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ーーリツには話が通じない。こいつといると、僕のペースが乱されてしまう。
お互いに噛みつきながら、絡まり合ってゴロゴロと転がる赤と白の狼を見る。
ーーリツとシロウの力は、互角に見える。だけど、シロウには二人の仲間がいる。絶対的にリツの方が分が悪いじゃないか。これ以上傷が増えないうちに逃げてしまえばいいのに…。やっぱり、リツはバカだ。
なんの力も持たない自分が不甲斐なくて、僕は俯いて唇を噛みしめた。その時、背後で二匹の獣が動く気配を感じた。
ーーなぜそうしたのか、後になって何度考えてもわからない。頭で考えるよりも早く、身体が勝手に動いてしまったんだ。
僕は、リツに向かって大きく口を開く二匹の前に、両手を広げて立ちはだかった。
二匹の牙は、僕の両肩に深く突き刺さる。そのまま肩の肉を抉り取られるのだろうと、激しい痛みに固く目を閉じた瞬間、両肩にのしかかる二匹の重さが消えた。
「ルカっ!なんて無茶すんだよっ!」
シロウを投げ飛ばしたらしいリツが、僕の傍に来て、血で濡れた肩を長い舌で舐めた。
僕の両肩は、痛みを通り越して燃えるように熱い。
「こんなの…平気だ…。リツの方が、ひどい…よ…」
「俺はどうなってもいいんだっ。ルカは傷ついちゃダメだっ!ごめん…ルカ。俺の…俺の大事なルカなのに…っ、守ってやれなかったっ…」
「また…、ふふ…大事な、って…なんだよ…」
「俺はっ…」
「ルカ様」
リツを押し退けて、二匹を弾き飛ばしたロウが、月光に鉄色の身体を光らせながら、僕の前に来て頬をペロリと舐めた。
「無茶なさいましたね。かなりひどい傷です。早く帰って俺が治します。白蘭のおまえら、これ以上ルカ様を傷つけるなら、俺に殺される覚悟をしろ。俺は一切容赦はしない。それと赤築。ルカ様を守ろうとしたことは感謝する。が、そもそもは、おまえがルカ様につきまとうから起きたことではないのか?ルカ様のこの傷は、おまえのせいでもある。二度と、ルカ様に近寄るな」
真っすぐに首を伸ばして順番に睨みつけ、その青い瞳に怒りの炎をたゆらせて、凍るような冷たい声で、ロウが言い放った。
再び僕に向き直り、前足を曲げて僕のシャツの襟を咥えて、自身の背中に放り投げる。僕は、僕の好きな柔らかい毛並みに頬を擦り寄せると、強く抱きついた。
「ルカ様、しっかりと掴まっていて下さい。少し、急ぎます」
「ん…わかった」
ロウが立ち上がると、「あ…」と小さく声が聞こえた。
視線を後ろに向けると、人型に戻ったリツが、泣きそうな顔をして僕に向かって手を伸ばしている。
僕は、すぐに目を逸らしたけど、リツの顔が頭に焼きついて、ずっと離れなかった。
お互いに噛みつきながら、絡まり合ってゴロゴロと転がる赤と白の狼を見る。
ーーリツとシロウの力は、互角に見える。だけど、シロウには二人の仲間がいる。絶対的にリツの方が分が悪いじゃないか。これ以上傷が増えないうちに逃げてしまえばいいのに…。やっぱり、リツはバカだ。
なんの力も持たない自分が不甲斐なくて、僕は俯いて唇を噛みしめた。その時、背後で二匹の獣が動く気配を感じた。
ーーなぜそうしたのか、後になって何度考えてもわからない。頭で考えるよりも早く、身体が勝手に動いてしまったんだ。
僕は、リツに向かって大きく口を開く二匹の前に、両手を広げて立ちはだかった。
二匹の牙は、僕の両肩に深く突き刺さる。そのまま肩の肉を抉り取られるのだろうと、激しい痛みに固く目を閉じた瞬間、両肩にのしかかる二匹の重さが消えた。
「ルカっ!なんて無茶すんだよっ!」
シロウを投げ飛ばしたらしいリツが、僕の傍に来て、血で濡れた肩を長い舌で舐めた。
僕の両肩は、痛みを通り越して燃えるように熱い。
「こんなの…平気だ…。リツの方が、ひどい…よ…」
「俺はどうなってもいいんだっ。ルカは傷ついちゃダメだっ!ごめん…ルカ。俺の…俺の大事なルカなのに…っ、守ってやれなかったっ…」
「また…、ふふ…大事な、って…なんだよ…」
「俺はっ…」
「ルカ様」
リツを押し退けて、二匹を弾き飛ばしたロウが、月光に鉄色の身体を光らせながら、僕の前に来て頬をペロリと舐めた。
「無茶なさいましたね。かなりひどい傷です。早く帰って俺が治します。白蘭のおまえら、これ以上ルカ様を傷つけるなら、俺に殺される覚悟をしろ。俺は一切容赦はしない。それと赤築。ルカ様を守ろうとしたことは感謝する。が、そもそもは、おまえがルカ様につきまとうから起きたことではないのか?ルカ様のこの傷は、おまえのせいでもある。二度と、ルカ様に近寄るな」
真っすぐに首を伸ばして順番に睨みつけ、その青い瞳に怒りの炎をたゆらせて、凍るような冷たい声で、ロウが言い放った。
再び僕に向き直り、前足を曲げて僕のシャツの襟を咥えて、自身の背中に放り投げる。僕は、僕の好きな柔らかい毛並みに頬を擦り寄せると、強く抱きついた。
「ルカ様、しっかりと掴まっていて下さい。少し、急ぎます」
「ん…わかった」
ロウが立ち上がると、「あ…」と小さく声が聞こえた。
視線を後ろに向けると、人型に戻ったリツが、泣きそうな顔をして僕に向かって手を伸ばしている。
僕は、すぐに目を逸らしたけど、リツの顔が頭に焼きついて、ずっと離れなかった。
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