たゆたう青炎

明樹

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青砥 ロウの至宝

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俺の、何よりも大切なルカ様。
俺から離れるなと何度も願ったのに。
なぜ、あんな奴に着いて行った?
俺を助ける為に取引などして欲しくなかった。
あなたが俺の前からいなくなることが、俺にとってどんなに辛いことかを、あなたは少しもわかっていない。
ルカ様、今、どこで何をしている?
早く、早く取り戻さなければーー。





ドアがノックされる音で、ふと目を覚ます。
ソファーに座って考え事をしていた最中に、眠ってしまったらしい。
起きていても眠っていても、俺の頭の中は、ルカ様のことしか考えていない。
軽く頭を振って立ち上がり、再度叩かれたドアに向かって歩き出した。


「…はい」


返事をしてドアを開ける。少し開いた隙間から、ルキ様が不安げな顔を覗かせた。


「ロウ…、今いい…?」
「いいですよ…。どうぞ」


おずおずと下を向いて、ルキ様が入って来る。入った所で立ち止まり、困った顔で見上げてくるルキ様の背中を押して、ソファーに座るように促した。


「何か、飲まれますか?」
 「いい…、いらない。ねぇロウ、ルカ兄さんの居場所、わかった?」
「いいえ…。黒条家は、ずっと身を潜めていた一族ですからね。どこを根城にしているのかが、全くわからない」
「兄さん、ひどいことされてないかな…?僕にもっと力が有れば、兄さんを助けられるのに…っ」


俺の隣で、まだ幼さの残る身体を震わすルキ様に、俺は柔らかく微笑んで、頭をそっと撫でる。


「ルキ様、黒条は、ルカ様を『大切な人狼』だと言った。だから、きっと大丈夫です。それに俺が必ず救い出します。あの方は、俺の大切な人です。俺の命よりも大切なのに、俺の命の為に、あの方を差し出すようなことをしてしまった。俺は、このことを一生後悔する…」
「ロウは悪くないよっ。気にしちゃダメっ。だって、兄さんがロウを守る為にしたことでしょ?僕…前にね、父さんの言葉を鵜呑みにして、ロウが兄さんから離れるって兄さんに言っちゃったんだ…。あの時の兄さんの悲しい顔が忘れられない。例えウソでも、ロウは兄さんから絶対離れないよ、って言えば良かった。実際は、僕の勘違いだったし…。そんなにも兄さんにとって、ロウが大事だって知らなかったから…。ロウも、ごめんね…」
「ルキ様、あなたもルカ様に似てお優しい方だ。大丈夫ですよ。ルカ様は、あなたをとても大事に思ってるし、愛してますよ」
「…ん、知ってる。だって兄さん、いつも優しいもん。兄さん…早く帰って来てよぅ…」


グズグズと鼻を鳴らして、ルキ様が俺の腕にしがみ付く。
ルカ様より少し小さい背中を撫でながら、素直に涙を流せるルキ様を、羨ましく思った。



ーールカ様、一体、あなたの身に何が起こっているのですか?あなたが間違った道を進まないように、早くこの腕に取り戻さなければーー。
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