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1話

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「こっちはいません。アンナさんどうですか」

「私も敵のマナを感じません」

「敵はどこにいるんですかね...」

「もうみんなやられちゃったとか?」

「そんな言って油断してたら後ろから殺されるのがテンプレートですけど」

「怖いこと言わないでください」

それにしても変だな。走っても走っても景色が変わらない...

「アンナさん、止まりましょう」

「なんですかいきなり」

ズザサー、とアンナさんが足でブレーキをかけた。

「進まなくていいんですか?待っていても敵は来てくれませんよ」

「いや、色仕掛けでもすれば来るんですが...それは置いておいて、さっきから景色が変わらないと思いませんか?」

「木なんて全部一緒じゃないですか?」

「あそこにある木、よく見ると爪痕がありますよね」

「はい。それが何か?」

「あれは熊のマーキングですが、もうあれで21個目です」

「くまさんが頑張っているのでは?」

「いえ、こんな道沿いに何個もというのは野生動物には考えにくいでしょう」

「ということは?」

「俺らは非常に短い区間をループしていることになります」

「...つまりどういうことですか?」

「攻撃です」

「え?」

「ここに長時間足止めされているとみて間違いないでしょう。足止めが目的ならとどめを刺すときにこの状況は打開されるとみて間違いはありませんが、そんなのんきなこと言ってたら埒があきません」

「つまり?」

「考えます。30秒ください」

「はい」

アンナさんがにこっと笑ってうなずいた。周囲を見回す。警戒しておいてくれるようだ。

まず、状況の整理だ。
・同じ道をループしている。
・ループのスパンは短い。
・現状足止めどまり。
となると、
・指定できる範囲は狭い。
・発展型の可能性は薄い。
つまり、
・短距離を指定して入口と出口を接続する
・数秒だけ時間を巻き戻す
のどちらか。

走っている途中で視界がぶれるようなことはなかった。

「アンナさん、横に進みましょう」

「ふぇ?」

俺はアンナさんを連れて今まで進んでいたのとは垂直に進んだ。

「アンナさん、わかりますか」

「はい。近くにマナの気配を感じます」

「もう一度はめられては面倒です。弧を描いて走ってください」

「はい」

俺たちは反対向きに弧を描くように走り出した。

俺たちにはマナの方向がわかっていた。

さっき俺たちがはめられていた方向の直線上、なるほど近くにいて感じられないわけだ。

マナを感じた先、そこにいたのはさえない青年だった。髪もぼさぼさ、顔にもそばかすが出ている。

「えっ、ちょっ、どうやって抜け出して...」

「うるせえ!」
「成敗!」

その男に顔面パンチ×2が炸裂した。

ばたんきゅー。

「てこずらせやがって」

脱落 シーム・ハーディ 能力 MEVIUS 一定距離をループさせる

「じゃ、次行きましょうか」



「姉ちゃん、いる」

俺は囲まれた気配を感じていた。

「そう、リック、わかってるわね」

「ああ。殺しちゃダメなんだろ」

「危険なようなら私が止めるわ」

「わかった」

俺の姉ちゃんはやっぱ心強い。

SECOND DEELジキルとハイド...」

俺はリミッターを外した。

「ヴアアアアアアア!!」

俺の肌は赤く染まり、身長が伸びて大人ほどまでになり、筋肉が膨張した。

「ヴウウン!」

俺は持っていた剣を振り回す。こうなった状態だと大きな剣も振り回しやすい。

一件何もない方へ、一振り、二振りすると木が倒れ、敵の姿があらわになる。

もう一振り。敵は県の衝撃波によって吹っ飛ぶ。気絶した。

脱落 チンピラ 能力 ?

「アッチニモ...」

向こうにも敵を感じる。

同じように、三振りで敵をなぎ倒していく。

「アッチモ...」

敵...姉チャン守ル...

「ヴア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!」

「はい終わり」

カラダ...ウゴカナイ...?

「ハッ!」

姉ちゃんが俺の首を思いっきり親指で突いた。

「アレッ?俺は...ああ、またやったんだったな」

周りを見ると、木々は無残に倒れきり、あちこちに気絶したパラが倒れている。

脱落 チンピラ×6

「お疲れ。このツボ知ってるのが私しかいないから私がいないとこでやったら危ないのよね...体はどう?」

「ちょっと痛い」

「そう。だんだん副作用に体が慣れてるみたいね。最初は3秒で全身筋肉痛だったのに」

「毎日姉ちゃんが訓練に付き合ってくれるおかげだよ」

「弟に強くあってほしいと思うだけよ」

姉ちゃんのこういうとこが好きだ。

「ありがと」

「何急に?」

「なんでもない。次いこう」

「そうね」

俺たちはまた歩き出した。
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