たゆたう青炎

明樹

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リビングのソファーに降ろされて、寝て待っているように言われる。でも昼からずっと寝ていたから、寝転ぶ方が疲れてしまう。
僕は背もたれに深く沈んで、テレビをぼんやりと眺めた。


ロウが作ってくれた小さめのオムライスを食べて、薬を飲んでソファーで寛いだ。
ご飯の後に素早くシャワーを済ませたロウが、僕の隣に座って僕を膝の上に乗せ、後ろから抱きしめた。


「ロウ…、これ暑い。離してよ…」
「駄目です。まだ熱っぽいルカ様が心配で、片時も離れられない。ルカ様…俺が触れるのは、嫌ですか?」
「…別に、いいけど…」
「なら、このままでいさせて下さい。あなたの匂いは、俺を落ち着かせてくれる」


僕だってそうだ、と心の中で呟く。


ロウは、僕が赤ちゃんの頃から常に傍にいて、抱っこや添い寝、オムツも替えたことがあるらしい。
だからなのか、事あるごとに僕に触れる。それを、僕も嫌だとは思わない。むしろ、ロウに触れられることは、とても安心するんだ。
時折りキスをしてくるのは、やり過ぎだとは思うのだけど、すごく必要とされてる気がして、愛されてる気がして、心の中では嬉しいと感じてしまっている。


ロウがいたから、誰も味方がいない青蓮家の中でも、僕は強く自分を保っていられた。
もし、ロウが離れて行ってしまったら、僕はどうなるのだろう。
そんなことが起こったらと思うだけで、とても怖い。


僕はブルリと身体を震わせて、ロウの胸に頭をつけた。
僕のお腹に回された腕に、力が入る。


「震えてる…。また、熱が上がってきたのではないですか?」
「わかんない…けど、…寒い…」


ロウが、僕の脇を抱えて反転させ、正面から強く抱きしめた。


「ほら…、こうして密着していれば温かい。大丈夫です。俺が、ルカ様を苦しめるモノを、全て吸い取ってあげます」
「また変なこと言ってる…。ふふ…、どうやるの?」
「あなたが聞いたのですよ?…こうするのです…」
「…あ」


ロウの長い指が、僕の顎をすくって上に向ける。深い青の瞳に映る自分の顔を見つめていると、唇に、少し冷たいロウの唇が触れた。優しく数回食んで、ペロリと舐めて離れていく。
ロウの瞳の中の僕を見つめたまま、僕は小さく声を漏らした。


「ん…っ。吸い取っ、た…?」


僕の呟きに、ロウは目を細めて僕の頬をスルリと撫でる。僕の下唇を親指でなぞりながら、小さく苦笑を漏らした。


「あなたの下僕を、虐めないで下さい。俺はこうやって、あなたを腕の中に囲えるだけで、充分満たされている。これ以上望むことは、怖いのです。…ルカ様の優しさに甘えてしまいました。さあ、もうお休み下さい。そして、早く元気な姿を見せて下さい」
「ロウの言ってることは、よくわからないよ…。やっぱりロウは変だ…」


何だかはぐらかされた気がして、僕は唇を尖らせて、ロウの胸にペタリと頬をつけた。
トクトクという規則正しい心音を聞いているうちに、瞼が重くなってくる。僕の意識が薄れていく中で、頭上から、小さく「愛してる」と言う、ロウの優しい声が聞こえた気がした。
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