銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

文字の大きさ
3 / 451

3

 僕と姉上は五歳になった。
 姉上のフェリは、まだ病弱なままだ。城の奥深くの部屋で養生しながら大切に育てられている。王も頻繁に姉上の所へ通っている。
 でも僕の所には会いに来ない。だって僕はいらない子だから。姉上の身代わりとして生かせてもらってるだけだから。

 そんな僕の傍には、いつもラズールがいた。
 身の回りの世話をしてくれる女の使用人もいるけど、彼女達の前では僕は王女フェリとして振る舞わなければならない。
 でもラズールは本当の僕を知っているから、ラズールの傍にいる時だけは肩の力が抜けてとても安心していられた。

 跡継ぎの王女として表に立つ僕は、幼い頃から頻繁に命を狙われた。でも大丈夫だ。僕に害を成す前にラズールがほとんど防いでくれたから。
 でも全てを防ぎきれるものではない。
 そのため僕は何度か命を落としかけることになる。


 ある日、ラズールが王の付き添いで城を離れていた時に、本来なら絶対に僕の前に出されることの無い毒の入った食事を口にしてしまった。

「どんなに安全だと言われても、口にする物にはよく注意を払ってください」

 そうラズールに散々言われていたから、その時も注意はしていた。だから、ほんの少ししか口にしなかった。口に入った瞬間、異変に気づいてすぐに吐き出した。
 それでも僕は、五日間高熱を出して苦しんだ。
 僕が倒れた直後に戻って来たラズールが、薬を飲ませ付きっきりで看病をしてくれた甲斐があって回復をしたけど。
 五日ぶりに目を開けた僕を見て、心底安堵したラズールの顔を僕は忘れない。

 僕が回復したと聞いて、王が一度だけ会いに来た。

「毒を口にするなどと情けない。おまえには、まだこの先フェリの代わりを務めてもらわなければならないのだから、よく気をつけるように」
「…はい」

 王は扇子で口元を隠したまま苦々しげにそう言うと、僕を一瞥して出て行った。
 母親である王に愛情を受けたことなど一度も無い。だから今更なんとも思わない。
 だけどラズールの優しい腕に抱きしめられた瞬間、僕の目と鼻の奥が痛くなって涙が溢れた。

「フィル様…あなたには俺がいる。俺は決してあなたの傍を離れない。だから大丈夫ですよ…」
「ラズールっ、ラズール…」

 声を上げて泣く僕の身体を、ラズールが更に強く抱きしめる。
 僕よりも八つ年上のラズールの胸は、とても暖かくて大きかった。


 僕は王女の身代わりとして、勉強も剣術も完璧に身につけなければならなかった。
 しかしそれは難しいことではなかった。
 賢王と名高い王の血を引くせいか、僕は勉強も剣術も容易くできた。歳の近い臣下の子供達の中でも飛び抜けて優れていた。
 そして高位の者が使える魔法の力も強かった。
 ああ…でも一人だけ、僕とそんなに差がない優秀な子供がいた。
 この国で王に次ぐ高位の大臣の息子、トラビスだ。
 他の子供たちは僕に一目置いていた。だけど一つ歳上のトラビスは、ことある毎に僕と張り合った。
 表向き僕は女の子だ。でもそんなことはトラビスにとって関係ないらしい。というか寧ろ、女の子である僕に負けることが許せなかったんだろう。


 十歳になったある日、トラビスにしつこく詰め寄られて剣の対戦をしたことがある。
 トラビスの方が身体が大きく力が強かったが、僕は柔軟な動きで彼の剣をするりと躱して、剣の柄でトラビスの肩を打った。
 剣を落として肩を押さえ、僕を睨んできたトラビスの顔を僕は忘れない。
 きっとこの日からトラビスの中で、僕に対する憎悪が募っていったんだろう。
 この先ずっと、僕は彼に狙われることになる。



感想 3

あなたにおすすめの小説

【完結】生まれ変わってもΩの俺は二度目の人生でキセキを起こす!

天白
BL
【あらすじ】バース性診断にてΩと判明した青年・田井中圭介は将来を悲観し、生きる意味を見出せずにいた。そんな圭介を憐れに思った曾祖父の陸郎が彼と家族を引き離すように命じ、圭介は父から紹介されたαの男・里中宗佑の下へ預けられることになる。 顔も見知らぬ男の下へ行くことをしぶしぶ承諾した圭介だったが、陸郎の危篤に何かが目覚めてしまったのか、前世の記憶が甦った。 「田井中圭介。十八歳。Ω。それから現当主である田井中陸郎の母であり、今日まで田井中家で語り継がれてきただろう、不幸で不憫でかわいそ~なΩこと田井中恵の生まれ変わりだ。改めてよろしくな!」 これは肝っ玉母ちゃん(♂)だった前世の記憶を持ちつつも獣人が苦手なΩの青年と、紳士で一途なスパダリ獣人αが小さなキセキを起こすまでのお話。 ※オメガバースもの。拙作「生まれ変わりΩはキセキを起こす」のリメイク作品です。登場人物の設定、文体、内容等が大きく変わっております。アルファポリス版としてお楽しみください。

