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可愛い犬や猫に舐められるのならいいけど、自然界にいる狼よりも倍は大きい身体の人狼に舐められるのは、嬉しくない。
僕は、リュックに入れてあったウェットティッシュを取り出すと、リツが舐めた頬を拭いた。
人型に戻ったリツがそれを見て、ひどくショックを受けて落ち込んでいる。
僕は小さく息を吐いて、リツに問う。
「リツだって、僕にベロベロと顔を舐められたら嫌じゃない?」
「おっ、俺は、ルカになら全身舐められてもいいっ!」
「はあ?何言ってるの?バカなの?僕は嫌だよ」
「じ、じゃあ…青砥先生…だったら?」
「は?」
両手を握りしめて窺うように僕を見ながら、リツが小さく呟いた。
ーーロウだったら?小さい頃から怪我をする度に、全身を舐められてきた。ロウの熱い舌の感触は、すぐに思い出せる程に…。ロウだったら…。
僕は目を閉じて、僕の身体に出来た傷を癒すロウを思い出す。
ーーああ…そうだ。ロウに、嫌だなんて思ったことは一度だってない。ロウが這わす舌は心地よくて、僕はいつもウットリとしていたんだ。
僕はゆっくりと目を開けると、リツを見て言った。
「誰にされたって、嫌だよ…」
「そっか」
そう呟いて、リツがホッとした表情をした。
僕はすぐに視線を逸らして、近くにあった木の根元に座る。そのまま膝を抱えて顔を伏せ、「ごめん」と口だけを動かした。
ーーごめん、リツ。嘘を言って。でも、本当のことを言うと、リツは傷つくでしょ…?リツの傷ついた顔は見たくないんだ。いつも一生懸命僕のことを思ってくれているのに、ごめんね…。
隣にリツが座って、僕の手に何かを握らせる。
僕の髪を撫でて、「ルカ…」と静かに名前を呼んだ。
「今日、顔色悪かったもんな。大丈夫?気持ち悪くなってない?俺は、家に帰った時にたらふく食ってきたんだけど、もしかしてルカは何も食べてないんだろ?とりあえず、それ食べて」
顔を上げて、手の中の物を見ると、個包装されたチョコがあった。
首を傾げてリツを見る。リツは笑って、僕の手の上のチョコを摘むと、袋から出して僕の口の中に入れた。
口の中で溶けるチョコの優しい甘さにホッとする。自然と緩んだ僕の頬に触れて、リツが言った。
「実は、今から行こうと思ってる所は、山の中にある赤築家所有の別荘なんだ。ルカを野宿なんてさせられないから、最初からそこに連れて行こうと決めてた。でも、一応聞いてみて、ルカが山に行きたいって言ってくれてホッとしたよ。そこは、ここ数年、誰も行ってないから絶対にバレないし。あっ、誰も行ってなくても汚くないから大丈夫!定期的に近所に住む管理を任せてる人が、掃除をしてくれてるから」
「わかった…けど、その管理の人からバレない?」
「んー、大丈夫だと思う。いつも月初めに掃除をするから、今月はもう来ない筈だよ」
「鍵は?リツ、持ってるの?」
「ん。親父の書斎から盗ってきた」
「えっ。それってすぐバレちゃうんじゃ…」
「いや、メチャクチャ沢山の鍵が置いてあるから、一つぐらい無くなってもそうそうバレねぇよ。ルカは、何も心配すんなっ」
「……」
リツは自信満々に言うけど、僕は不安しかない。
まあでもいいか…。見つかったらリツには帰ってもらえばいい。ほんの少しの間、見つからなければいいことだ。
そう思って、さっきリツにもらったスポーツドリンクをリュックから出して、ゴクリと飲んだ。
僕は、リュックに入れてあったウェットティッシュを取り出すと、リツが舐めた頬を拭いた。
人型に戻ったリツがそれを見て、ひどくショックを受けて落ち込んでいる。
僕は小さく息を吐いて、リツに問う。
「リツだって、僕にベロベロと顔を舐められたら嫌じゃない?」
「おっ、俺は、ルカになら全身舐められてもいいっ!」
「はあ?何言ってるの?バカなの?僕は嫌だよ」
「じ、じゃあ…青砥先生…だったら?」
「は?」
両手を握りしめて窺うように僕を見ながら、リツが小さく呟いた。
ーーロウだったら?小さい頃から怪我をする度に、全身を舐められてきた。ロウの熱い舌の感触は、すぐに思い出せる程に…。ロウだったら…。
僕は目を閉じて、僕の身体に出来た傷を癒すロウを思い出す。
ーーああ…そうだ。ロウに、嫌だなんて思ったことは一度だってない。ロウが這わす舌は心地よくて、僕はいつもウットリとしていたんだ。
僕はゆっくりと目を開けると、リツを見て言った。
「誰にされたって、嫌だよ…」
「そっか」
そう呟いて、リツがホッとした表情をした。
僕はすぐに視線を逸らして、近くにあった木の根元に座る。そのまま膝を抱えて顔を伏せ、「ごめん」と口だけを動かした。
ーーごめん、リツ。嘘を言って。でも、本当のことを言うと、リツは傷つくでしょ…?リツの傷ついた顔は見たくないんだ。いつも一生懸命僕のことを思ってくれているのに、ごめんね…。
隣にリツが座って、僕の手に何かを握らせる。
僕の髪を撫でて、「ルカ…」と静かに名前を呼んだ。
「今日、顔色悪かったもんな。大丈夫?気持ち悪くなってない?俺は、家に帰った時にたらふく食ってきたんだけど、もしかしてルカは何も食べてないんだろ?とりあえず、それ食べて」
顔を上げて、手の中の物を見ると、個包装されたチョコがあった。
首を傾げてリツを見る。リツは笑って、僕の手の上のチョコを摘むと、袋から出して僕の口の中に入れた。
口の中で溶けるチョコの優しい甘さにホッとする。自然と緩んだ僕の頬に触れて、リツが言った。
「実は、今から行こうと思ってる所は、山の中にある赤築家所有の別荘なんだ。ルカを野宿なんてさせられないから、最初からそこに連れて行こうと決めてた。でも、一応聞いてみて、ルカが山に行きたいって言ってくれてホッとしたよ。そこは、ここ数年、誰も行ってないから絶対にバレないし。あっ、誰も行ってなくても汚くないから大丈夫!定期的に近所に住む管理を任せてる人が、掃除をしてくれてるから」
「わかった…けど、その管理の人からバレない?」
「んー、大丈夫だと思う。いつも月初めに掃除をするから、今月はもう来ない筈だよ」
「鍵は?リツ、持ってるの?」
「ん。親父の書斎から盗ってきた」
「えっ。それってすぐバレちゃうんじゃ…」
「いや、メチャクチャ沢山の鍵が置いてあるから、一つぐらい無くなってもそうそうバレねぇよ。ルカは、何も心配すんなっ」
「……」
リツは自信満々に言うけど、僕は不安しかない。
まあでもいいか…。見つかったらリツには帰ってもらえばいい。ほんの少しの間、見つからなければいいことだ。
そう思って、さっきリツにもらったスポーツドリンクをリュックから出して、ゴクリと飲んだ。
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