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黒い影
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学校の玄関に入って靴を履き替えていると、リツに捕まってしまった。
「おはよう、ルカっ。よかったぁ、元気になって。俺、心配で心配で、ちっとも眠れなかったんだ…」
そう言うと僕の鞄を奪い、暑苦しいくらいに密着して隣を歩く。『ああ…やっぱりこいつは面倒な奴だ』と、僕は渋い顔をしてリツを見上げた。
眉尻を下げて、僕を覗き込むリツの顔は、目が充血して赤い目がより赤くなっている。
僕は、朝からしつこいリツに苛立っていた筈なのに、その情けない顔に、思わず吹き出してしまった。
「ふふっ、リツ、目がすごいことになってる。充血し過ぎじゃない?」
「ルカ…」
僕が笑いながらリツを見ると、リツの顔がプルプルと震え出した。
「あ…ごめん。僕のせいで、眠れなかったんだよね。なのに、笑ってごめん…」
さすがに笑ったのは悪かったかと、少しバツが悪くなって素直に謝った。するとリツが、両手に鞄を持ったまま、いきなり僕に抱きついてきた。
「は?なにするの?バカなの?」
「ルカ~っ!俺っ、俺っ、ルカのそんな顔、初めて見たっ。すっげー可愛いっ。ルカが笑ってくれるなら、俺、どんな変な顔になってもいいっ」
「…バカなこと言ってないで、離して」
僕は、力一杯リツの胸を押して身体を離す。
だらしない顔をしたリツを睨むと、僕はリツを置いて、早歩きで教室に入って行った。
慌てて僕を追いかけて来て、前の席に座ったリツと僕は、皆んなの注目の的だ。廊下でリツが、派手に僕に抱きついたせいだ。
目立ちたくないのに…と、苛立ちを露わに溜め息を吐く。
身体ごと後ろを向いて、まだニヤける顔をしたリツを無視するように、僕は窓から空を見上げた。
ーーはあ…、もう絶対にリツに気を許しちゃダメだ。僕は静かに過ごしたいだけなのに、どんどんかき乱されてしまう。なんだか朝から疲れてしまった。ロウもいないし今日は早く帰ろう…。
僕はもう一度大きく息を吐くと、頬杖をついて目を閉じた。
帰りのHRが終わると、鞄を持ってすぐに教室の外へ向かう。でも、廊下に出た所でリツに追いつかれてしまった。
「ルカ、今日は先生と帰る?」
「うん。ロウが心配するから一緒じゃないとダメなんだ」
「そっか…。また一緒に帰ろうな。じゃあな」
明るく笑って手を振るリツに、小さく頷いて、僕は玄関に向かった。
リツに見つからないように、門を出て急いで歩く。黙々と歩いたから、かなり早く駅に着いた。駅のロータリーに添って歩いていると、背後から僕を呼ぶ声が聞こえた気がして振り向く。
だけどそこには誰もいなくて、首を傾げながら前を向いた瞬間、人にぶつかって尻餅をついた。
「いた…っ…」
「ああ、すまない。大丈夫か?」
低い声に顔を上げると、鋭い目つきの背の高い男の人が、僕に手を差し出していた。
「おはよう、ルカっ。よかったぁ、元気になって。俺、心配で心配で、ちっとも眠れなかったんだ…」
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僕は、朝からしつこいリツに苛立っていた筈なのに、その情けない顔に、思わず吹き出してしまった。
「ふふっ、リツ、目がすごいことになってる。充血し過ぎじゃない?」
「ルカ…」
僕が笑いながらリツを見ると、リツの顔がプルプルと震え出した。
「あ…ごめん。僕のせいで、眠れなかったんだよね。なのに、笑ってごめん…」
さすがに笑ったのは悪かったかと、少しバツが悪くなって素直に謝った。するとリツが、両手に鞄を持ったまま、いきなり僕に抱きついてきた。
「は?なにするの?バカなの?」
「ルカ~っ!俺っ、俺っ、ルカのそんな顔、初めて見たっ。すっげー可愛いっ。ルカが笑ってくれるなら、俺、どんな変な顔になってもいいっ」
「…バカなこと言ってないで、離して」
僕は、力一杯リツの胸を押して身体を離す。
だらしない顔をしたリツを睨むと、僕はリツを置いて、早歩きで教室に入って行った。
慌てて僕を追いかけて来て、前の席に座ったリツと僕は、皆んなの注目の的だ。廊下でリツが、派手に僕に抱きついたせいだ。
目立ちたくないのに…と、苛立ちを露わに溜め息を吐く。
身体ごと後ろを向いて、まだニヤける顔をしたリツを無視するように、僕は窓から空を見上げた。
ーーはあ…、もう絶対にリツに気を許しちゃダメだ。僕は静かに過ごしたいだけなのに、どんどんかき乱されてしまう。なんだか朝から疲れてしまった。ロウもいないし今日は早く帰ろう…。
僕はもう一度大きく息を吐くと、頬杖をついて目を閉じた。
帰りのHRが終わると、鞄を持ってすぐに教室の外へ向かう。でも、廊下に出た所でリツに追いつかれてしまった。
「ルカ、今日は先生と帰る?」
「うん。ロウが心配するから一緒じゃないとダメなんだ」
「そっか…。また一緒に帰ろうな。じゃあな」
明るく笑って手を振るリツに、小さく頷いて、僕は玄関に向かった。
リツに見つからないように、門を出て急いで歩く。黙々と歩いたから、かなり早く駅に着いた。駅のロータリーに添って歩いていると、背後から僕を呼ぶ声が聞こえた気がして振り向く。
だけどそこには誰もいなくて、首を傾げながら前を向いた瞬間、人にぶつかって尻餅をついた。
「いた…っ…」
「ああ、すまない。大丈夫か?」
低い声に顔を上げると、鋭い目つきの背の高い男の人が、僕に手を差し出していた。
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