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ーールキ?
そこには、二人を怯えた目で見上げるルキがいた。
「おまえ、どういうつもりだ?ふざけたことを言うと容赦はしない」
「そうだっ!何が目的か知らないけど、俺達を舐めるなよっ」
二人に責められているルキと、目が合った気がした。
でもルキは、すぐに泣きそうな顔で二人を見上げて、何かを言っている。その声があまりにも小さくて、僕には何を言ってるのかが、聞こえない。
ふいに、二人がいる方向から風が吹き付けてきて、僕は軽く目を閉じて顔を背けた。
少しして目を開けると、ロウ、リツ、ルキの三人が、狼の姿に変わっていた。
「俺は容赦はしないと言ったぞ。覚悟しろ」
「先生っ、こいつの姿に惑わされんなよっ。意外と出来るぜ…っ」
「黙れ赤築。おまえに言われなくともわかっている」
「……っ」
怒りを滲ませた声を上げる二人に紛れて、ルキが何かを言ってるけど、やはり聞き取れない。
なぜ、ロウとルキがここにいるのか。なぜ、ロウとリツが、ルキを襲う臨戦態勢になっているのか。訳が分からなくて固まっている僕の目の前で、いきなりロウがルキに飛びかかり、首元をガブリと噛んだ。
ロウに続いてリツもルキの背中に飛びつく。
ルキは苦しげな呻き声を上げながら、また僕に視線を向けた。
ーー何が起こってるの…?ロウはルキに仕えてる筈じゃ…。なんで僕の愛する人が、僕の大事な弟を殺そうとするの?僕の一番の友達が、弟を傷つけるの?なんで…。
「…やっ、やめろっ!」
僕は、ドクドクと激しく脈打つ胸を強く押さえて、二人を睨んだ。
僕の声にルキを離して、弾かれたように二人が振り向く。
驚いて一瞬固まった後に、僕に駆け寄ろうとするリツを、僕は厳しい声で制した。
「来ないでっ!…ねぇ、ロウにリツ。何をしてるの?僕の大事な弟に、何をしてたのっ」
「ち、違う…っ、ルカっ」
「ルカ様…、ご無事で」
僕は二人を睨みつけたまま、ルキの所へ行こうと進む。
それを阻んで、ロウが、僕とルキの間に立ち塞がった。
「なに?退いてよ、ロウ」
「ルカ様、酷いことはされてませんか?あなたの元気な姿を見れて、本当に良かった…」
「僕のことはどうでもいい。ルキの手当てをするから退いて」
「は?そんなことをする必要はない。こいつに近づいてはなりません」
グルルと低く唸って、ロウがルキに向き直る。そして、座り込んでハッハッと短く呼吸を繰り返しているルキに、再び噛み付こうとした。
僕は咄嗟にロウの身体を押し退けて、ルキの上に被さる。
ロウの牙が僕の肩に触れる寸前で、ロウがピタリと動きを止めた。
「ルカ様、邪魔をするな…」
「ルキ、大丈夫?すぐに手当てをしてあげる」
「僕、この二人に殺される…。怖いよ、助けて…っ」
「ルキ…」
「ルカ様っ、ダメですっ!そいつから離れろっ」
いつの間にか、すぐ傍に来ていたロウとリツが、揃って身体を低く身構え、牙を剥き出してルキを睨んでいる。
「ルカ様、あなたが離れないのなら、無理矢理に離すまで。失礼を…」
ロウが僕の身体を強い力で押し退けて、リツが大きな前足でルキの頭を踏みつける。
あまりにも非道な仕打ちを繰り返すロウとリツの姿に、僕の中の何かが限界まで膨らんで、大きな音を立てて弾けた。
そこには、二人を怯えた目で見上げるルキがいた。
「おまえ、どういうつもりだ?ふざけたことを言うと容赦はしない」
「そうだっ!何が目的か知らないけど、俺達を舐めるなよっ」
二人に責められているルキと、目が合った気がした。
でもルキは、すぐに泣きそうな顔で二人を見上げて、何かを言っている。その声があまりにも小さくて、僕には何を言ってるのかが、聞こえない。
ふいに、二人がいる方向から風が吹き付けてきて、僕は軽く目を閉じて顔を背けた。
少しして目を開けると、ロウ、リツ、ルキの三人が、狼の姿に変わっていた。
「俺は容赦はしないと言ったぞ。覚悟しろ」
「先生っ、こいつの姿に惑わされんなよっ。意外と出来るぜ…っ」
「黙れ赤築。おまえに言われなくともわかっている」
「……っ」
怒りを滲ませた声を上げる二人に紛れて、ルキが何かを言ってるけど、やはり聞き取れない。
なぜ、ロウとルキがここにいるのか。なぜ、ロウとリツが、ルキを襲う臨戦態勢になっているのか。訳が分からなくて固まっている僕の目の前で、いきなりロウがルキに飛びかかり、首元をガブリと噛んだ。
ロウに続いてリツもルキの背中に飛びつく。
ルキは苦しげな呻き声を上げながら、また僕に視線を向けた。
ーー何が起こってるの…?ロウはルキに仕えてる筈じゃ…。なんで僕の愛する人が、僕の大事な弟を殺そうとするの?僕の一番の友達が、弟を傷つけるの?なんで…。
「…やっ、やめろっ!」
僕は、ドクドクと激しく脈打つ胸を強く押さえて、二人を睨んだ。
僕の声にルキを離して、弾かれたように二人が振り向く。
驚いて一瞬固まった後に、僕に駆け寄ろうとするリツを、僕は厳しい声で制した。
「来ないでっ!…ねぇ、ロウにリツ。何をしてるの?僕の大事な弟に、何をしてたのっ」
「ち、違う…っ、ルカっ」
「ルカ様…、ご無事で」
僕は二人を睨みつけたまま、ルキの所へ行こうと進む。
それを阻んで、ロウが、僕とルキの間に立ち塞がった。
「なに?退いてよ、ロウ」
「ルカ様、酷いことはされてませんか?あなたの元気な姿を見れて、本当に良かった…」
「僕のことはどうでもいい。ルキの手当てをするから退いて」
「は?そんなことをする必要はない。こいつに近づいてはなりません」
グルルと低く唸って、ロウがルキに向き直る。そして、座り込んでハッハッと短く呼吸を繰り返しているルキに、再び噛み付こうとした。
僕は咄嗟にロウの身体を押し退けて、ルキの上に被さる。
ロウの牙が僕の肩に触れる寸前で、ロウがピタリと動きを止めた。
「ルカ様、邪魔をするな…」
「ルキ、大丈夫?すぐに手当てをしてあげる」
「僕、この二人に殺される…。怖いよ、助けて…っ」
「ルキ…」
「ルカ様っ、ダメですっ!そいつから離れろっ」
いつの間にか、すぐ傍に来ていたロウとリツが、揃って身体を低く身構え、牙を剥き出してルキを睨んでいる。
「ルカ様、あなたが離れないのなら、無理矢理に離すまで。失礼を…」
ロウが僕の身体を強い力で押し退けて、リツが大きな前足でルキの頭を踏みつける。
あまりにも非道な仕打ちを繰り返すロウとリツの姿に、僕の中の何かが限界まで膨らんで、大きな音を立てて弾けた。
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