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「ルキ様、そのお気持ちだけ頂きます。どうやら黒条は、攻撃的な一族なようだ。ルキ様が会ったという…コウタとかいう名の黒条の少年、彼は、俺と赤築を恐れもしないで攻撃してきた。身体の大きさの割に力もあった。もしもルキ様にまで何かあったら大変です。今度は、大人しく邸で待っていて下さい」
「ええっ!僕も戦えるよ?」
「わかっています。ですが今日、ルカ様は偽物のルキ様を庇ってあんなにも怒ったのです。もし、ルキ様に何かあったらとても悲しまれます。ルキ様も、ルカ様を悲しませるのは嫌でしょう?」
「…うん、嫌だ。わかった。家で待ってる。必ず、兄さんを取り返して来てね」
「もちろんです」
俺を見上げて笑う、ルキ様のまだ少し幼い笑顔に、沈んでいた気持ちが少しだけ浮上する。
ルカ様が誰の元にいるかはわかっているのだ。早く黒条の居場所を突き止めて、早くこの手にルカ様をーー。
再びルカ様が俺の前から消えて、五日程が過ぎていた。
あの次の日から黒条の根城となる場所を探しているのだが、見つけることが出来ない。
日に日に俺の中でイライラが募っていく。
不意に、ズボンのポケットに入れていたスマホが振動して、取り出した。画面をタップすると、赤築先生からメールが届いている。俺はメールを確認すると、ソファーでスヤスヤと眠るルキ様を起こさないように、そっとドアを開けて部屋を出た。
玄関へと向かいながら、メールの返信を打ち込む。再びポケットにスマホを入れて顔を上げたところで、前からルイ様が歩いて来ることに気づいた。
俺は廊下の端に避けて、ルイ様が通り過ぎるのを待つ。
軽く頭を下げて目を伏せていると、ルイ様の足が、俺の前で止まった。
「ロウ、ルキはどうしてる?」
「お疲れなのか、俺の部屋でお休みになっています」
「そうか。夜には、俺とサラは出掛ける。留守番を頼んだぞ」
「…はい」
ルキ様は、それだけ言うと、また歩き始めた。しかし、数歩進んだところで再び足を止めて、振り返らずに低く声を出した。
「…ところでルカはどうなった?まだ見つからないのか?」
「はい。ですが、必ず見つけます」
「ふん。青蓮家の恥になるようなことにならなければいいがな」
「…っ」
俺は反論しようと口を開きかけて、すぐに俯いて唇を噛み締める。
ルイ様は、ルカ様が黒条の一族の元にいることを知らない。特別な能力を持っていることも知らない。
俺が、敢えて話さなかったからだ。俺が話さないから、ルキ様も話していない。
話したところで、きっと異端者扱いは変わらないだろう。いや寧ろ、もっと腫れ物扱いをするかもしれない。
出来れば俺は、ルカ様の能力を人狼界に広めたくない。奇異な能力を持つルカ様を欲しがる一族が、黒条だけでなく他にも現れると思ったからだ。
だけど俺の願いも虚しく、ルカ様の噂は徐々に広がりつつある。噂がルイ様の耳に入っているのかどうかはわからないが、すぐに知れることだろう。だが、未だルイ様の口からその話が出てこないことから、もしかすると、青蓮家以外の一族の間で広がっているのかもしれない。
俺の、たった一つの大切なルカ様。人狼界であなたの噂が確信に変わる前に、早く俺の元へ戻って来いーー。
「ええっ!僕も戦えるよ?」
「わかっています。ですが今日、ルカ様は偽物のルキ様を庇ってあんなにも怒ったのです。もし、ルキ様に何かあったらとても悲しまれます。ルキ様も、ルカ様を悲しませるのは嫌でしょう?」
「…うん、嫌だ。わかった。家で待ってる。必ず、兄さんを取り返して来てね」
「もちろんです」
俺を見上げて笑う、ルキ様のまだ少し幼い笑顔に、沈んでいた気持ちが少しだけ浮上する。
ルカ様が誰の元にいるかはわかっているのだ。早く黒条の居場所を突き止めて、早くこの手にルカ様をーー。
再びルカ様が俺の前から消えて、五日程が過ぎていた。
あの次の日から黒条の根城となる場所を探しているのだが、見つけることが出来ない。
日に日に俺の中でイライラが募っていく。
不意に、ズボンのポケットに入れていたスマホが振動して、取り出した。画面をタップすると、赤築先生からメールが届いている。俺はメールを確認すると、ソファーでスヤスヤと眠るルキ様を起こさないように、そっとドアを開けて部屋を出た。
玄関へと向かいながら、メールの返信を打ち込む。再びポケットにスマホを入れて顔を上げたところで、前からルイ様が歩いて来ることに気づいた。
俺は廊下の端に避けて、ルイ様が通り過ぎるのを待つ。
軽く頭を下げて目を伏せていると、ルイ様の足が、俺の前で止まった。
「ロウ、ルキはどうしてる?」
「お疲れなのか、俺の部屋でお休みになっています」
「そうか。夜には、俺とサラは出掛ける。留守番を頼んだぞ」
「…はい」
ルキ様は、それだけ言うと、また歩き始めた。しかし、数歩進んだところで再び足を止めて、振り返らずに低く声を出した。
「…ところでルカはどうなった?まだ見つからないのか?」
「はい。ですが、必ず見つけます」
「ふん。青蓮家の恥になるようなことにならなければいいがな」
「…っ」
俺は反論しようと口を開きかけて、すぐに俯いて唇を噛み締める。
ルイ様は、ルカ様が黒条の一族の元にいることを知らない。特別な能力を持っていることも知らない。
俺が、敢えて話さなかったからだ。俺が話さないから、ルキ様も話していない。
話したところで、きっと異端者扱いは変わらないだろう。いや寧ろ、もっと腫れ物扱いをするかもしれない。
出来れば俺は、ルカ様の能力を人狼界に広めたくない。奇異な能力を持つルカ様を欲しがる一族が、黒条だけでなく他にも現れると思ったからだ。
だけど俺の願いも虚しく、ルカ様の噂は徐々に広がりつつある。噂がルイ様の耳に入っているのかどうかはわからないが、すぐに知れることだろう。だが、未だルイ様の口からその話が出てこないことから、もしかすると、青蓮家以外の一族の間で広がっているのかもしれない。
俺の、たった一つの大切なルカ様。人狼界であなたの噂が確信に変わる前に、早く俺の元へ戻って来いーー。
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