ざまぁされたチョロ可愛い王子様は、俺が貰ってあげますね

ヒラヲ
BL
「オーレリア・キャクストン侯爵令嬢! この時をもって、そなたとの婚約を破棄する!」 オーレリアに嫌がらせを受けたというエイミーの言葉を真に受けた僕は、王立学園の卒業パーティーで婚約破棄を突き付ける。 しかし、突如現れた隣国の第一王子がオーレリアに婚約を申し込み、嫌がらせはエイミーの自作自演であることが発覚する。 その結果、僕は冤罪による断罪劇の責任を取らされることになってしまった。 「どうして僕がこんな目に遭わなければならないんだ!?」 卒業パーティーから一ヶ月後、王位継承権を剥奪された僕は王都を追放され、オールディス辺境伯領へと送られる。 見習い騎士として一からやり直すことになった僕に、指導係の辺境伯子息アイザックがやたら絡んでくるようになって……? 追放先の辺境伯子息×ざまぁされたナルシスト王子様 悪役令嬢を断罪しようとしてざまぁされた王子の、その後を書いたBL作品です。

売れ残りオメガの従僕なる日々

灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才) ※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!  ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。  無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。

【完結】あなたのいない、この異世界で。

Mhiro
BL
「……僕、大人になったよ。だから……もう、───いいよね?」 最愛の人に先立たれて3年。今だ悲しみから立ち直れず、耐えられなくなった結(ゆい)はその生涯を終えようとする。しかし、次に目が覚めたのは、生命を見守る大樹がそびえ立つ異世界だった。 そこで亡き恋人の面影を持つ青年・ルークと出会う。 亡き恋人への想いを抱えながらも、優しく寄り添ってくれるルークに少しずつ惹かれていく結。そんなある日、ある出来事をきっかけに、彼から想いを告げられる。 「忘れる必要なんてない。誰かを想うユイを、俺はまるごと受け止めたい」 ルークの告白を受け入れ、幸せな日々を送る結だったが、それは突然終わりを迎える。 彼が成人を迎えたら一緒に村を出ようと約束を交わし、旅立つ準備を進めていた矢先、結は別の女性と口づけを交わすルークの姿を目撃してしまう。 悲しみの中で立ち止まっていた心が、異世界での出会いをきっかけに再び動き出す、救済の物語。 ※センシティブな表現のある回は「*」が付いてますので、閲覧にはご注意ください。   ストーリーはゆっくり展開していきます。ご興味のある方は、ぜひご覧ください。

冷徹勇猛な竜将アルファは純粋無垢な王子オメガに甘えたいのだ! ~だけど殿下は僕に、癒ししか求めてくれないのかな……~

大波小波
BL
 フェリックス・エディン・ラヴィゲールは、ネイトステフ王国の第三王子だ。  端正だが、どこか猛禽類の鋭さを思わせる面立ち。  鋭い長剣を振るう、引き締まった体。  第二性がアルファだからというだけではない、自らを鍛え抜いた武人だった。  彼は『竜将』と呼ばれる称号と共に、内戦に苦しむ隣国へと派遣されていた。  軍閥のクーデターにより内戦の起きた、テミスアーリン王国。  そこでは、国王の第二夫人が亡命の準備を急いでいた。  王は戦闘で命を落とし、彼の正妻である王妃は早々と我が子を連れて逃げている。  仮王として指揮をとる第二夫人の長男は、近隣諸国へ支援を求めて欲しいと、彼女に亡命を勧めた。  仮王の弟である、アルネ・エドゥアルド・クラルは、兄の力になれない歯がゆさを感じていた。  瑞々しい、均整の取れた体。  絹のような栗色の髪に、白い肌。  美しい面立ちだが、茶目っ気も覗くつぶらな瞳。  第二性はオメガだが、彼は利発で優しい少年だった。  そんなアルネは兄から聞いた、隣国の支援部隊を指揮する『竜将』の名を呟く。 「フェリックス・エディン・ラヴィゲール殿下……」  不思議と、勇気が湧いてくる。 「長い、お名前。まるで、呪文みたい」  その名が、恋の呪文となる日が近いことを、アルネはまだ知らなかった。

王国の愛し子

starry sky
BL
──この世界で愛と幸運は同じ価値を持つのか──  王子の婚約者として育てられた公爵家の三男ユーリは、自分が百年に一度生まれる奇跡の存在だと知った瞬間全てに希望を失った。   王子に愛されて望まれたのだと思っていたのは違った。王国に幸運をもたらす生き神としての役目だけだった。 ──それなら自分の人生を生きる──  姿を変えて家を飛び出した。師匠に出会い旅をして、体を鍛えて強くなった。そして旅を続けた先で出会った者は・・・ ユーリ・アルシオーネ・ヴァルディス 16歳 ヴァルディス公爵家の末っ子三男。 幼い頃から家族の愛情を受けすくすく育ったが、兄弟の中で自分だけ容姿が違う事を気に病んでいる。 じつはユーリは公爵家にまれに生まれる「愛し子」と呼ばれる存在で、他者の魔力を増幅させる能力を持っている。 次期国王イアンの婚約者。 イアン・ルーク・ランツァ 24歳 ランツァ王国の王子。王家で屈指の魔力量を誇り、長いプラチナブロンドを靡かせ戦場を駆け巡る姿は『戦神』と呼ばれている。ヴァルディス家の末っ子ユーリを大切にしている。

Ωだから仕方ない。

佳乃
BL
「Ωだから仕方ない」 幼い頃から自分に言い聞かせてきた言葉。 あの人と番うことを願い、あの人と番う日を待ち侘びていた僕は今日もその言葉を呟く。 「Ωだから仕方ない」 そう、Ωだから仕方ないのだから。

将軍の宝玉

なか
BL
国内外に怖れられる将軍が、いよいよ結婚するらしい。 強面の不器用将軍と箱入り息子の結婚生活のはじまり。 一部修正再アップになります