魔術師終始武術中! ~魔術師になってワクワクしてたら肉弾戦でした~

滝永ひろ

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1話

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ただ、これでよかったのかはわからないが、どうやらこの国にしかない要素を持っていたみたいだ。

「マナ...魔法とか使えんのかな?」

「やー、そこ変な格好の人~、寄ってかないかい?美味いもんそろってるよ!」

バルの客引きに呼び止められる。

「あ、すいません、俺今金持ってないので...」

「そっか。残念だけど金が入ったら来てくれな!」

客引きはそういうと去っていき、別の通行人に声をかける。

「ずいぶん活気ある国なんだな。ってか入ったはいいものの、物乞いするのもな...」

その時、後ろから声をかけられる。若い男の声だ。

「ねえそこの変な格好の君、うちのチームに所属してくんない?」

背丈が俺より一回り大きいくらい、金髪マッシュのイケメンだ。

「チーム...って何のことですか?」

「えっと...君、クランは?」

「クランって何ですか?」

「え...本気で言ってる?」

男がわかりやすく困惑する。

「君、ホントに何もわかんないの?」

「はい。さっき気づいたらここにいて」

「へー...でも、君、おかしいよ」

「おかしい?」

「君の体は継続的にマナが流れている。それは身体強化や魔術の発動がスムーズになったり...少なくともトップクラスの人間にしかできないんだ。それをどうして君が...」

「よくわかりませんけど、今宿も仕事もないんです。そのチーム(?)に入れば生活できますかね...」

「ああもちろん」

「行きます!」

「...ありがとう。ちょうど一人足りなかったんだ。ついてきて」

俺はこれが異世界転生かと、うまくいっていることに説明をつけながらついて行った。



「みんな~、あと一人連れてきたよ。めっちゃ無知だったけどいいよね」

つれてこられたのはさっきのバルだった。男に席まで案内される。

そこには、ほかのメンバーが3人いた。一人は背が低いながら身長ほど長い大太刀を背中にさす少年、空中に寝転がって本を読む少女(ぱっと見JK?)、前髪ぱっつんで姿勢よく座る、黒髪ロングの女性。

「あの、初めまして」

「ほら、名前も」

さっきの男が促す。

えっと、新田成人だから、なりひとなりひと...

「名前はリヒトです。よろしくお願いします」

すると、前髪ぱっつんの人が反応する。

「私はアンナ・リービッヒ。こちらこそよろしくお願いしますね」

好意的で好印象だ。真面目な人に見え、好印象だ。屈託のない笑顔、好印象だ。

「ファーブさんはもう挨拶したんですか?」

アンナさんが、俺を連れてきた男に促す。

「ファーブ・ハーバーだ。シルヴァで3番目くらいに強いんだけど...知ってる?」

「すいませんちょっと知らないです」

「あ、そう...」

ファーブさんは不安そうな顔になった。アンナさんがそれを見て慰めに入る。

「ファーブさん、大丈夫なんで、この人が知らないだけなんで。ファーブさん強いじゃないですか」

「俺、強い?」

「強いですよ」

「うん。わかった」

すると、太刀の少年がヤジる。

「ファーブぅ、いい加減自信持てって。そんなんだからメンバーが集まらないんだって」

「うっ!」

「戦闘時以外ほんとにヘタレだな」

「うっ!」

傷付くファーブさんにアンナさんがフォローを入れる。

「リック!やめなさい!ファーブさんはメンタル弱いんですから!」

「うっ!」

「あっすいません。ところでリック、自己紹介ぐらいしなさい」

「リック・デービー。太刀使いだよ」

それに便乗して、少女も自己紹介する。

「ミリア・デービー。リックの姉。念力。よろしく」

不愛想だ。

「3人の紹介も済んだね。じゃ、グァラッチのオルパラ交流会についてなんだけど...」

ファーブさんが話し出したが、俺は思わずそれに割って入る。

「ぐぁらっち...?って何ですか?」

「この辺の警務組織だよ。最大勢力で、他国の侵攻なんかがあったときにはうちが対応するね」

リックも割って入る。

「その中で、オルトとパラに分かれてるんだ。正式名称はo-LOSSオルトロスp-DOXEパラドックス。俺らはオルトだね」

「そう。そしてそのうち幹部...第3級以上は自分のチームを設けることになるんだけど、そのチームの実力向上を図るためにオルトとパラで交流会って形で試合みたいなことをさせるんだよね」

「まあ、オルトとパラは仲悪いし交流会の皮をかぶった喧嘩大会だけどね」

なんとまあ...物騒な。そんなのが国衛って...まあ戦闘ができるのはいいのか。

「ルールは殺さないことだけ。いきなり入ってきて申し訳ないけど覚悟は決めてもらうよ」

「...えっ?」

何か、よからぬことに巻き込まれているようだった。
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