炎の国の王の花

明樹

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無事に即位の儀式を終え、城の正面広場に集まった民にも、王になった俺の姿を披露した。
父さまと母さまがとても人気があったから、民は俺にも好意的だ。
だけど、これからの俺の行いによって、どう変わっていくかはわからない。
気を引き締めて頑張ろうと改めて誓った。



俺が即位して十日後に、父さまは海辺の城に向かった。
途中まで送るという俺の申し出を断って、数人の護衛とリオを連れて行った。
出発前に、父さまが俺の肩に手を置いて、笑いながら言った。

「カエン、頑張れよ。あと、しばらくの間リオを借りるぞ。向こうでの暮らしに慣れたらすぐに戻す」
「いいよ、いつまでもいてくれて。こっちには、ローラントおじさんとシアンもいるし」

俺も笑いながら答えると、「えっ」とリオの顔色が青くなる。

「俺は…用無しですか…っ?」
「ふふっ、嘘だよ。リオがいてくれないと静かで困る。だから、なるべく早く帰って来てよ」
「カエンさまあっ」

リオが、泣きそうになりながら、俺の手を両手で握りしめた。
リオは性格や言動が明るいから、傍にいてくれると、こちらまで元気になるんだ。

「リオ、父さまのこと、よろしく頼むよ」
「はい!お任せ下さい!」

父さまが呆れたように息を吐いて、「早く行くぞ」とリオを急かす。
リオは、急いで馬に飛び乗ると、もう一度俺に挨拶をして出発した。

今、国内も世界も騒乱がなく安定している。
父さま一行は、何事もなく、無事に海辺の城に着くだろう。
リオが一緒にいるから、父さまも気が楽だろうし。

一行の姿が見えなくなるまで見送って、俺は城の中に引き返した。



炎の国の王が、父さまから俺に代わったという知らせを、各国へと送った。
さすがにそう頻繁に水の国の王も日の国の王も自国を留守に出来ないから、今回は駆けつけては来なかったけど、すぐに二つの国からお祝いの手紙と品が送られてきた。
風の国、月の国、山の国からもお祝いの品が届けられた。
俺は各国へのお礼状を書いたり、お返しの品を送る手配をしたりして、数日とても忙しかった。
ほっと一息ついた時などに、「父さまは無事に着いただろうか」とか「毎日カナに花を供えて話しかけてるのかな」とか考えた。



二十日ほど過ぎて、あちらの暮らしも落ち着いた頃だろうし、そろそろリオが帰って来るかなと思ったその日の夜に、ちょうどリオが帰って来た。

城の正面広場に飛翔馬が着地するなり、馬の背から転がり落ちたリオは、背中に大きな傷を負っていた。




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