魔術師終始武術中! ~魔術師になってワクワクしてたら肉弾戦でした~

滝永ひろ

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1話

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林を侵略しながら進む僕のもとに、アナウンスが入った。

「あー、あー。現状報告。こちら本部」

会長の声だ。

「オルト残り5名。パラ残り1名」

5名...リックもミリアもアンナもリヒト君もうまくやっているみたいだね。

僕としてはもっと残っていてほしかったけど。

残りの敵は当然あいつなんだろうな。

はあ...また負けるのかなあ。いやだなあ、これじゃオルトの隊長って顔が丸つぶれだし、また下から苦情来るし、何よりパラが調子乗るし、ほんっとこの交流会なくなんないかなあ...

「あ」

林の中、一か所だけハゲになっているとこがある。

「あそこにいるのは...多分あの二人だな」

あんなになるのは多分暴走リックが暴れた後。なら近くにミリアもいるはずだ。

ミリアと僕の距離を10cmに。

模擬瞬間移動。

「やっ」

僕は気絶したパラのチンピラに囲まれた二人に声をかけた。

「ファーブさん、こっちは大丈夫よ。そんなことより敵大将には勝てる見込みはあるの?」

ミリアが聞く。

「うーん...人数差を見てサレンダーしてくれればありがたいんだけど」

「また弱気なこと言って...そんなんだから負けんじゃんない?」

「うう...ごめん」

「ほらまた弱気!」

「うっ...」

「もうちょっと気を強く持ちなさい」

「でも...」

「アンタ、強いんでしょ?ならもうちょっと希望を見なさい。私たちがいるんだから」

「...残り5人って僕らのチーム5人?」

「ついさっきまで一緒に居たし、そのはずよ」

「ならアンナとリヒト君を探そう。今回の作戦のキモはリヒト君だ」

「...わかったわ」

僕とリヒト君の距離を10㎝に。

模擬瞬間移動。



「やあリヒト君、お待たせ」

突然目の前に現れたのは、瞬間移動してきたファーブさんだった。

「瞬間移動もできるんですか」

「ああ、僕の魔術の使いようだね。そんなことより、ああ、アンナもいるね。敵提唱の討伐だ。行こう」

「はい」
「はい」

するとファーブさんは突然消え、次の瞬間には俺たちが瞬間移動していた。

「おわっ、ああ、ミリアさんにリック、無事だったんですね。よかった」

「じゃ、リヒト君」

「なんですか?」

「作戦、立てなきゃ。僕苦手なんだけど...」

「...敵大将の能力はなんですか?」

「ありがとう。敵はケルス・ファーバー。能力はすべての可能性を把握する能力だ」

「...」

「これでも結構強いんだよ...リヒト君、勝てるかな?」

「よかった...」

「へ?」

「いや、未来予知って聞いてたので、完璧な未来視でなくてよかったです」

「じゃあ勝てるのかい?」

「だいぶ可能性は高くなりました」

「じゃ、どうするの?」

「俺を信じてください。ファーブさん自分に自信がないようなので」

「うん...」

全ての可能性を把握する...
つまり、取捨選択をしながら行動をしているということ。そしておそらく先の先までは読んでいない。そこまで行くと直感の要素が強く出すぎる。
そのうえで、直感的から外れた展開をとれば対応できないはず。

「アンナさん、思いっきり俺の全身を殴ってください」

「へ?」

アンナさんは素っ頓狂な声を上げた。



「...というわけで、俺が奇襲かけます」

作戦通り、俺はアンナさんに全身を殴ってもらった。この蓄積された衝撃を使って予測外の動きをしようというわけだ。

殴られた場所と回数
・背中 5回
・両腕 10回ずつ
・両足(後ろから) 5回ずつ
・両足(下から)  5回ずつ

これが弾薬となる。

「まずは皆さんで気を引いてもらいます。それでも前回からの進化は見せてください。相手に考えさせなければならないので」

「去年はラスト1対1だったからすでに有利な状況なのは間違いないよ」

「ではコンビネーションを決めてください。その間に...そうですね、アンナさんと俺で攻めます」

「でも人数が合わないからばれないかな?」

「隠れてることにすればいいと思います。その時点でそれの真偽で脳の容量をつぶせるので」

「そっか」

「なので、三人で頑張ってください。こっちも頑張ります」
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