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腕に力をつける練習をしたばかりで、剣を握る腕が少し震えるけど、リリーが見てるから情けない姿は見せられない。
俺は、リリーとリオから離れた場所に立つと、何度も何度も剣を力強く振り下ろした。
すぐに、離れた場所から歓声が上がる。
「わあ!すごーい!カエン、私と同じ年くらいなのに強いのねえ」
強いと言われて、俺は嬉しくなる。
更に剣を早く振り抜く練習を繰り返して、さすがに疲れてきたので、剣を元の場所に戻してリオの傍へ行った。
「…リオ、暑い…」
「まあ、あれだけ動けば暑いでしょう。汗を乾かしてあげます。目を閉じて下さい」
俺は目を閉じる。
すぐに温かい風が俺の身体を包んで、服が湿るくらいにかいた汗が、一気に乾いた。
「ありがとう、リオ」
「どういたしまして。でも汗の匂いまでは消えませんから、後で身体を洗って下さいよ」
「わかってる。父さまとの練習が終わったら洗うよ」
もうすぐ父さまがここに来る。めったに出来ない父さまとの練習は、誰にも邪魔されたくない。
なので、そろそろ部屋に戻って欲しいなとリリーを見ると、リリーがいきなり手を伸ばしてきて俺の髪に触れた。
「なに?」
「ねえ。あなたの髪、なんでこんな色なの?ここは炎の国でしょ?なんで王様みたいに赤くないの?なんで黒なの?あっ、そういえば、王様の隣に座っていた人の髪も黒だったわ。あの人、あなたのお母さま?あの人の変な髪の色が、移っちゃったのね。かわいそう」
俺は、咄嗟にリリーの細い手首を掴んだ。
頭の中が熱くなって、目の前が赤くなって、俺はかなり強い力で掴んだ。
「あっ!いたいっ!やだっ、はなしてっ!」
「カエン様!」
リリーが、顔を真っ赤にして、涙を流している。
それでも俺は手を離さない。
リオが慌てて俺の強く握った指を一本一本剥がして、ようやく手が離れた。
「やだあっ、いたいようっ」
「リリー王女、すぐに泉の水で治してあげますから、大丈夫です」
「お父さまに言いつけてやるもん!カエンが乱暴したってっ…」
「…うるさい」
ぽつりと呟いた俺の声に、リリーが一瞬静かになる。
「うるさいっ、泣くな!ひどいことを言うな!母さまはっ、カナはっ、俺の自慢なんだぞ!誰よりも綺麗で優しくて、でも父さまよりも強くってっ!それにカナの黒髪は、どんな色にも染まらない、この世界でたった一つの素晴らしい色なんだぞ!俺はっ、カナの黒髪を受け継いだことを自慢に思ってる!俺のことは何言ったっていいけど、カナの悪口は言うな!カナを悪く言う奴は、絶対に許さない!」
「カエン様…」
両掌を握りしめて、俺はリリーを睨みつける。
だけど、リリーの顔がぼやけて見えにくい。
なんでだろうと目をパチパチとさせていると、急に高く抱き上げられた。
俺は、リリーとリオから離れた場所に立つと、何度も何度も剣を力強く振り下ろした。
すぐに、離れた場所から歓声が上がる。
「わあ!すごーい!カエン、私と同じ年くらいなのに強いのねえ」
強いと言われて、俺は嬉しくなる。
更に剣を早く振り抜く練習を繰り返して、さすがに疲れてきたので、剣を元の場所に戻してリオの傍へ行った。
「…リオ、暑い…」
「まあ、あれだけ動けば暑いでしょう。汗を乾かしてあげます。目を閉じて下さい」
俺は目を閉じる。
すぐに温かい風が俺の身体を包んで、服が湿るくらいにかいた汗が、一気に乾いた。
「ありがとう、リオ」
「どういたしまして。でも汗の匂いまでは消えませんから、後で身体を洗って下さいよ」
「わかってる。父さまとの練習が終わったら洗うよ」
もうすぐ父さまがここに来る。めったに出来ない父さまとの練習は、誰にも邪魔されたくない。
なので、そろそろ部屋に戻って欲しいなとリリーを見ると、リリーがいきなり手を伸ばしてきて俺の髪に触れた。
「なに?」
「ねえ。あなたの髪、なんでこんな色なの?ここは炎の国でしょ?なんで王様みたいに赤くないの?なんで黒なの?あっ、そういえば、王様の隣に座っていた人の髪も黒だったわ。あの人、あなたのお母さま?あの人の変な髪の色が、移っちゃったのね。かわいそう」
俺は、咄嗟にリリーの細い手首を掴んだ。
頭の中が熱くなって、目の前が赤くなって、俺はかなり強い力で掴んだ。
「あっ!いたいっ!やだっ、はなしてっ!」
「カエン様!」
リリーが、顔を真っ赤にして、涙を流している。
それでも俺は手を離さない。
リオが慌てて俺の強く握った指を一本一本剥がして、ようやく手が離れた。
「やだあっ、いたいようっ」
「リリー王女、すぐに泉の水で治してあげますから、大丈夫です」
「お父さまに言いつけてやるもん!カエンが乱暴したってっ…」
「…うるさい」
ぽつりと呟いた俺の声に、リリーが一瞬静かになる。
「うるさいっ、泣くな!ひどいことを言うな!母さまはっ、カナはっ、俺の自慢なんだぞ!誰よりも綺麗で優しくて、でも父さまよりも強くってっ!それにカナの黒髪は、どんな色にも染まらない、この世界でたった一つの素晴らしい色なんだぞ!俺はっ、カナの黒髪を受け継いだことを自慢に思ってる!俺のことは何言ったっていいけど、カナの悪口は言うな!カナを悪く言う奴は、絶対に許さない!」
「カエン様…」
両掌を握りしめて、俺はリリーを睨みつける。
だけど、リリーの顔がぼやけて見えにくい。
なんでだろうと目をパチパチとさせていると、急に高く抱き上げられた。
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