少年イシュタと夜空の少女 ~死なずの村 エリュシラーナ~

朔雲みう (さくもみう)

文字の大きさ
12 / 14

11. 約束 ~お願い、聞いてくれる……?~

しおりを挟む
「いやだ、フェルルが消えちゃうなんて……! ぼくのせいで……っ」

「イシュタ……泣かないで。私はあなたに感謝しているのよ。だれもおとずれることのなくなった、この村に来てくれて。この村は、もう《過去の記憶》でしかないの。だから、新しい会話を生むことはできないわ。あなたと話ができて、本当に楽しかった」


 フェルルは明るい笑顔で、こう続けた。


「ねぇ、イシュタ。私の最後のお願い、聞いてくれる……?」


 イシュタが涙を流しながらうなずくと、


「この村のこと、私のこと……忘れないでほしいの」

「ぼくは忘れないよ、フェルルのことも……!」

「ありがとう、イシュタ。わたし、あなたともっと色々なものを見てみたかった……あなたの村も……」

「見られるよ、ぼくが、フェルルを何処にでも連れて行ってあげるから、だから……お願い、消えないで」


 イシュタが泣きながら懇願こんがんすると、フェルルはすっとイシュタに顔を寄せてきた。


「え、フェル――」


 フェルルのくちびるが、イシュタのほおにふれた。


「約束よ――」


 声だけを残し、フェルルの姿はすーっと大気に消えた。

 フェルルの姿はもう何処にもない。

 イシュタの瞳からこぼれ落ちた涙が、大粒おおつぶしずくとなって地に落ちる。

 あ、とイシュタは息をんだ。

 しずくの落ちた先――イシュタの足元に、一輪の花が咲いていた。

 瑠璃るり色の花びらは星のかたちに花開き、銀色の葉に支えられている。フェルルの瑠璃るり色の瞳と、銀色の髪が、その花に透けて見えた。


「フェルル……?」


 イシュタは、消えた少女の名をつぶやいた――
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

小鳥

水翔
絵本
小鳥と少女の物語

そうして、女の子は人形へ戻ってしまいました。

桗梛葉 (たなは)
児童書・童話
神様がある日人形を作りました。 それは女の子の人形で、あまりに上手にできていたので神様はその人形に命を与える事にしました。 でも笑わないその子はやっぱりお人形だと言われました。 そこで神様は心に1つの袋をあげたのです。

パンダを演じたツキノワグマ:愛されたのは僕ではなく、塗りたくった小麦粉だった

tom_eny
児童書・童話
「なぜ、あいつばかりが愛される?」 山奥の孤独なツキノワグマ・ゴローは、人々に熱狂的に愛される「パンダ」に嫉妬した。 里で見つけた小麦粉を被り、彼は偽りのアイドルへと変貌を遂げる。 人々を熱狂させた「純白の毛並み」。 しかし、真夏の灼熱がその嘘を暴き出す。 脂汗と混じり合い、ドロドロの汚泥となって溶け落ちる自己肯定感。 承認欲求の果てに、孤独な獣が最後に見つけた「本当の自分」の姿とは。 SNS時代の生きづらさを一頭の獣に託して描く、切なくも鋭い現代の寓話。 #AI補助利用

中学生ユーチューバーの心霊スポットMAP

じゅん
児童書・童話
【第1回「きずな児童書大賞」大賞 受賞👑】  悪霊のいる場所では、居合わせた人に「霊障」を可視化させる体質を持つ「霊感少女」のアカリ(中学1年生)。  「ユーチューバーになりたい」幼なじみと、「心霊スポットMAPを作りたい」友達に巻き込まれて、心霊現象を検証することになる。  いくつか心霊スポットを回るうちに、最近増えている心霊現象の原因は、霊を悪霊化させている「ボス」のせいだとわかり――  クスっと笑えながらも、ゾッとする連作短編。

稀代の悪女は死してなお

朔雲みう (さくもみう)
児童書・童話
「めでたく、また首をはねられてしまったわ」 稀代の悪女は処刑されました。 しかし、彼女には思惑があるようで……? 悪女聖女物語、第2弾♪ タイトルには2通りの意味を込めましたが、他にもあるかも……? ※ イラストは、親友の朝美智晴さまに描いていただきました。

ローズお姉さまのドレス

有沢真尋
児童書・童話
*「第3回きずな児童書大賞」エントリー中です* 最近のルイーゼは少しおかしい。 いつも丈の合わない、ローズお姉さまのドレスを着ている。 話し方もお姉さまそっくり。 わたしと同じ年なのに、ずいぶん年上のように振舞う。 表紙はかんたん表紙メーカーさまで作成

星降る夜に落ちた子

千東風子
児童書・童話
 あたしは、いらなかった?  ねえ、お父さん、お母さん。  ずっと心で泣いている女の子がいました。  名前は世羅。  いつもいつも弟ばかり。  何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。  ハイキングなんて、来たくなかった!  世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。  世羅は滑るように落ち、気を失いました。  そして、目が覚めたらそこは。  住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。  気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。  二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。  全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。  苦手な方は回れ右をお願いいたします。  よろしくお願いいたします。  私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。  石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!  こちらは他サイトにも掲載しています。

かつて聖女は悪女と呼ばれていた

朔雲みう (さくもみう)
児童書・童話
「別に計算していたわけではないのよ」 この聖女、悪女よりもタチが悪い!? 悪魔の力で聖女に成り代わった悪女は、思い知ることになる。聖女がいかに優秀であったのかを――!! 聖女が華麗にざまぁします♪ ※ エブリスタさんの妄コン『変身』にて、大賞をいただきました……!!✨ ※ 悪女視点と聖女視点があります。 ※ 表紙絵は親友の朝美智晴さまに描いていただきました♪

処理中です...