14 / 95
2
しおりを挟む
肩から全身へとゾクリとした痺れが広がり、僕の口から高い声が漏れた。
ロウの頭を押すけど離してくれず、ジワジワと痛みを感じ始めた頃に、ようやくロウの顔が離れた。
僕の肩を見ると、ロウの歯型がしっかりとついている。僕は、ロウを睨んで文句を言った。
「何をしてるの?バカなの?」
「ルカ様の肌に、俺以外の奴が跡をつけるなど許さない。ほら、ご覧なさい。もうそこには、俺がつけた跡の方が大きい。それを見るたびに、俺を思い出して下さい」
「は?意味わかんない。どうせ噛むなら、白蘭の奴らがつけた傷を治さなきゃよかったのに…っ」
「だから俺は…っ。いや、なんでもない…。ルカ様、後で念の為、薬を塗ります。それと明日はちょうど休みです。ゆっくり養生して下さい。家から出てはだめですよ」
「どうせロウが見張ってるんだろ?…勝手にすればいい」
僕が文句を言いながら顔を背けると、ロウが僕を抱き上げて風呂場を出た。
ロウに着替えさせてもらって、僕の部屋に連れて行かれた。僕をベッドに置いて部屋から出て行こうとするロウに、声をかける。
「ロウ、肩の傷はロウが治してくれたし、まだ眠くない。リビングに行きたい」
「傷が治ったとはいえ、疲れたでしょう?すぐに食事を持って来ますから、安静にしてて下さい」
「嫌だ。まだ寝たくない」
「ふっ、あなたは私にだけは我が儘を言う。仕方ないですね。でも、ソファーが汚れてるので拭かないといけません。綺麗にして来ますので、少し待っていて下さい」
「わかった。終わったら迎えに来て」
「はい」
なぜかとても嬉しそうに笑って、ロウは部屋を出て行った。
ーーロウは、僕が無茶を言う時ほど、嬉しそうにする。もしかしてマゾなのかな…。
やっぱりロウは変な奴だ、と横向きに寝転んでいた僕は、ゴロリと仰向けになった。
白い天井を見つめて、もう一人の変な奴のことを考える。
ーーリツも変な奴だ。僕は青蓮でリツは赤築だよ?それに、まだ知り合って数ヶ月だし、僕はリツに冷たい態度しか取ってない。なのに、俺の大事な…って。リツは、今まで僕の周りにいた人狼とは全然違う反応をするから、正直困る…。
目を閉じて、燃えるような赤毛の狼の姿を思い浮かべる。「すごく綺麗…」と呟いたその時、ドアが開いてロウが戻って来た。
無言で僕を抱き上げて部屋を出る。リビングまで運ばれながら、『自分で歩くと言ってもロウは聞かない』と小さく息を吐き、大人しくロウの胸に頭をつけた。
綺麗に拭かれたソファーに降ろされて、本を手渡される。首を傾げてロウを見ると、僕の頬を撫でて微笑んだ。
「それを読んで待っていて下さい。すぐに食事を用意します」
「うん…」
僕は持たされた本に視線を落とす。そんな僕にクスリと笑って、ロウがキッチンに入って行くのをぼんやりと眺めた。
ーーこれ…ロウの本じゃん。僕はこんなの読まないし…。
再び本に視線を落として、パラパラとめくる。ロウが好んでよく読んでいる純愛物。一人の人だけを永遠に思い続ける話。
ーー見た目はあんなに男らしいのに、中身はロマンチックで乙女…。
僕はなんだか可笑しくなって、知らず知らずのうちに声を出して笑っていた。
ロウの頭を押すけど離してくれず、ジワジワと痛みを感じ始めた頃に、ようやくロウの顔が離れた。
僕の肩を見ると、ロウの歯型がしっかりとついている。僕は、ロウを睨んで文句を言った。
「何をしてるの?バカなの?」
「ルカ様の肌に、俺以外の奴が跡をつけるなど許さない。ほら、ご覧なさい。もうそこには、俺がつけた跡の方が大きい。それを見るたびに、俺を思い出して下さい」
「は?意味わかんない。どうせ噛むなら、白蘭の奴らがつけた傷を治さなきゃよかったのに…っ」
「だから俺は…っ。いや、なんでもない…。ルカ様、後で念の為、薬を塗ります。それと明日はちょうど休みです。ゆっくり養生して下さい。家から出てはだめですよ」
「どうせロウが見張ってるんだろ?…勝手にすればいい」
僕が文句を言いながら顔を背けると、ロウが僕を抱き上げて風呂場を出た。
