」
「ああ、赤城さんの車来たか」
「俺わい。てかそれはいいから車に積め。片方が後部座席で抑えてろ。片方は助手席だ」
「俺眠い...」
「じゃあ僕が抑えとくから助手席で寝てなよ」
「そうする...」
「はっ、寝ぼけてら」
気絶した仮面の男と、眠り切ったアクトを車に積んで発進させた。
「おーいリツ、いるかー?」
赤城が研究所のインターホンを鳴らした。
アクトは車の中で寝ている。
「はいはい、どうした、また検体か?」
リツが扉を開けて出てくる。
「ああ、そうなんだが、この仮面付けたヤツなんだが、どうやらまだ意識が残ってるみたいでな。シュウの親友らしいんだ。尾も人工尾の形はしていないし、助かるんじゃないかって思ってな」
「なんだそういうことね、似たような研究をしていたから調べなくてもわかるわ」
「似たような研究って...?」
シュウが食いつく。
「まず、その子は一回死んでるわ。おそらく脳死か心停止」
「そんなっ、だってこないだ動いて...」
「それからすぐに特殊な人工尾をつけるの。これは意思を持たない尾よ」
「意思を持たない...」
「すると尾に残っているのは生命維持機能。あとはわかるわね?」
「死者の蘇生...」
「そう。ずいぶん古い研究だけどね。全身に生命維持物質を流し込む性質を利用するんだけど、脊髄に尾をつなぐことで尾自体が脊髄に入ってきた感覚情報をキャッチ、脳に幻覚を見せる形で電気信号を発信。脳細胞の反射運動でさも元の人間かのように動くって仕組みね。本人といって遜色ないわ。記憶も意識も肉体も...尾を除けば本人の物。ご飯も食べたっていいけど必要ない。進化の一つかもね」
「そんな...じゃあエンは人体実験に使われたんですか?」
「それは違うわ。この技術は数年前の物。極秘裏に進んだものならもっと機能性に優れている物があるはず。たまたまこの蘇生用の尾を持っていた人物がこの子を生き返らせる目的で使ったとみるのが妥当でしょうね」
「そんな...誰が...」
ママ、シュウの頭にはそれがよぎった。
「死後すぐでないといけないから近くにいた人のはずよ。まあ、犯人捜しをする必要はないのだけど」
「でもシュウはなんかほかの人工尾使用者みたいに動いていました。何かおかしくないですか?」
「それもそうね...尾を見る限り私が言ってたものと同じもののはずだから何か別で原因があるはず。それを除去すればいいはずね。やっておくわ。人工尾の解析に比べれば簡単なもんよ。おねーさんにまかせなさい」
「お願いします」
「俺からも頼みます。誰だか知りませんけど」
それはアクトの声だった。
「寝てたんじゃ...」
「ずっと寝てるわけねーだろ。赤城さんの車のシート硬いんで目が覚めちまったよ」
「そっか。ありがと。親友だからね」
「おう」
「ちっ、アクトはやっぱり同年代には懐くのか」
「アンタみたいなおっさんと仲良くする高校生はいませんよ」
「そうね、寂しいなら私がしてしてあげてもいいのよ?」
「うるせー。そういうことじゃ無いやい」
その日は、もう特に通報もなく、帰ることになった。ただ、シュウは帰りの車の中、寝ているアクトのことが気になった。
「赤城さん」
「どうしたシュウ?」
「アクト君が、やたら親友を大事にしろっていうんです。なんでなんでしょうね」
「あ~、それな。...知りたい?」
「知りたいです」
「俺が言ったって言うなよ」
「はい」
「こいつ、昔フィフスに友達殺されてんだ」
「...そんな…」
「結構無残にやられたらしいぜ。骨が見えて、肉は剥がれ...この辺でやめとこう。ダチが食い終わって、自分が食われようとしたところに来たのがその時入りたての警視総監、当時はギャング対策本部長。俺の上司だったな。とにかく強かった。俺らはあの人がいる間、足代わりと事務作業しかしたことなかったよ」
「そんなに強かったんですね」
「あの時も、特別強かったわけじゃねえ。警視総監は指一本でみじんにしてたよ。ただ、あんなに怒ってたは後にも先にもあの時だけだったな」
「そう...ですか」
「そういうわけだ。お前も友達は大事にしろよ。アクトとも仲良くなったんだろ?こいつが無茶やってるときは、俺よりお前がそばにいてやんな」
「...はい」
「それから」
「なんですか?」
「尾が生命維持だって話してたろ?」
「はい」
「尾が生えてる奴は、老いるスピードが極端に遅い。それはつまり友人の死を見届けることになるってことだ。アクトが死ぬとき、お前はまだ30代くらいの年齢のはずだ。覚悟しておけよ」
「...はい」
赤城の見た目こそ30代から40代程度に見える。赤城はどれだけの死を乗り越えてきたのだろう。シュウは赤城の横顔が目に焼き付いて離れなかった。その顔は、その目は、古き友人を映しているようだった。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
レオナルド先生創世記
ポルネス・フリューゲル
ファンタジー
ビッグバーンを皮切りに宇宙が誕生し、やがて展開された宇宙の背景をユーモアたっぷりにとてもこっけいなジャック・レオナルド氏のサプライズの幕開け、幕開け!
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜
日々埋没。
ファンタジー
「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」
かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。
その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。
レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。
地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。
「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」
新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。
一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。
やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。
レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる