銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

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 気がつくと、真っ暗闇にいた。
 どこを見渡しても真っ暗で、前後左右もわからない。
 これは地獄という所だろうか。僕は悪いことをしただろうか。ああ…したな。女のフリをして、民に嘘をついた。姉上を助けられなかった。国に戦を持ち込んだ。

「ずっと、ここから出られないのかな」

 僕は疲れていた。とても疲れていたからその場に座り、膝に顔を埋めて目を閉じた。
 目を閉じても開けていても真っ暗だ。この闇の中に、溶け込んでしまいそうだ。というより、僕はもう、闇になってるんじゃないのか?ずっとここで、孤独に過ごさなければならないんじゃないのかな。

「リアム…会いたい。ずっと一緒にいたかった。本当は、死にたくなんてなかっ…た」

 涙が出た。ズボンにぽたぽたと雫が落ちて、濡れていくのがわかる。
 あれ…まだ闇になってないの?人の形をしてるの?涙を流してるよ…。
 ぐずぐすと泣き続けて更に疲れてしまった僕は、いつの間にか眠ってしまったらしい。
 誰かに髪の毛を撫でられる感触に気づいて、目を覚ました。

「…ん、だれ…?」
「フィル」

 緩慢な動きで目をこすっていた僕は、声を聞いて勢いよく顔を上げた。
 目の前に誰かいる。僕の髪を、優しく撫で続けている。今の声に、聞き覚えがある。でもまさか…そんな。

「は…母上…」
「フィル、なぜこんな所にいるの」

 紛れもなく、母上の声だ。暗くて顔がよく見えないけど、母上の声だ。だけどいつも聞いていた冷たい声ではなくて、柔らかく優しい声音をしている。

「僕…は、呪いによって…死んだのです。母上が…亡くなられたと同時に、身体に蔦のような黒い痣が現れて…。それが徐々に広がって、ついには赤い花のような痣まで出てきて…。その呪いが身体に広がって…死んだのです」
「それは違う」
「…え?」

 髪を撫でていた手が止まり、今度は僕の頬に添えられる。その手はとても暖かくて心地よかった。

「あなたの身体に現れた痣は、私がかけた魔法によるものです。あなたにかけられた呪いを解くために、生まれてすぐにかけたのよ」
「でも…現れたのは数ヶ月前で…」
「私が存命中は、何かあれば直接救ってやれるわ。しかし私が死んだ後では、助けてやれない。だから私が死ぬと同時に発動するよう、魔法をかけていたのです。あなたの身体の痣は、呪いを吸って大きくなっていたはず。赤い花が咲いたのは、呪いのほとんどを吸いきる前だったから。本来ならば、呪いを吸った後に痣は消えて、あなたに害することは何も起こらないはずでした。しかし呪いが強大すぎて、その呪いを解くための私の魔法も強く作用しすぎてしまった。そのため、あなたの身体が耐えられなかったのね」
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