ロウに着替えさせてもらって、僕の部屋に連れて行かれた。僕をベッドに置いて部屋から出て行こうとするロウに、声をかける。
「ロウ、肩の傷はロウが治してくれたし、まだ眠くない。リビングに行きたい」
「傷が治ったとはいえ、疲れたでしょう?すぐに食事を持って来ますから、安静にしてて下さい」
「嫌だ。まだ寝たくない」
「ふっ、あなたは私にだけは我が儘を言う。仕方ないですね。でも、ソファーが汚れてるので拭かないといけません。綺麗にして来ますので、少し待っていて下さい」
「わかった。終わったら迎えに来て」
「はい」
なぜかとても嬉しそうに笑って、ロウは部屋を出て行った。
ーーロウは、僕が無茶を言う時ほど、嬉しそうにする。もしかしてマゾなのかな…。
やっぱりロウは変な奴だ、と横向きに寝転んでいた僕は、ゴロリと仰向けになった。
白い天井を見つめて、もう一人の変な奴のことを考える。
ーーリツも変な奴だ。僕は青蓮でリツは赤築だよ?それに、まだ知り合って数ヶ月だし、僕はリツに冷たい態度しか取ってない。なのに、俺の大事な…って。リツは、今まで僕の周りにいた人狼とは全然違う反応をするから、正直困る…。
目を閉じて、燃えるような赤毛の狼の姿を思い浮かべる。「すごく綺麗…」と呟いたその時、ドアが開いてロウが戻って来た。
無言で僕を抱き上げて部屋を出る。リビングまで運ばれながら、『自分で歩くと言ってもロウは聞かない』と小さく息を吐き、大人しくロウの胸に頭をつけた。
綺麗に拭かれたソファーに降ろされて、本を手渡される。首を傾げてロウを見ると、僕の頬を撫でて微笑んだ。
「それを読んで待っていて下さい。すぐに食事を用意します」
「うん…」
僕は持たされた本に視線を落とす。そんな僕にクスリと笑って、ロウがキッチンに入って行くのをぼんやりと眺めた。
ーーこれ…ロウの本じゃん。僕はこんなの読まないし…。
再び本に視線を落として、パラパラとめくる。ロウが好んでよく読んでいる純愛物。一人の人だけを永遠に思い続ける話。
ーー見た目はあんなに男らしいのに、中身はロマンチックで乙女…。
僕はなんだか可笑しくなって、知らず知らずのうちに声を出して笑っていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
【完結】抱っこからはじまる恋
* ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。
ふたりの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります。
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
BLoveさまのコンテストに応募しているお話に、真紀ちゃん(攻)視点を追加して、倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
バイト先に元カレがいるんだが、どうすりゃいい?
cheeery
BL
サークルに一人暮らしと、完璧なキャンパスライフが始まった俺……広瀬 陽(ひろせ あき)
ひとつ問題があるとすれば金欠であるということだけ。
「そうだ、バイトをしよう!」
一人暮らしをしている近くのカフェでバイトをすることが決まり、初めてのバイトの日。
教育係として現れたのは……なんと高二の冬に俺を振った元カレ、三上 隼人(みかみ はやと)だった!
なんで元カレがここにいるんだよ!
俺の気持ちを弄んでフッた最低な元カレだったのに……。
「あんまり隙見せない方がいいよ。遠慮なくつけこむから」
「ねぇ、今どっちにドキドキしてる?」
なんか、俺……ずっと心臓が落ち着かねぇ!
もう一度期待したら、また傷つく?
あの時、俺たちが別れた本当の理由は──?
「そろそろ我慢の限界かも」
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる