炎の国の王の花

明樹

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謎の男

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「アイツ…、カナデの近くに置いておくわけにはいかないから、先程の場所から近い城の地下牢に閉じ込めてある。今頃ミケが吐かせてる筈だよ」
「そう…。まだどこの誰で、何で俺を狙ったかはわからないんだね…」


力無く言った俺を励ますように、サッシャが明るい声を出す。


「大丈夫だよ。カナデを狙うように指示を出した奴が誰か絶対に突き止めて、俺が懲らしめてやるから!」
「ふふ…、ありがとう。でも、俺って情けない。自分の身も守れなくて、ハマトにあんな怪我させて…」


閉じた瞼の裏が熱くなって、また涙が溢れそうになる。というか、すぐ泣くなんて、俺ってホントに情けない…。
顔を隠していた腕にサッシャの手が置かれる。その手で優しく二、三度腕をポンポンと叩くと、「そのハマトだけど…」と呟いた。


「この部屋に来る前にハマトの所に寄ったんだ。その時にちょうど気がついたみたいでさ
。まあ半分寝ぼけてたみたいだけど。なんであそこにいたのか聞いたら、どうしてもカナデのことが気になって、どうしても近くにいたくて、後をつけて来てたんだって」
「…え?ストーカー…」
「ん?すと…?まあいいや。それで、もう一人、俺達をつけ回す奴がいることに気づいて…。そいつがカナデの馬に向かって何かを投げた途端、馬が逆方向に暴走を始めたそうだ。ハマトは慌てて追いかけて、あの襲われた草むらに入った所で、先回りして待ち伏せしていた男が、カナデに短剣を投げつけようとしたから、必死でカナデに飛びついたと言ってたよ」


俺は、腕を下ろすとサッシャと目を合わせる。
医者にもらった飴玉のような頭痛薬が効いてきたみたいで、もう痛みはほとんど引いていた。
蹴られた脇腹は、まだ痛くて、顔を歪めながらゆっくりと身体を起こす。
サッシャが、背中に手を差し入れて手伝ってくれる。


「ありがとう、サッシャ。俺、ハマトには感謝しかないよ。ハマトが助けてくれなかったら、俺は大怪我をするか殺されるかして、連れ去られる所だった。…まあ、俺の後をつけ回すのは困るけど…」
「うん、困るよね。ハマトにはカナデに近づかないように言ってあったのに。結果的にカナデを助けることにはなったけど、命令違反だからね。怪我が治ったら処罰する」
「えっ!」


俺は、サッシャの腕を掴んで顔を覗き込む。


「ま、待ってっ。命令違反はダメだけど、今回は俺の命を助けてくれたんだから、許してあげて欲しい」


サッシャは、少しの間、黙って俺を見た後に、小さく息を吐いて笑った。


「ふふ、やっぱり!カナデはそう言うと思った。でも、罰はきちんと与えないとダメだ。その代わり恩賞も与えるから、心配しなくても大丈夫だよ」
「サッシャ…」


俺は、この国では余所者だ。そもそも、この世界でも余所者だ。
日の国には日の国のルールがある。俺の気持ちだけで、そのルールを曲げさせてはダメなんだ。
もうこれ以上は口を挟まないようにしようと決めて、俺は再び横になった。
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