銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

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 街に着きリアムがよく利用しているという高級な宿で驚くべき人物を見かけた。クルト王子だ。遠目にちらりと見ただけだけど、リアムとよく似た金髪を見間違えようがない。どうりでリアムが来た時に、宿の主人ではなく使用人頭が案内に出てきたわけだ。
 部屋に案内されている途中でクルト王子を見かけた僕は、部屋に入るなりそのことをリアムに告げた。
 リアムはクルト王子に気づいていなかったらしく、とても驚いていた。

「ねぇリアム、クルト王子がいたね」
「えっ、兄上?いたのか?」
「うん。あの金髪はそうだと思う。ここの主…かな?なにか話していたよ?」
「えー、なんでいるんだよ…面倒だな」
「以前のリアムみたいに旅をしてるとか…?」
「いや、それはないな。兄上は城から出るのが嫌いだし。陰気なヤツだから」
「悪口…」
「言うよ、俺は。兄上はフィーに求婚したし。あれは絶対に許せない。それに俺にも毒を盛ったし」
「でも最終的には逃がしてくれたよ?いい人だよね?」
「はあ?いい人なもんか!フィー、油断するなよ。会えばまた何か仕掛けてくるかも…」
「えー、もう大丈夫だと思うけど。たった二人の兄弟でしょ?仲良くしないの?」
「…しない。アイツと遊んだこともない」
「そうなの?でも…僕も姉上と遊んだことがないよ。姉上はずっと病で伏せっていたし、僕の存在は消されていたから。でも本当は、たくさん遊びたかったな…」
「フィー」

 リアムが下を向く僕の頭を抱き寄せて、髪の毛にキスをする。

「寂しい?」
「ううん。リアムがいるから寂しくないよ。でも…姉上のことを思い出すと寂しい。僕は辛い想いをしたけど、今はこうしてリアムと幸せに暮らしてる。でも姉上は、ずっと病で城から出ることもなく亡くなって…。姉上の方こそ辛い人生だったのかなぁと考えると寂しくてたまらなくなるんだ…」
「おまえは優しいからな。自分より人のことを心配しすぎる。それに、まあ…おまえの言いたいこともわかった。兄上が健在でいるうちに仲良くしとけってことだろ?」

 僕はリアムを見上げて目を細める。

「そう。いなくなってから後悔するのは辛いんだよ。だからね、できるうちにできることはやっておこう?遊んだことはないって言ったけど、本当?少しはクルト王子との間に、楽しい思い出はないの?」

 リアムが眉間に皺を寄せて天井を仰ぐ。
 しばらく僕の髪を撫でながら考えて「あっ」と声を出した。

 
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