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僕が中学に、弟のルキが小学に入学する直前、父親がこの家の跡継ぎを弟に決めた。
わかっていたことだったけど、やはりショックだった。もう用無しの役立たずの僕が、この屋敷に居続けることは出来ない。そう思って、父親に「この家を出たい」と告げた。
父親は何も言わずに頷くだけだった。だけど、僕を疎ましく思っていても、一応父親だからだろうか。僕が住む為の小さな家を与えてくれた。それに、学校の費用や生活費等に必要な充分なお金を、定期的に振り込んでくれている。
それは、捨てた僕を不憫に思う気持ちからだろうか。それとも、仕方なくだろうか。どちらにせよ、まだ子供の僕は一人では何も出来ないのだ。
森の奥の洋館を出る時に、ロウには残るように言った。ロウは優秀だ。僕について来た所で、自分の為にはならない。僕は、「住む所とお金があれば、一人でも大丈夫だ」と言ったけど、ロウは頑として首を振らず、僕が許可していないのに、勝手について来た。
そして、洋館にいた頃と同じように、僕の世話を楽しそうにしてくれる。
…そうなのだ。ロウは昔から、僕の世話をとても楽しそうにする。こんな役立たずの僕の世話の何が楽しいのか、僕にはさっぱりわからなかった。
この小さな家は、人間が住む街のはずれにあった。
僕がいた青蓮家は、森の奥深くにあったが、人間界の中に屋敷を構える一族も多数いる。僕が新しく住み始めた家がある街には、赤築家の大きな屋敷があった。
赤築の者が、小さな家に住む僕の話を聞いたのだろう。ちょくちょく深夜に家の周りをウロつく狼の気配を感じるようになった。たぶん、僕を襲いに来ることは無いと思うのだけど、心配したロウが、狼が出る度に寝ている僕の傍に来る。時には外に出て、狼を追い払っているようだった。
僕たち人狼族は、人間に紛れて学校に通っている。
大半の人間は、僕たちの存在を知らない。だから僕たちも、派手に動いてバレない様に気をつけていた。
そして僕は、今年、名門私立高校の二年生になった。
昨年に大学を出た僕より七つ上のロウは、何を思ったのか、僕が進学した高校の先生となった。
「これで、四六時中ルカ様の傍にいられる」
そう言って、端整な顔に満面の笑みを浮かべるロウを、僕は呆れて見た。
わかっていたことだったけど、やはりショックだった。もう用無しの役立たずの僕が、この屋敷に居続けることは出来ない。そう思って、父親に「この家を出たい」と告げた。
父親は何も言わずに頷くだけだった。だけど、僕を疎ましく思っていても、一応父親だからだろうか。僕が住む為の小さな家を与えてくれた。それに、学校の費用や生活費等に必要な充分なお金を、定期的に振り込んでくれている。
それは、捨てた僕を不憫に思う気持ちからだろうか。それとも、仕方なくだろうか。どちらにせよ、まだ子供の僕は一人では何も出来ないのだ。
森の奥の洋館を出る時に、ロウには残るように言った。ロウは優秀だ。僕について来た所で、自分の為にはならない。僕は、「住む所とお金があれば、一人でも大丈夫だ」と言ったけど、ロウは頑として首を振らず、僕が許可していないのに、勝手について来た。
そして、洋館にいた頃と同じように、僕の世話を楽しそうにしてくれる。
…そうなのだ。ロウは昔から、僕の世話をとても楽しそうにする。こんな役立たずの僕の世話の何が楽しいのか、僕にはさっぱりわからなかった。
この小さな家は、人間が住む街のはずれにあった。
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赤築の者が、小さな家に住む僕の話を聞いたのだろう。ちょくちょく深夜に家の周りをウロつく狼の気配を感じるようになった。たぶん、僕を襲いに来ることは無いと思うのだけど、心配したロウが、狼が出る度に寝ている僕の傍に来る。時には外に出て、狼を追い払っているようだった。
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大半の人間は、僕たちの存在を知らない。だから僕たちも、派手に動いてバレない様に気をつけていた。
そして僕は、今年、名門私立高校の二年生になった。
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「これで、四六時中ルカ様の傍にいられる」
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