少年イシュタと夜空の少女 ~死なずの村 エリュシラーナ~

朔雲みう (さくもみう)

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10. 星の花 ~きっと、ぼくが探していたものだと思う~

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「生きてる……?」

「ねぇ、この村のこと、イシュタはどう思う?」


 訊かれて、イシュタは村をみまわした。

 瓦礫がれきの山はみんな姿を消し、活気に満ちた村へと変わっている。

 色あざやかな建物が立ち並ぶ路地、店先からただよってくる食べ物の匂い、人々の談笑……初めて来た村なのに、何処かなつかしくて温かい――


「すごく、素敵な村だと思うよ」


 イシュタが心からそう言うと、フェルルは嬉しそうに声をはずませた。


「ありがとう、うれしいわ。わたしも、この村が大好きなの!」


 その時の笑みがとびっきりだったせいか、イシュタはほんの少しどきっとして、思わず目をそらしてしまった。


「イシュタ……?」

「え、あ、ごめん。何でもないよ」

「イシュタ、顔が赤いわ。大丈夫?」

「だ、大丈夫。何でもないよ」

「そう? ……ねぇ、イシュタはどうしてこの村に来たの?」 


 ふしぎなことが立て続けに起こり、イシュタはすっかり聞くタイミングを逃していた。


「そうだ、ぼくは大事な用があって……」


 探している薬についてたずねると、フェルルは悲しそうに言った。


「そう、妹さんが……」

「ねぇ、さっき話してくれた《星の花》のこと、もっと教えて。きっと、ぼくが探していたものだと思う」


 父が使っていたという特別な薬。それはきっと《星の花》から作ったものに違いない。


「この村に、たくさん咲いていたんだよね?」

「ええ、昔はたくさん咲いていたわ。でも、あの炎に焼かれてしまって……」

「そんな……」


 イシュタはその場にへなへなとくずれ落ちた。

 村人たちの楽し気な笑い声が、しだいに遠のいていく。

 景色までぼやけていく気がして、イシュタは目をこすった。


「あれ……?」


 道も、建物も、村人たちも……何もかもが、銀色の光に包まれ、透けていく。

 銀色の光は、光の玉となって瑠璃るり色の夜空にのぼっていき、消えた。

 あとには、イシュタとフェルル――瓦礫がれきの山だけが残された。

 フェルルが、力なく言った。


「もう、あまり時間は残されていないみたいね」

「え……?」

「この村はね、伝承の中で生きていたの。でも、あなたは知ってしまった、伝承の真実を……」


 イシュタは、そこではっとなる。

 父は言っていた。エリュシラーナへは、決してと。


「じゃあ、お父さんが言っていた、良くないことが起こるって……」


 それは、この村が、ということ――


「ごめんなさい、ぼく……っ」

「いいのよ、イシュタ。悲しまないで。夢からめる時間が、来ただけだから……」


 さびしげに微笑むフェルルの輪郭りんかくがうすれ、彼女の身体全体が、銀色の光に包まれていく。


「フェルル!?」


 フェルルの身体が、銀色の光をびたまま、透けていく。
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