77 / 95
4
しおりを挟む
「その顔…、ルカの弟にそっくりじゃんかっ」
「でしょ?」
大げさに驚く赤築を横目に、俺は冷静に少年を見る。
確かに、ルキ様によく似ている。パッと見では、別人だとは気付かないだろう。
だけど落ち着いて見ると、髪も瞳もこの少年は真っ黒だ。ルキ様はルカ様と似て、光が当たると青く輝く美しい髪色をしている。顔だって、ルキ様の方が整っている。
よく知る俺だからこそ区別が付くが、赤築にはわからないのかもしれない。
俺は少年を見て、ニヤリと口角を上げた。
「中々に似ているじゃないか。たけどな、おまえにはルキ様に備わっている品格がない。それにルキ様の方が、愛らしい顔をしているぞ」
「はあっ?あんたの目、腐ってんじゃないのっ?まあいいや。今からそんな口を聞けないようにしてやるから」
そう言うと、少年が俺に向かって、尖った爪を振りかざした。
振り上げられた腕を、素早く掴む。腕を掴んだ俺の手に体重をかけて、少年が、振り子のように身体を跳ねあげながら赤築に蹴りを入れた。
「うわぁっ!」
赤築が悲鳴を上げて、顔の前に出した両腕で少年の蹴りを受け止める。そこそこの威力があったようで、赤築が数歩、後ろへよろめいた。
俺は、少年を放り投げると後ろを振り返った。
「赤築、大丈夫か?」
「いってぇ!ガキのくせにやるじゃねぇかっ」
「おまえが油断し過ぎだ。こいつは敵だ。手を抜くな」
「わかってるよっ。しかしルカの弟に似てるというだけでもやり辛いのに、こんなガキに本気を出せねーしな…」
器用に足から着地していた少年が、せせら笑う。
「だーかーらぁ、僕を舐めるなって言ってんじゃん。あんた達をやるなんて、余裕だよ?」
「…やっぱ前言撤回。ルカの弟に似てやしねぇ。あの子はこんな馬鹿ヅラじゃないし、もっと可愛い。なんたってルカの弟だからなっ」
「確かに」
赤築の言葉に悔しそうにこちらを睨んでいた少年が、ふいに「今何時?」と聞いてきた。
「はあ?急に何だよ?…ちょっと待てよ。え…っと、八時前だ」
ブツブツと文句を言いながらも、赤築が腕に嵌めた時計を確認して、律儀に答える。
少年が「そろそろかな…」と言いながら、こちらに背を向けて、門の外に向かい出した。
咄嗟に俺は、少年の腕を掴む。
「おい、待て。まだルカ様の居場所を聞いていない」
「え~、もういいんじゃない?きっとその人狼だって、黒条にいる方が居心地がいいって。それに聞いたよ?すっごく綺麗な男の人なんだって?もしかしたらトウヤ様のお気に入りになってるかもね。そしたらもう、戻って来ないよ」
「は?誰だ、そいつは?」
俺は、自分でも驚く程の低く冷たい声を出した。
「でしょ?」
大げさに驚く赤築を横目に、俺は冷静に少年を見る。
確かに、ルキ様によく似ている。パッと見では、別人だとは気付かないだろう。
だけど落ち着いて見ると、髪も瞳もこの少年は真っ黒だ。ルキ様はルカ様と似て、光が当たると青く輝く美しい髪色をしている。顔だって、ルキ様の方が整っている。
よく知る俺だからこそ区別が付くが、赤築にはわからないのかもしれない。
俺は少年を見て、ニヤリと口角を上げた。
「中々に似ているじゃないか。たけどな、おまえにはルキ様に備わっている品格がない。それにルキ様の方が、愛らしい顔をしているぞ」
「はあっ?あんたの目、腐ってんじゃないのっ?まあいいや。今からそんな口を聞けないようにしてやるから」
そう言うと、少年が俺に向かって、尖った爪を振りかざした。
振り上げられた腕を、素早く掴む。腕を掴んだ俺の手に体重をかけて、少年が、振り子のように身体を跳ねあげながら赤築に蹴りを入れた。
「うわぁっ!」
赤築が悲鳴を上げて、顔の前に出した両腕で少年の蹴りを受け止める。そこそこの威力があったようで、赤築が数歩、後ろへよろめいた。
俺は、少年を放り投げると後ろを振り返った。
「赤築、大丈夫か?」
「いってぇ!ガキのくせにやるじゃねぇかっ」
「おまえが油断し過ぎだ。こいつは敵だ。手を抜くな」
「わかってるよっ。しかしルカの弟に似てるというだけでもやり辛いのに、こんなガキに本気を出せねーしな…」
器用に足から着地していた少年が、せせら笑う。
「だーかーらぁ、僕を舐めるなって言ってんじゃん。あんた達をやるなんて、余裕だよ?」
「…やっぱ前言撤回。ルカの弟に似てやしねぇ。あの子はこんな馬鹿ヅラじゃないし、もっと可愛い。なんたってルカの弟だからなっ」
「確かに」
赤築の言葉に悔しそうにこちらを睨んでいた少年が、ふいに「今何時?」と聞いてきた。
「はあ?急に何だよ?…ちょっと待てよ。え…っと、八時前だ」
ブツブツと文句を言いながらも、赤築が腕に嵌めた時計を確認して、律儀に答える。
少年が「そろそろかな…」と言いながら、こちらに背を向けて、門の外に向かい出した。
咄嗟に俺は、少年の腕を掴む。
「おい、待て。まだルカ様の居場所を聞いていない」
「え~、もういいんじゃない?きっとその人狼だって、黒条にいる方が居心地がいいって。それに聞いたよ?すっごく綺麗な男の人なんだって?もしかしたらトウヤ様のお気に入りになってるかもね。そしたらもう、戻って来ないよ」
「は?誰だ、そいつは?」
俺は、自分でも驚く程の低く冷たい声を出した。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
【完結】抱っこからはじまる恋
* ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。
ふたりの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります。
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
BLoveさまのコンテストに応募しているお話に、真紀ちゃん(攻)視点を追加して、倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
バイト先に元カレがいるんだが、どうすりゃいい?
cheeery
BL
サークルに一人暮らしと、完璧なキャンパスライフが始まった俺……広瀬 陽(ひろせ あき)
ひとつ問題があるとすれば金欠であるということだけ。
「そうだ、バイトをしよう!」
一人暮らしをしている近くのカフェでバイトをすることが決まり、初めてのバイトの日。
教育係として現れたのは……なんと高二の冬に俺を振った元カレ、三上 隼人(みかみ はやと)だった!
なんで元カレがここにいるんだよ!
俺の気持ちを弄んでフッた最低な元カレだったのに……。
「あんまり隙見せない方がいいよ。遠慮なくつけこむから」
「ねぇ、今どっちにドキドキしてる?」
なんか、俺……ずっと心臓が落ち着かねぇ!
もう一度期待したら、また傷つく?
あの時、俺たちが別れた本当の理由は──?
「そろそろ我慢の限界かも」
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる