たゆたう青炎

明樹

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柔らかな青い時間

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朝には微熱だったのが、昼には三十八度まで上がっていた。
体温計を確認したロウの眉が、ピクリと上がる。僕の頬を撫でる手は優しいけど、声が怒っていた。


「やはりシャワーを浴びたのは無茶でしたね。それと赤築のせいで疲れたのです。あいつはルカ様を心配しておきながら、やることが裏目になっている。俺には、目障りでしかないし、不快でしかない。ですが、あいつと関わろうが関わらまいが、それはルカ様の自由です。まあ俺は、文句も言うし邪魔もしますがね」
「ロウ…、頭痛いし気持ち悪い…」
「…待っていて下さい」


ベッドに寝転ぶ僕の頭をクシャリと撫でて、ロウが部屋から出て行く。
ロウが何やらリツに対して言ってたけど、頭が痛くて聞いてなかった。でも、よっぽど嫌いなんだな、ということだけは、よくわかった。


ーーなんか…、ロウってば、娘に悪い虫がつかないようにピリピリしてる父親みたいじゃない?


ロウは、端正な顔で気品があり、動作も機敏でよく気がつく。それに頭も賢く腕も強い。きっと青蓮家の人々も、ロウを一目置いて見ていた筈だ。


でも、本当のロウは、過保護で我が儘で、乙女でロマンチックだ。
しかも、七つも下の他家の子に、きつい言葉を吐いて本気で怒る。たとえ嫌いだとしても、そんなに怒るものなの?しかも、先生と生徒の間柄なのに…。
ロウの涼しい顔の下は、冷静なように見えて、実は激しい。


こんなロウを知ってるのは、僕だけだ。
だって僕の前だけでしか、そんな姿を見せないのだから。
だから、ロウにとって僕は必要なのでしょう?


ロウが出て行ったドアを見つめて考えていたら、僕はいつの間にか眠ってしまっていた。





   首筋に触れる冷たい感触に気づいて、目が覚めた。
   ロウが、僕の身体を支えて、濡らしたタオルで上半身を拭いていた。拭かれた肌が、エアコンの冷気に触れて、スーッとして気持ちがいい。
   僕は、自力で身体を起こしてロウを見た。


  「…僕、汗かいてたの?」
  「はい、それはもうビッショリと。でも、汗をかいたおかげで少し楽になってませんか?」
  「うん…頭がスッキリしてる。ロウ、お腹空いた。オムライス食べたい」
  「ふっ、わかりました。リビングで待ちますか?」
  「うん、そうする」
  「では、とりあえず腕をあげて下さい」


   ロウに言われるままに、腕を上げる。ロウが、スポンと僕にTシャツを着せると、抱き上げて部屋を出た。
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